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ぼっちの僕がクラスメイトに告白されたわけ。  作者: 今無 いま
残り三日
57/73

少女が普通と言うわけ

 

 昔、幼稚園で僕は一人の少女と出会った。

 その少女の容姿はいたって普通で周囲に溶け込んでいたがしかし容姿なんてものはただの器でしかなく、明らかに少女の中身は普通から外れてた天才だった。

 まだ幼い子供だと言うのに習っていないはずの漢字を覚えていたり、十桁以上の計算を暗算で答えを導き出したり、まさに天才少女だった。

 そんな少女には口癖がというものがあり、その口癖は「普通」とそんなありふれた言葉だったが、でもその口癖こそが少女の決して普通ではない異常さを表していたと言っていいだろう。

 彼女は何かにかまわずその口癖を頻繁に多用した。例えば――


「このお人形、可愛いでしょ」


 と両親に買ってもらった誕生日プレゼントのウサギの人形を友達に自慢されても、


「普通だよ」


 とそう返し、


「よくそんな難しいこと知ってるね。すごいわ」


 と先生に褒められても、


「普通ですよ」


 と答えた。

 その彼女の態度は周囲の人にとってはまるで見下されているように感じたのだろう。次第に彼女の周りには人がいなくなり、そして一人になった。

 しかしそれでも彼女は周りに「普通」と言い続けた。まるでなにかの呪文のように。

 僕はそれがどうしてなのかわからず怖かった。

 だからある日、僕は彼女に直接聞いた。


「どうして君は周りの人に「普通」て言うの?」


 すると少女は普通に答えてくれた。


「私が普通の人でいるためだよ」


 僕はそれがどういう意味かわからず首を傾げると彼女は語り始める。


「私の両親は母が天才女優で父が天才作家なんだ。そしてそんな天才の両親から生まれてきたせいかな?どんなに普通にしていても、あっ私って周りの人と違うんだなーて感じちゃうの、それが私は嫌。もっと普通のありふれた家に生まれて来たかった。才能なんてそんな邪魔なものなんていらないから普通の人でいたかった。周りの子と同じがよかった」


 そして彼女は言う。


「だからこそ私は普通に人でいるために「普通」て言い続けないといけないんだ」


 そこでようやく彼女ことを理解した。

 彼女は自分が普通の人でいるため、ただそれだけのために周りの人の認識を、価値観を自分と同じようにしようとしていたのだ。

 それは一種の洗脳だと言えるだろう。

 僕はそれを理解した時、背筋が凍りつきそうなほど怖くなった。今まで『わからないことは怖いことだ』だと言っていたが、わかってしまうことがこれほど怖いことだと知ったのはこれが初めてだった。

 恐怖に怯えている僕に彼女は言う。


「君も私と同じで普通の人だね」


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