海原が留学するのを迷っているわけ
僕は海原こら海外に留学する話を詳しく聞く前にコンビニ入り二人分のガルガル君を買い、ついでに喉が渇いたのでコーラを買った。
一花はどうやらまだトイレに篭っているらしく、呼んでも出てきそうにないので僕は二人のところに戻り「ほらよ」と二人にガルガル君を渡した。
「へへへ、先輩ありがとうございます」
「ごめんね。さっき買い食いはダメだよて言ったばかりなのに、私の分まで買ってくれて」
「別にいいよ、気にしないで食べてくれ」
「うん、ありがとうね。私ガルガル君初めて食べるかも」
「えっそうなんですか!?」
そう言った海原にまつりちゃんは驚く。
「ガルガル君の美味しさを知らないなんて人生の大半を損してますよ!!そもそもガルガル君を食べたことないなんてありえるんですか!?」
「私はそうだったけど?」
首を傾げながらそういう。
海原がガルガル君を食べたことがないのは、別に家が貧しいからというわけではなくって(むしろ海原の家はお金持ちだ)ただ単にそういう機会に恵まれてなかっただけなのだろう。
「先輩はもちろんありますよね」
「まぁあるけど。ウチの姉貴が好きだからよく買ってくるけど」
「へーそれはいいお姉さんですね」
「……」
一花も言っていたが、なんでガルガル君を好きな人はいい人ということになるのだろうかさっぱり理解出来なかった。むしろ君たちのせいで僕の中ではガルガル君を食べる人は悪い奴しかいないイメージになっているのだが。
「それじゃあ溶けちゃう前に食べましょうよ海原先輩」
「うん、そうだね」
二人はそう言ってガルガル君の袋を開け、ガルガル君を取り出す。そして「いただきます」と言って一口食べた。
「チョコレート味が一番好きですがガルガル君はこの昔ながらの味もやっぱりいいですよね。海原先輩は始めてのガルガル君はどうですか?」
「冷たくて美味しいね」
「そうでしょ!そうでしょ!実はこのアイスの棒に時々、『あたり』て文字が書いってあって、そのアイス棒をお店の人に見せるともう一本もらえるんですよ」
「そうなんだ。それはいいね」
「でもなかなか出ないんですよねー。私、当たりを出したくってまとめ買いしたことがあるんですけど、一本も当たりがでなくってお腹を壊したことがあるんですよ」
それはただの自業自得だった。そしてまつりちゃんはよくそこまでガルガル君で盛り上がれるな。普通の女子校生はそこまでガルガル君なんかで盛り上がらないだろう。
「で海外に留学するて本当の話なのか?」
ガルガル君の話は強引にやめてさせて僕は本題に入った。
もしもその話が本当だとすれば、一花がどうして告白してきたのかますますわけがわからなくなる。
今出てきた中で一番の最有力の推理は、海原は僕のことが好きで海原を嫌っている一花はそれを奪い取ろうとして僕に告白してきたというものだが、しかし海原が海外に留学するのだったら一花が僕に告白する意味なんてなくなってしまう。
これだと推理が成り立たない。完全に振り出しに戻ってしまう。もう日数が残り半分になろうとしているのにここで一から推理しなければいけなくなるのはあまりにも嫌なことだった。
だからこそ、ここは本人に直接聞いて真意を確かめたかった。僕は海原にそう聞くと少しだけ困った感じで言う。
「ちょっとだけ違うかな。海外の学校に行かないかていう話がきているだけで、行くとは決めてないんだ」
「あれ?まだ決めてなかったんですか?私はもうてっきり行くと思ってました」
留学するというのは、どうやらまつりちゃんの早とちりだったらしい。だけど留学しないかという話がきているのは本当みたいだった。
「えっどうしてまだ決めてないんですか?」
「私は今のままがいいんだよ。今の普通の生活がいいんだ」
まつりちゃんの質問に海原はそう答えた。
まぁ海原ならそう答えることわかりきっていたことだった。
しかし、さすが海原。そんな話が来るなんてそうそうないことだろう。まぁでも海原は水泳大会で優勝したり、成績もかなり優秀なので海原にそんな話が来るのも不思議ではないかとかもしれなかった。
むしろ今まで陽森高校なんかに彼女がいたことが不思議なことだったのだ。
まつりちゃんもそう思っているらしく、
「なにを行ってるんですか先輩!!先輩は絶対に行くべきですよ!!陽森高校なんかにいるにはあまりにももったいない器の人です!!」
と熱心にそう言う。先輩たいしてこれだけ言うということはそれだけ海原のことが大好きだからなのだろう。
だけど海原はそう言われて悩んだいた。
いや留学しないかなんて話がきたら不安で悩むことは当然のことかもしれないが、しかし彼女の場合は不安で悩むことなんてまずありえないことだった。
「まつりちゃんはそれでいいの?」
海原はまつりちゃんに聞く。
「私が海外に行ったら泳ぎ方教えられなくなっちゃうよ。一緒にいられなくなっちゃうよ」
「それは……それは……確かに寂しいですけど、でも私だって少しぐらい泳げるようになりました。だから先輩は安心して海外に行ってください!!」
「でも……私はやっぱり……」
「なにをそこまで困る必要があるんですか!!海原先輩は海外留学するべきです!!先輩もそう思うでしょ!?」
「……えっ」
どうしてここで話を振ってくるんだよまつりちゃん。
僕は海原の方を見ると海原もこちらを見ていた――どこか寂しそうな瞳で。
「私、やっぱり海外留学した方がいいかな……キー君」




