僕が学校プールに来ているわけ。
陽森高校のプールは室内にあり、冬でも泳げるように温水プールにすることができるが正直に言ってその設備は本当にいるのか疑問だった。
陽森高校の部活は勉強の息抜きにやるようなお遊びサークル的なものなのでとても弱い。
野球部はコールド負けなのは当たり前のことだし、サッカーなんて先日の試合で零対十で負けていた。他の部活も同様で、そしてこの水泳部も例外ではなかった。
本当、金の無駄遣いもいいところである。
ただそのことを声に出してしまうと、全部活から総攻撃されてしまうので絶対に声に出してはいけない。残念な青春を送っている僕だけど将来のために高校には行きたいし、まだ生きたい。自殺したいなんて思うほど僕は自分の人生に絶望してはいない。希望はないとは思っているけど。
そんなことを水泳部の部員が練習しているところ(おもに女子。それもおそらく一年)を眺めながら思っていると突然、視界が人の体によって遮られた。
「お待たせ」
それは競泳水着姿に着替えた一花だった。
「競泳水着姿の私を見て何か感想はあるかしら」
そう言って胸を強調するようにポーズをとる。
一花の競泳水着姿は――うん、なかなかいいものだった。スタイルが元からいいのと競泳水着のピチピチ感が合わさり、そしてなにより水泳帽を被りやすいように長い髪をポニテに結んでいたのがさらによかった。
僕は思わず見惚れてしまう。
そんな僕を見て勝ち誇ったかのような笑みを浮かべる。
「あまりの美しさに言葉も出ないようね」
「まぁ………そう、だな」
悔しいがそう言うしかなかった。
「てかなんでさっきからポーズをとっているんだ?」
「あら?写真撮るんじゃないの?」
「撮られねぇよ。お前はグラビアアイドルか」
「なら私の競泳水着姿を想像して毎晩するといいわ」
「誰がするか!!」
「私の競泳水着姿だけじゃ満足できないって言うの?とんだ変態ね」
「変態なのはお前だけだ!!」
僕は呆れてため息をつく。
僕がこのプールに来たのはなにも一花の競泳水着姿を見たいわけでも、そして後輩の女の子の泳いでる姿を見たかったわけでもなかった。
僕が一花に言われるがままここまでついてきた理由は、あと一週間の間に答えを出すためだった。
彼女と付き合うのかどうか。
そのためにできるだけ彼女と一緒にいた方がいいだろうと僕はそう考えたのだ。彼女が一体、何が目的で僕に告白してきたのかそれを知るためにも。
「そういえば、キー君」
一花はポーズをとるのをやめて聞いてきた。
「なんだよ」
「さっき、誰を見てたの?」
そういった一花の目はまるで浮気男を見るような目だった。