勝つメリットがないわけ
オセロというものは将棋やチェスのように二人零和有限確定完全情報ゲームに部類され、運の要素がないく、勝つには頭を使わなければいけないゲームだ。
一般的には挟まらない四角を取れることができれば勝てると思われているがただそれだけで勝てるほどオセロは簡単なゲームではない。
当然、四角を取ることも大事かもしれないが、まずは初手からあまりコマを取りすぎないようにしないことが大事なことなのだ。初手から取りすぎてしまうと自分が置ける場所が少なくなってしまい、相手にチャンスを与えてしまい結果負けてしまう。
僕はそのことを含めて慎重にゲームを進めるが、だけどこの戦い勝った方がいいのだろうか?負けた方がいいのだろうか?どうすればいいのかわからなかった。
これは一葉さんとの真剣勝負であり、負けた方は勝った方の言うことを聞くというギャンブルでもあるのだ。なので本来なら真面目に勝ちに行くべきなのだろうけど、しかしここでもし勝ってしまったら僕は一葉さんになんてお願いをすればいいのだろうか?
もしも対戦相手が一花だったらメイドのコスプレをしてほしいていうお願いをしていただろうが(もちろんこれは冗談。本当に冗談だからね)だけど今対戦している相手は一葉さん。三十くらいおじさんのメイド姿なんて目に毒だ。最悪の場合は失明する。だからそんなことをお願いすることできなかったし、それ以外にお願いなんてなかった。
そう考えると僕がこのゲームで勝つメリットなんて全くないと言えるだろう。だとすればここは接待でもしてわざと負け、一葉さんに気に入られた方がいいかと思われたが、そう言うわけにもいかないのも事実だった。
一葉さんに負けてしまったら、僕は一葉さんのお願いを聞かなければいけなくなるのだった。一葉さんがなんてお願いをするつもりかわからないが、しかしこんな賭けを持ちかけてきたところ考えると何かしら目的はあるだろうし、それなりに勝つ自信があるからなのだろう。
うーん、どうするべきか。とりあえず一葉さんがなんてお願いをするつもりなのかハッキリするべきか。
そう思い僕は一葉さんに聞く。
「もしも一葉さんが勝ったら、僕になんてお願いをするつもりなんですか?」
「うん、知りたいかい?」
「えぇまぁ知りたいです」
「じゃあ、教えてあげよう」
そして一葉さんは盤上に石を置いて挟んだところをひっくり返し言った。
「もしも俺が勝ったら、うちの妹と結婚してくれないか」
「………えっと」
結婚?結婚て……一花と僕が?僕たちはまだ高校生だと言うのにこの人はいきなり何を言ってるんだ?
「……冗談ですよね?」
「俺はこんな冗談は言わないよ。本気で言ってる」
僕はその言葉が決して冗談ではないことがわかった。それはきっと一花と同じマジの目をしていたからだろう。さすが兄妹だった。
一葉さんは続けて言うのだった。
「君は一花のことが好きなんだろ?――だったら一花と結婚してくれないか?」




