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メガネ君のちょっと怪奇な日常譚  作者: chiwa
ひとりかくれんぼ
24/27

つかの間の休息

気がついたら、新年がふた月目に突入しておりました…。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

「先輩!ハクちゃん!!」


目的のK立駅に着いて駅前を探すと車にもたれて立っているメガネ先輩が見えた。

横にハクちゃんが佇んでいる。

僕に気づいたハクちゃんが一瞬、パッと嬉しそうに笑ったけど

次の瞬間に顔がこわばった。


え…なに?


「おう。とにかく車に乗れ」


「は、はい。ありがとうございます」


言われるがままに助手席に乗り込んだ瞬間


「やっと来たか。増幅器メガネ」


と後ろから不遜な声が聞こえた。この声は…。

振り向くと、後部座席にふんぞり返る美人先輩がいた。


「え?あれ?先輩も…?」


「こいつと一緒にいたからな。剛力の車を借りてやったんだ。僕に感謝しろ」


「えーと…ありがとうございます?」


「あんたは野次馬根性で着いてきただけでしょ。

運転だって出来ないくせに…」


隣でぶつくさ文句を言いながらメガネ先輩がエンジンをかけた。


「ハクの様子じゃ、例のバケモンは近くにいるぞ」


え…。まさか電車降りたの気づかれた?!

パッと振り返ると後ろにエヴァはいなかった。


「おそらく、お前を辿ってやってくるのも時間の問題だろう。さっさと向かうわ」


「はい。ありがとうございます。ところで、どこに行くんですか?」


「生憎、設楽先輩は海外にいて頼れなかったけど、先輩の紹介でとある寺に行くことになった。

Y梨まで休憩なしで行くぞ」


「寺?!」


「うん。そういった時に頼れる設楽先輩の知り合いの寺があるんだ」


「へぇぇ~…お寺ってそんな事やってくれるんですね。

よく怪談話で聞きますけど、物語の世界の話だと思ってました」


「俺も設楽先輩に教えてもらって知ったんだけどな。

寺には大きく分けて仏さんを扱う寺と、祈祷・呪術を専門に扱う寺があるんだとさ。

後者にとって死は穢れとしているらしくて、墓を持たないらしい。

密教ってやつらしいぜ。もちろん、これから向かう寺は後者の祈祷する寺だ」


十数年生きてきて、そんな風に分けられているなんて生まれて初めて知った。

寺生まれの〇さんみたいなもんなのかな?


「あ!そういえば、まやちゃんはカスタム錫杖持ってます。

悠理くんは独鈷杵欲しいとか言ってたし、呪術として結びつけると合点がいきますね。

なんでお坊さんのアイテムみたいなの欲しいのかなと思ってたけど…」


「琉球女子はそんなもの持ってるのか…」


美人先輩が思わずといった感じで呟いた。


「はい。カスタムして、物理的な接近戦にも対応できるみたいです。

悠理くんは中二病だと言ってましたけど…」


「脳筋の中二病だな」


メガネ先輩が断定した。

それは否定できない。


車は順調にY梨に向かって進んでいる。

美人先輩がメガネ先輩にどうでもいいことを言って絡んでいるのをBGMに、

僕は緊張から解放されたからか、うとうとしていた。

美人先輩、メガネ先輩のこと絶対好きだよな。

言うと面倒くさそうだから言わないけど。


急に車内がピリッとした雰囲気になった。

うつらうつらとしてた時だったけど目が覚めてしまった。


「…来てる」


「あぁ。来てますね」


先輩たちが緊張した面持ちでそう言った。

まさか…


「もしかして、例のエヴァですか?追い付かれました?!」


「そろそろ追いつかれるんじゃないかな」


先輩、妙に冷静ですね。


「今日は増幅器のお前がいるから、いつも以上に鮮明に視えるし、

感度が上がってるせいかビリビリ感がすごいわ。

ものすごい圧迫感もあるし。お前、本当にやばいやつ召喚したなぁ…」


「それは僕も心底驚いてます…」


「お前、寝とけよ。寝れなかったら目でもつぶっておけ」


「え?なんでですか?」


「お前の意識が覚醒したせいか、やつが車を完全にロックオンしたみたいだ。

勘だけど、お前は目視しない方がいい気がする」


えぇぇぇぇ…


「―きた。並走してる。マジできもっ!お前、横みんなよ!」


「ぴゃっ!」


びっくりして思わず変な声が出てしまった。

車の中がすごい緊張感で満たされている。


「これは…えげつないな」


美人先輩が呆れたように呟く声が聞こえた。

ハクちゃんは蛇の姿に戻って、メガネ先輩のパーカーの中に隠れてしまっている。

僕は怖くなって目をギュッとつぶって下を向いた。


しばらく緊迫した空気が続いていたんだけど、ふっと空気がゆるんで

重苦しかった雰囲気が取り払われた。

不思議なことに、すっごくリラックスしてしまった。


「ハクが頑張ってくれてるな」


メガネ先輩が笑って、ハクちゃんを服の上から撫でた。


「この空気、ハクちゃんのおかげなんですか?」


「うん。ハクの能力みたいなんだけどな。浄化してくれるらしいんだよ。

運転に集中できるし、助かるよ。ありがとな、ハク」


うわーー!そんな能力があったんだ!

確かに、ハクちゃんて癒し系だもんな。


「ハクちゃん、ありがとね」


先輩の服がもぞもぞと動いてハクちゃんがぴょこっと顔を出した。

怖いからか、ほんの少しだけ。


「ハクは、お前がお気に入りだからなぁ。頑張っちゃったんだろうな笑

増幅効果のおかげだろうな。浄化の力が増してるせいか、今あいつはこっちを見失ってるみたいだぜ。

ただ、微かに気配は察知できるんだろう。同じ方向には走ってる」


「増幅されているとはいえ、ハクちゃん、すごいですねぇ…」


思わず感心してそう言うと、先輩は自分の事のように嬉しそうに笑った。


「おい」


突然、シートの間から顔がずいっと顔が出てきた。


「お前たちだけ楽しそうじゃないか。寂しいだろうが。混ぜろ」


(えぇぇぇぇぇぇぇーーーー)


「せ、先輩って天然…?ツンデレ…?いや、素直…?」


「またか。なんだその “つんでれ” という評価は。

しかも天然とかまで付けて」


「アンタはツンデレだし天然まる出しですよ」


メガネ先輩が面倒くさそうに言い放った。


「おまけに、変なところで素直すぎて面食らうんですよ」


「むっ…僕はいつだって素直だ」


「あぁ…まぁ、確かにそうですね。それはすごく納得です」


思わず合いの手を入れてしまった。


「そうだろう。人生自分に正直に生きるのが一番だ」


美人先輩が深くうなずいた。

言ってることは至極まっとうなのに、なんだかやっぱり変な人だ。


「逆にこいつは、随分ひねくれているからな」


美人先輩がメガネ先輩を指さして得意気に言うと、

メガネ先輩が無言で美人先輩の耳をひねりあげた。


「いっ!いぃいいいいい!いたいっ!!!!」


「…仲良しですねぇ」


そう、思わずつぶやくと



「「仲良しじゃない!!!!!」」



2人に怒鳴られてしまった。

いや、絶対仲良しですってば。

今はもう口がさけても言えないけど。


バケモノに追われているっていうのに、緊張感をなくした僕たちの車は

順調に目的地へ向かうのでありました。

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