学校がないわけ
姉貴の推理を聞いて僕は思わず納得してしまった。
僕は今まで姉貴の推理なんて頼りにしようとは思っていなかったが、しかしさすが元刑事だった。
僕は姉貴の推理を聞き終えると姉貴は聞いてくる。
「可愛い弟よ。私の名推理を聞いて、若葉ちゃんとどうするつもりなんだい?アンタは若葉ちゃんと付き合うつもりなのかい?」
「……わからない」
僕は一花と付き合うべきなのだろうか?例え、一花が僕のことが好きじゃなくってただ復讐するためだけに告白してきたとしても――やはり彼女のために僕は付き合うべきなのだろうか。
僕は迷っていると姉貴は「そっか」と言った。
「それならそれでいいさ。安楽椅子探偵の私の役目はこれで終わりで、ここから先はアンタが決めることなんだ。だから私は何も口出ししないよ」
そう言って姉貴は朝食を食べ終えると、大きな欠伸をしながらリビングから出ていき自分の部屋へに向かった。どうやら二度寝するつもりらしかった。
このフリーターが……でも例え今はどうしもないろくでなしなフリーターでも言っていることは正しかった。間違ってはいなかった。
「ここから先は僕が決めることか……」
僕は誰もいないリビングで一人、そう呟く。
確かにその通りだった。
だから僕はこれからまだ残っている一つの謎、あの写真について一花に聞かなければいけないだろう。
僕はズボンのポケットからスマホを取り出し、あのコミニケーションアプリを開き一花のアイコンの写真を確認する。
それは一花が三十歳くらいの老けた男と一緒に写っているツーショット写真。
ただそれだけなら僕の心はこんなにも揺さぶれずに済んでいただろう。しかし、写真に写っている一花はとても楽しそうに笑ってるのだった。
普段は無表情でたまに笑うこともあるが、こんな一花を見たのは初めてだった。やはり一緒に写っている男の人は援助交際相手なのだろうか?
僕は脳裏にそんな不安がよぎる。
今すぐにでも一花にメールをしてそのことを確認したかったが、そんな度胸は僕にはなかったし、それにこれはデリケートな話なのだ。
ここはやはり学校で直接会って聞くべきだろう。一花と直接「お前、援助交際しているだろ」なんて聞けるかどうかわからなかったが、しかしそうするしか他に方法がない。
そう思い立ち学校に行く支度でもしようとしたその時、僕はスマホの画面を見て思い出す。
「今日は土曜日だから学校ないじゃん……」
ついでにお昼からバイトが入っていたことも僕は思い出すのだった。




