第一章 国王ォォォォォ
「ムレムレの靴下をお土産に持ってきてはくれなかったのか?」
「いくら国王様でもそれは応じかねます」
「うぇーーーーー! 振られてやーんの!」
完全に中学のツレのノリで国王に絡むカイル。一応やめとけ。
あとツッコミそびれたけどどうしてこの舞踏会でかかってる音楽は全部ゴリゴリのデスメタルなのかしら。ヴィジュアル系バンド来てライブするなんてこのゲームらしいわね。
「靴下からダシ取ってみそ汁にしてもらえるようにメイド長と厨房長に頼んだというのに……!」
「え、僕も飲みたい!」
「飲むな」
私がそう止めるもあの変態親子は止まらない。
「ああ、一回通った案を『実は中止でしたテヘペロ☆』って言うのは国王として避けたかったのに……!」(チラッ)
「大変だ! そうなればただでさえ王城で人気のない親父がさらに人気が無くなって『王城の雑巾王』として名を馳せることになってしまう!」(チラッ、チラッ)
「何よ『王城の雑巾王』って」
不名誉なのは雰囲気から分かるけど具体的には分からないところである。あとこれ見よがしにチラ見するの止めて貰っていいかしら。
「ああ、コレは結婚か靴下献上で落とし前をつけてくれないと……!」
「ああ、その通りだ我が息子……!」
二人して四つん這いになる王族(国王と王子。しかも長男)。
てかデスメタルうるさっ。
「さあ、ファーストダンス踊ろう。ラミ」
「ファーストダンスっていうか……。もっと優雅な曲は無かったのかしら?」
「僕とラミの間はクラッシックよりもデスメタルな間柄でしょ?」
「まあそうね……」
否定はできない。
「そう、激しい間柄……」
「踊るのやめます」
「待って! 冗談だから踊ろっ!? 曲名は『俺の愛が不倫相手にぶっささって正妻がギャン泣き』だねっ!?」
「なんて不穏な曲なの!?」
要するに不倫して不倫相手にぞっこんになっちゃったのね!? 王城でかける曲じゃないしその曲の主人公クズじゃないの!
「寝る前に聴く一曲だからまだ穏やかでクラッシックに近いから!」
「何で寝る前にこんな曲聴いてるのよ! あとこの曲になってから更にバントの人のアクションが派手になってたまに『キェェェェェェェェェェェェェェェェェ!』とか『あなたを殺して私も死ぬ!』っていう歌詞とかも聞こえるんだけど!?」
「準主人公から見れば純愛ストーリーだね」
「狂気に満ちているわ……」
私が戦慄している中。
「国王様、相変わらずダンス上手いですね」
「お前もな」
そういう普通の会話と共に繰り広げられている狂気的なダンス。お兄ちゃんやめてー。
「まあまあ! 凄いですわ、ノート様のダンス!」
「相変わらずお上手ですこと」
「このお方の伴侶となれたらわたくし、もう最高ですわ……!」
もっとよく見て!? たまに白目になってたりするからねっ!? ああっ、包丁で刺そうとする妻と逃げようとするクズ夫とのアクションが始まったわ! 何のパフォーマンスに分類されるのかしらこれは!?
「どすこい」
「どすこい」
あらっ、なぜか相撲し始めたわ! どうして中世ヨーロッパ風のこの世界に相撲を入れちゃったのかしら製作陣は!?
『この相撲で勝ったら離婚しないであげるわ、と自信満々に言ったキミ。でも僕は離婚したい』
夫クズすぎて引くわ。
歌詞作った人心が荒んでるから精神科受診をお勧めするわ。
「ああ、素敵……!」
このゲームの登場人物マトモな人本当にいないのかしら!?