海原のことが気になってしまうわけ
そんな失敗を犯したはずの僕がまた懲りずに海原のこと好きになるなんてありえないことだったが、「海原が僕のことを好き」という可能性が出てくるとやはりどうしても気になってしまう僕だった。
もしこの可能性がゼロだったらば僕もここまでそわそわしなかったのだろうが、しかし可能性が低いがゼロではないということがこの場合は逆に厳しかった。
なぜら僕はこれから『一花が僕に告白してきたのは、海原から僕を奪うためだけに告白してきたのか?』それを確かめるためにまず『海原は本当に僕のことが好きなのか?』を確かめなければいけないのだ。
そんなのどうやって確かめろと?これだったまだ可能性がゼロだった方がマシだった。
一応、家を出る前に姉貴からアドバイスをしてもらったが
「海原ちゃんに告白したらいいんだよ」
まったく頼りにならない探偵だった。
姉貴は昔僕が海原に振られたことを知らないからそんな無責任なことが言えるのだろうし、そもそも一花と付き合うのかどうか迷っている最中でそんなことをしたら海原のことを嫌っている一花に息の根を止められるだろう。
どうやら僕一人で考えるしかなさそうだ。
僕は駅のホームにあるベンチでうなだれながらその方法を考える。
さてこれからどうするべきか?
「おはようキー君」
「あぁおはよう海原」
やはりここはそのことを知っていそうな海原の友人に聞くべきなのだろうけど、彼女の交友関係なんて僕は知らないし、僕にそんなコミニケーション能力なんてなかった。
じゃあ昔みたいに『密告ゲーム』をやるのはどうだろうか?
いや却下だな。そんなゲームをやったところで本当に確かめることができるのか怪しいし、僕はもう二度とあのゲームをやりたくはなかった。
「……」
うん?あれ?僕、今誰かに話しかけられなかったか?
僕は隣を見る。
隣にはあの海原が座っていた。
「うわぁ!!……う、海原!?いつのまに!!」
「さっき来たところだよ?なんか考えごとしてたから話しかけようか迷ったけどやっぱり話しかけちゃった」
友達に向かって普通に話しかけるようにそう言う。
僕はそんな普通な彼女を見て、僕の心臓はドキドキと脈を打っていた。まさかこんなところで海原と偶然会ってしまうとは思わなかった。
「迷惑だった?」
「いや別にそんなことないけど」
「ならよかった。一花ちゃんだったらハッキリ「迷惑」て言われてたもん」
「あーアイツなら確かにそう言うだろうな」
そして「私の目の前から消えて」と言うだろう。
なんてことを想像していると海原は聞いてくる。
「そういえばさっき何考え込んでたの?」
「えっと……まぁ色々とな」
海原が本当に僕のことを好きなのか考えてたなんて到底言えるはずもなく僕は曖昧にごまかした。すると海原は言うのだった。
「ああわかった。一花ちゃんのこと考えてたんだね」




