僕と一葉さんがオセロをやるわけ
流石にそろそろ戻らないと一葉さんに怪しまれるので僕たちは一花の部屋を出てリビングに戻ると、一葉さんはなぜかニヤついていた。
「二人きりで何を話してたのかな?いや、何をしてたのか?」
どうやら変な勘違いをしているらしい。そういう妄想は、さすが兄妹だと思った。
一花は「たわいもないことですよ、お兄様」と慌てることなく冷静に言う。大好きなお兄様にそんな勘違いをされても冷静に対処することができるということは日常茶飯事なのだろう。あくまでスーパーであんなに慌ててたのは偶然、僕と出会ってしまったことが原因だったみたいだ。
「では、私は夕飯の準備をしますんでキー君と何かしててください」
「わかった」
そう言って一花はキッチンに向かった。
えっ嘘だろ?お前、さっき知り合ったばかりの人といきなり二人きりにするのかよ。僕のコミュ症舐めんな!
リビングに取り残された僕と一葉さん。
「……」
「……」
お互い沈黙だった。
ヤバイ、マジどうしよう。
「えっと……」
僕はなんとかこの沈黙をどうにかしなければいけないと思い、なんでもいいから何か話そうとしたがなんの話題も出なかった。さすがコミュ症。
僕は止まっていると「君……」と一葉さんは話を切り出してきた。僕は「は、はい、なんでしょうか?」と聞く。なんか機嫌を損ねるようなことをしてしまったのだろうか?そんなことを考えてしまい不安になる僕。
そんな僕に一葉さんは言うのだった。
「将棋はできるかい?」
……将棋?どうして将棋?なんか意味があるのだろうか?
「えっと……いや、できません」
本当は姉貴と何回かやったことがあり少しぐらいならできるが、しかし銀将と金将の動き方が毎回ごちゃごちゃになってしまい僕はまともに戦うことができないのだった。もちろん姉貴には一回も勝ったことがない。
だから僕はそう答えた。
「そっかできないのか。将棋が無理ならチェスも無理だろうし………だったらオセロはできるかい?」
「オセロなら多少はできます」
姉貴に唯一、一度だけ勝ったことがあるゲームだ。これなら自信を持ってできると言える。
「よし、じゃあ夕飯ができるまでオセロをやろう。待っててくれすぐに持ってくる」
一葉さんは自分の部屋からオセロを持ってきて、それをテーブルに置いた。そして僕らはテーブル挟み向かい合うようにソファーに座った。
「オセロて同じ色の駒で挟んで相手の色をひっくりかえす単純だけどかなり奥深いゲームだよな」
「確かにそうですね」
「オセロを考えた人は間違いなく天才だよ」
それはさすがに言い過ぎなのでは?と思ったがそれを言ったら機嫌を損ねてしまうかもしれないのでやめとく。
「さぁせっかく勝負するんだから何か賭けないか?」
「えっ!?何か賭けるんですか!?」
「ただやってもつまらないだろう。それに賭けて言ったて別に金をかけるわけじゃないよ。うーん、じゃあ勝った方は負けた方になんでも一つだけお願いをすることができるて言うのはどうかな?」
「うーん、まぁそれぐらいなら……」
ちょっとだけ不安はあるが、しかしここでやっぱりやりませんというわけにもいかないだろう。
「じゃあさっそく始めようか。先攻は君に譲ろう」




