人が働くわけ
人はどうして働くのだろうと考えた時、やはりお金がもらえるからだろうと僕は考える。人は金がもらえるからこそ働くのだろうし、金がもらえなければ人は動かないのだ。
そう、結局のところこの世はすべて金なのである。
しかし将来の目標がない僕にとって、例えお金をもらえても働くという意味のあることなのかわからないことだった。
高校一年の時からスーパーのバイトを始めた僕だが、使い道がなく無意味にお金が溜まっていく一方で、このままだと百万円溜まりそうな勢いだった。
おいおい働きすぎだろ僕。
思わず自分でもそう思ってしまうが、でもだからこそ僕は思うのだった。
もしもこのまま将来、就職して働いたとしても無意味にお金が溜まっていくだけで、そして税金を払うだけのそんな無意味な人生を送ることになるのではないだろうかと。
そう思っただけで僕の背筋はゾッとする。
やはり僕の将来は真っ暗闇だった。
さて、そんな僕がバイトしているスーパーは家からわりかし近く、十分くらい歩いところにある。本当は自転車で行ってもいいのだが、今日はなんだか歩きたい気分だったので歩いて行った。
スーパーに着き、さっそくバイトを始める僕。
さすが土曜と言ったところだろうか、人が平日の時よりも多かった。
僕はとりあえず、グロッサリーチーフの高尾さんから「飲料の補充をやって」と言われたので飲料の定番をさっさと埋め始めていると「すいません店員さん」とお客様に声をかけられる。
きっと飲み物を箱で欲しいのだろうと僕はそんなこと思いながら「はい、何でしょうか」と振り返るとそこには見覚えのある人がそこにいた。
「あれキー君?」
それは一花だった。
僕は少しだけ見惚れてしまう。それは一花の私服がよかったからだろう。白い服に黒のロングスカート、そしてどうやら少しだけ化粧もしているみたいだ。オシャレのことはあまり詳しくないが、かなりオシャレをしているように思えた。
「えっどうしてここに?」
「いや、それはこっちのセリフだよ」
「私は見ての通り買い物をしてるだけよ」
どうやら本当に買い物をしいているみたいで買い物カートを持っていた。カゴの中に視線を向けるとジャガイモに人参、そして豚肉にカレールーが入っていた。
なるほど、今晩はカレーライスか。
そんなどうでもいいことを思っていると一花は何故か気まずそうな表情をしながら聞いてくる。
「キー君ここでバイトをしてるのね。いつからここで働いでるの?」
「一年前から働いでるけど」
「へーそうなの。何回か来たことあるけれど全然気づかなかったわ」
なんだろう……一花の様子がおかしい。あたりを見渡してどこか挙動不審で、まるで僕と一緒にいるところ誰かに見られたくないような感じだった。
「まぁいいわ、仕事の邪魔をして悪かったわね。また月曜日学校で会いましょ。じゃあね」
「えっ?なんか欲しいものがあって声をかけたんじゃないのか」
「別にないわよ」
「いや、遠慮するなよ」
「だからいいってば」
そして一花は急いでどこかに行こうとした瞬間、「おい一花」と誰かに声をかけられた。
僕はそいつを見て、目を見開いて驚く。
「デッドブルはあったか?」
そいつはなんと写真に写っていた三十歳くらい老けた男と瓜二つの人物だった。




