一花が連絡交換をしてくれたわけ
「本当にいいですか海原先輩」
「うん、もう決めたことだからいいの。明日、先生にちゃんと言って断る」
「うーん、とてももったいないことしているような気がします」
まつりちゃんはそう言う。
確かにもったいないことをしているのは本当のことだろう。しかしこれ彼女が決めたこと。誰も口出しできることではなかった。
そんな会話をしていると僕のバックから音が聞こえた。それはきっとスマホの音だろうと思いバックを開けスマホを取り出すと姉貴から電話が来ていた。
「ちょっとごめん」僕はそう言って会話を聞かれないように二人から離れる。姉貴がこうして電話をかけると言うことはもしかして一花がどうして僕に告白してきたのかわかったのだろうか?
僕は電話に出る。
「もしもし、いきなり電話をかけてきてどうしたんだ?」
「いやただの確認さ。若葉ちゃんと連絡先を交換はできたかい?私の可愛い弟よ」
「それは……」
残念ながらまだだった。
しかしそんなことを言えるはずもなく、返答に困っているとそれを察した姉貴は言う。
「なんだ。まだなのかい?うぶな弟だね。さっさと適当な理由でもつけて連絡を交換しちゃえばいいのに」
電話越しでも姉貴が笑みを浮かべているのがわかる。
「別にいいだろ。で要件はそれだけか?」
「いや、帰りにコンビニ寄って少年シャンプを買ってきて欲しいんだよ。家の近くのコンビニに売ってなくってね」
「……」
漫画なんて読んでいる暇があったら就職しろよと思ったが、僕は二人を待たせるのも申し訳ないので「あぁわかった」と言い「じゃあ、よろしくねー」そう言って姉貴の方から電話を切った。
そして僕は二人のところに戻る。
「へー先輩、スマホ持ってるんですね。なんか意外です。ちゃんと使いこなせているんですか?」
「僕をおじいちゃんみたいな扱いするなよ」
「ふーん、まぁいいです。先輩、せっかくなんで連絡先交換しませんか?」
「えっ」
僕はまつりちゃんにいきなりそう言われて驚く。
「先輩のことだからどうせ、女の子の連絡先なんて持ってないじゃないんですか?」
「いや、まぁそうだけど」
てか、家族以外の連絡先なんて誰も知らない。そう言った意味ではスマホを全然使いこなせていなかった。
「じゃあさっそく連絡先を交換しましょうよ。ほら海原先輩も」
「えっ?あっ、うん」
まつりちゃんにそう言われて急いでスクールバッグからスマホを取り出す海原。
マジで?海原とも連絡先交換できるの!?
僕は思わず心が躍る。
その後、慣れない連絡交換に手こずりながらも海原とまつりちゃんの連絡先を交換することができた。
「先輩にとって私が初めての女の子になっちゃいましたね」
「変な言い方するな。ただ連絡先を交換しただけだろ」
そんな会話をしばらくした後、本格的にあたりが暗くなり始めそろそろ帰らなければいけない時間になったが、僕はコンビニでシャンプを買わければいけないので二人と別れて僕はコンビニに入った。本日、三度目の入店である。
「私のことを忘れてずいぶんと楽しそうだったみたいね」
忘れていた。本当に忘れていた。
一花は僕を睨みながらそう言った。
なんだろうとても怖い。まるで浮気現場を見られたかのような感じだ。
「スマホを見せなさい」
とても断れそうな雰囲気ではなく、僕はスマホを一花に恐る恐る渡した。そして一花はスマホの電源をつけ、ロックを解除しスマホの中を確認する。
「て、ちょっと待て!!お前、どうしてロックの暗証番号をしってるんだ!?」
「そんなもんロックを解除しているところをこっそりと覗けばわかるわよ」
「怖!!」
「そんなことより、あの子達と連絡先を交換したみたいね」
そんなことよりで済まされる話ではなさそうだったが、再び睨まれてしまってはどうしようもなかった。
「まぁそうだけど……」
「なら、私ともしなさいよ」
「…….えっ?」
「だから私とも連絡先を交換しなさいよて言ったのよ」
そう言って一花はスマホを取り出した。
「それともなに?私と連絡先を交換するのは嫌って言うの?」
「えっと……そんなことはないけど」
予想外の展開に僕は困惑する。彼女のことだからスマホを真っ二つに折られると身構えていたのだけれど。そんなことはなかった。どうして一花はいきなり連絡交換をしようと言ってくれたのだろうか?僕が海原とまつりちゃんと連絡交換をしたから嫉妬しているのだろうか?なんだろう可愛いなと思わず思ってしまう。
ともかく僕は一花とこうして連絡先をした。これで一応、目的は達成したのだった。
「じゃあ、私は帰るわ」
「あっうん。じゃあな」
一花がコンビニから去った後、僕は一花の連絡先を見る。少しだけ、ほんの少しだけ違い嬉しい気分になった。海原とまつりちゃんと連絡を交換した時とまた違う嬉しいさだった。
「うん?」
と、僕はあることに気がつく。
アイコンというものがあるのだが、その一花のアイコンがなんと三十代ぐらいの男の人とのツーショット写真だったのだ。
――残り三日。




