合流
ちょっとでも気を抜いたら足を止めてしまいそうになる。
アイツがどこまで迫っているのか、後ろを確認できないから分からない。
(商店街の明かりだ!!!!)
目前に見覚えのある通りが見えた。
僕の家から最寄り駅は2つある。
地下鉄とJR。それぞれ反対方向に位置する並びになっている。
商店街から最も近いのがJR。
地下鉄だと商店街を抜けて少し暗い道を通ることになる。
(そうだ。電話…)
僕はメガネ先輩から着信があった事を思い出した。
スマホの画面を見ると、何度か着信が入っていた。
とりあえず人通りがたくさんある商店街に入って、
何とか息を整えてからメガネ先輩に電話をかけ直した。
「もっ…もしもし。先輩?」
「おいっ!お前、何か変な事に巻き込まれてないか?」
開口一番これである。なんで?
「えっ?あ、はい…実は…」
僕は、ひとりかくれんぼをしたこと。
とんでもない物が部屋に出てきたこと。
今、家から抜け出して外にいることを説明した。
「お前…」
先輩はしばらく絶句してから言った。
「お前はっ!自分の性質ちゃんと理解してんの?!
設楽先輩お墨付きの増幅器だぞ!あぁ…もうっ!」
ごめんなさい…だって、まさかこんな事になるなんて…。
「ハクが騒ぎ出したんだよ。とにかくお前に今すぐ連絡しろって。ハクの様子から、とにかくヤバいって事だけは分かったからさ」
ハクちゃん…いや、ハク様っ!!!!
「とにかく、このままじゃダメだろ。ちょっと待ってろ。
すぐにかけ直すから。動くなよ!」
電話は一方的に切れた。
先輩と話した事で少し落ち着いて周りが見えるようになってきた。後ろを確認する。
大丈夫。アイツは来てない。
でも、きっと探し回ってるはず。
追いつかれるのも時間の問題だ。
商店街を見渡す。
いつも通りの風景。
仕事帰りの人々が夕飯の買い物をしている。
「はぁ…一先ず助かったぁ」
間の悪い事に、こんな時に頼りになる瑞慶覧姉弟は
連休で沖縄に里帰り中なんだ。
ブーッブーッとスマホが震えた。画面を見るとメガネ先輩だ。
「はい。もしもし?」
「車をモモちゃん先輩から借りる事にしたから、迎えに行くわ。詳しいことは道中話すから、とりあえずK立駅に向かってくれ。
あ。金は大丈夫か?」
「K立駅…?分かりました。そっちに向かいます。
はい。ICカードにお金入ってるので大丈夫です」
そう。万が一のために、現金数千円とICカードはポケットに突っ込んでおいたんだ。
今となっては過去の自分を盛大に褒め称えたい。
「了解。じゃ、K立駅で」
電話は切れた。
K立駅だとJRになる。助かった。
急いで駅に向かい、ちょうど来た電車に飛び乗った。
車両に入って違和感を感じた。
なんだろうと考えると、車内があまり混んでないからだと気づいた。
本来なら、平日のこの時間帯は激混みのはずなのに。
僕は首を捻りながら、扉に肩をあずけた。
ふーっと息を吐いて足元を見ると
(そうだ。靴下のままだったんだ…)
安心したら急にそういったことが気になり始めた。
うあー。あの人気づいて僕を3度見したよぉ。
だよねぇ…。
最寄駅からK立駅まで快速で約30分。
気まずい僕はちょっとモゾモゾしてしまった。
(あ!そうだ。スレに報告しなくちゃ)
その前に…アイツはどうなったんだろう?
電車の窓から外を見る。
(ん…?げっ)
アイツの足らしきものが車体にしがみ付いているのが見えた。
幸いなことに、アイツが引っ付いているのは隣の車両だ。
どういう仕組みなのかは分からないけど、
僕を辿ってこれるみたいだ。
(今なら写メ撮れるかな?)
隣の車両に近づいて、写メを撮る。
なんとか“らしき”ものが撮れた。
周りの人が奇異な目でみているけど、仕方がない。
600.1
なんとか逃げた。知り合いが迎えに来てくれることになったから
しばらく音信不通になると思う。
いま電車の中なんだけど、エヴァが着いてきてる。
http://〇〇〇.com/v3Cxa~
601.ななし
待ってた!待ってたよぉぉぉおお!
イチ、大丈夫か?
602.ななし
ああああああ!良かったぁぁああ!
603.ななし
そんな中、写メうぷする1に漢を感じた。
っていうか、ヤバくね?これ。
604.ななし
はいはい。釣り釣り。どうせこのまま逃げるんだろ?
って思って画像開いたらマジくせぇ。
これ、ヤバいだろ。
610.1
知り合いがどこかに連れて行ってくれるみたい。
片が付いたら報告にきます。
みんなが知りたいならだけど…。
611.ななし
ここまで来て結末知りたくないやつなんておらんやろ。
正座で全裸待機しとく。
612.ななし
俺も!いつまでも待ってるからぁぁああ!
その後も思った以上に待ってる声が大きかったから、
僕は事が片付いたら報告する約束をした。
それにしても…あの生き物?はなんなんだろう。
そして、いったい何が起きたんだろう。




