僕がアイツを好きになったわけ
僕は誰もいない電車の座席に座りながら姉貴の推理を思い出していた。
「一体誰に復讐しようとしているのかは、もちろん海原波江ちゃん以外にいないだろう。おいおいそう慌てるなよ。ちゃんと説明してあげるから。まったくせっかちな弟だよ。
さて若葉ちゃんはどうして海原ちゃんに復讐しようとしているのか、それを知るためには彼女の過去を知る必要がある。
どうやら若葉ちゃんはあの事件の後にアクアちゃんというと友達に誘われて水泳を始めたらしいね。
うん?あの事件てなんだよて……もしかして知らないのかい?まぁそれなら別にいい。彼女のことプライバシーにかかわることだし、それに今回の件となんも関係のない出来事だ。だから気にしなくっていいよ。
……そこで「そっか」言ってしまうあたり、アンタはもう少し周囲に興味を持った方がいいと思うよ。まぁいい、じゃあ話を戻すとしよう。
若葉ちゃんとアクアちゃんはとても仲が良かったらしいね。「全国大会で会おう」なんて約束もしていたらしいじゃないか。実に微笑ましいね。
だけど可愛い弟よ、この二人の約束をアンタはただの冗談だと思っていたんじゃないのかい?
そう、若葉ちゃんはどうかわからないが、アクアちゃんはおそらく本気だった。
これを見てくれ……ネットで色々調べたんだ。安楽椅子探偵のように本当は私の可愛い弟が持ってくる情報だけで推理したかったけどね。なにせ情報量が少ないものだからね。推理するには無理があったんだよ。だからネットで調べるぐらいは許してくれ」
そして姉貴はスマホの画面を見せた。
そこには僕の寝顔が写っていた。
「おっと、すまない。間違えた。こっちだった」
そう言ってスマホの画面を横にスライドさせると、全国中学水泳大会の公式リザルドだった。
「ここを見てくれ、ここに水上水泡の名前が書いてあるだろ。珍しい名前だし彼女で間違いないだろう。どうやらアクアちゃんは水泳がうまかったらしいね。あの約束もきっと冗談ではなかったと私は思うよ。
だけど現実は残酷だっったね。その約束は果たされなかった」
姉貴は表の一番上の方に書かれてある名前を指差した。それはつまりこの大会の優勝を意味していた。
「アクアちゃんも天才だったと思うが、彼女は間違いなくそれ以上の天才だったんだろうね」
姉貴は優勝者の名前を見ながらそう言った。
その名前は海原波江。
水泳を始めてわずか半年で優勝してしまった彼女の名前だった。
「とても辛かったんだろうね。アクアちゃんは水泳を始めたばかりの人間に負けるなんて。今までの努力を否定されたような気がして。
そして彼女は水泳をやめてしまったのだろう。いくら調べても彼女が大会に出た記録は残されてなかった。
当然、そのことは若葉ちゃんも知っていたと思う。いくら離ればなれになったて連絡は取り合っていたと思うから。しかし仲の良かった若葉ちゃんでもどうすることもできなかったのだろう。
それから月日が流れ若葉ちゃんは陽森高校に入学した。あんな高校に入学した理由は憶測でしかないが、何も考えず泳げる場所があればどこでも良かったのだろう。
そんな若葉ちゃんの前に彼女が現れた――そう、好きな人がいるからていう理由で陽森高校に入学した海原ちゃんだ。
当時のこの若葉ちゃんはきっとかなり驚いていたと思うよ。どうして全国大会で優勝したやつがこんな高校にいるんだ?てね。
それは次第に怒りにかわっていった。
アクアちゃんは海原ちゃんに負けたせいで水泳をやめたのに、あんな高校にいるのが許せなくなるのは当然の感情だろう。
そしてさらに許せない出来事が起こった。そう、海原ちゃんに海外留学の話が来たのにそれを断っていたからだ。それも普通の高校生活がしたいからて言う理由でね。
だから彼女は復讐を始めた。
彼女からその目的とこの物語のキーマンとなっているアンタを奪い、海原波江ちゃんという天才を海外留学させるために」
一花は僕に告白してきた。
僕と一花が付き合えば、海原があの高校にいる意味なんてなくり海原はきっと海外留学がするだろうと一花は考えたのだ。
つまり僕は彼女に利用されていただけのだなのだ。
でもそんなことは最初っからわかりきっていたこと。だけどそれでも………
「人の気持ちを利用するなんて最低の女だよアイツは」
僕はアイツと一緒にいたことを思い出す。
告白されて、友達になって、お昼を一緒に食べ、一緒に登校して、彼女に水泳を教えてもらって、彼女と連絡を交換して……。
あの楽しかった日々。
だけどそれらはすべて彼女の復讐計画の一つに過ぎなかった。やっぱり、アイツは最低の女だ。でもそれなのにどうして――
「僕はアイツのことを好きになっちゃったんだろうな……」
僕は電車の中でため息でもするかのようにそう呟き、僕は明日のデートでなんて答えを、否――一花になんて告白するのか考えるのだった。
――残り二日
二時間後にエピローグを投稿します。




