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ぼっちの僕がクラスメイトに告白されたわけ。  作者: 今無 いま
残り五日
38/73

海原に嫌われたくないわけ

 

「痴漢で捕まればよかったのに」

「あれお前だったのかよ!!」


 僕と海原は気まずい空気になりながらも無事に学校にたどり着き、その後は何事もなかったかのように退屈な授業を受け、そして現在昼休み。

 僕は昨日約束した通りに体育館裏に来ると、先に来ていた一花は僕に向かって不機嫌そう言い放ち、僕はすかさずそう突っ込んだ。

 いや、なんとなくそんな気がしてたけど。


「なんであんなことしたんだよ」

「別になんだっていいじゃない。キー君も女の子の胸を揉めて満更じゃないでしょ?むしろ感謝してほしいわ」

「誰が感謝なんかするか」


 開き直っている一花に僕は怒る。


「海原に嫌われたらどうするつもりだったんだよ」

「まぁそれが目的でやったところはあるけれど、そう上手くはいかないわね。キー君がもっと海原さんの胸を揉みしだいてくれればよかったのだけれど」

「できるかそんなこと!!」


 いや、危うく揉みしだきそうになったけど。一花の術中にまんまとハマりそうになったけど。


「海原が許してくれたからよかったけどな、もし嫌われてたら僕はお前を許さなかったからな!!」

「あら?そんなに海原さん嫌われたくないの?キー君もしかして海原さんのこと好きなの?」

「うっ……」


 完全に図星だった。


「わかりやすい反応ね。確かキー君と海原さんて同じ中学出身だっけ?その時から好きなの?」

「いや、別にそういうわけじゃないさ。確かに昔は海原に好意を抱いてたかもしれないけど、今はなんとも思ってないよ」


 ちゃんと告白できなかったことに後悔はしているけど、海原に振られたことでその想いは完全になくなってると断言できる。だけど海原に嫌われたくないのはやはりまだ未練がどこかにあるからなのだろうか?わからなかった。

 そんな僕に一花は興味なさげに言う。


「ふーん、そうなの。なら別にいいわ」

「別にいいのかよ」

「えぇ、もしキー君が海原さんのことが好きだったとしても、私はキー君を私にだけしか愛せないように調教するだけだから」

「怖っ!!」


 僕がもしもまだ海原のことが好きだったなら一体どんなことをされていたというのだろうか?


「まぁそんなことよりもとりあえずお昼にしましょう。お腹空いたわ」

「あぁそうだな」


 まだ一花に電車の中で海原に痴漢じみたことを強制的にさせられたのを謝罪してもらってなかったが、僕もお腹が空いていたのでそれへ諦めることにした。

 僕は一花の隣にゆっくり座る。


「はい、これキー君の分のお弁当。今日は忘れずにちゃんと作ってきたわよ」

「お、おう.。ありがとうな」


 僕は一花から差し出されたお弁当を警戒する。

 一花のことだからお弁当の中身は僕が食べ物で一番嫌いな茹でブロッコリーでいっぱいになっているという嫌がらせをしてきそうで怖かった。

 僕は恐る恐るお弁当の蓋をあけるとそれは予想通りブロッコリーだらけのお弁当だったが、しかしただ茹でただけブロッコリーではなかった。見るからにかなり凝っていそうなブロッコリー料理だった。


「おおスゲー」


 僕は思わず声が漏れる。

 まずブロッコリーを細かく刻み卵と混ぜて焼いた『ブロッコリーの卵焼き』とブロッコリーを豚肉で巻いた『ブロッコリーの豚肉巻き』そしてブロッコリーとチーズを使った『ブロッコリーグラタン』。かなりのブロッコリーづくしだったが、ブロッコリー嫌いの僕のためにどれも一工夫されていてとても美味そうだった。

 一花の奴、まさかこんなにも料理が上手いなんて。


「これ本当にお前が作ったのか?」

「失礼ね。正真正銘、私が全部作ったに決まってるじゃない」

「これ作るの大変じゃなかったか?」

「別に一人ぐらい増えたって平気よ」


 そう言って自分の分のお弁当の蓋を開ける。それは僕と同じブロッコリー弁当だった。どうやら一花はブロッコリー嫌いの僕に合わせてくれたらしい。まぁ別々に作る方がむしろ大変なので当たり前と言えば当たり前かもしれなかったが、若干申し訳ないような気がした。

 僕なんかのためにまさかここまでしてくれるとは。


「ねぇ知ってる?ブロッコリーは栄養が高いのよ?」

「へーそうなのか」

「私も昔はブロッコリー嫌いだったけど、それを知ってから食べるようになったわ」


 前に栄養をしっかり摂取しないと部活でバテててしまうと言っていたことを僕は思い出す。部活のために栄養のことを考えるなんて意外に部活熱心らしい。僕には到底真似できそうもないことはだった。


「それに昔はママがブロッコリーが嫌いな私のために色々工夫してくれたのよ。それが私はとても嬉しかったわ」


 一花はなぜか少し寂しげにそう言う。

 僕はそんな一花に違和感を覚えつつも、このブロッコリー料理はきっと一花の母から教わったものなのだろうなと思った。

 僕はとりあえず箸でブロッコリーの卵焼きをつまみ、一口食べる。


「……」

「どうかしら」

「えっと……うまいです」


 想像していたよりも何倍も美味しかった。ブロッコリー嫌いの僕でも平気で食べられる。てか、ブロッコリーが好きになりそうだった。

「それは良かったわ」と彼女は言うと続けて言うのだった。


「キー君が良ければ私と付き合えば毎日、お弁当作ってくるけどどうかしら?」


 僕はセリフを聞いてこれが彼女なりの調教という奴なのではないだろうかと一瞬思うのだった。



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