姉貴が僕に協力するわけ
「さあ、とりあえず今までのことをこの頼れる姉貴にすべて話したまえ」
「絶対に話さなねぇーよ」
僕は上から目線の姉貴にそう言った。
姉貴がどうして僕に協力しようしているのか。それはきっと金になりそうだからと言う下劣な理由もあるかもしれないが、いくら姉貴がフリーターであってもただそれだけの理由で動かないことは姉貴と何十年も一緒にいる弟の僕にはわかっていることであり、姉貴はただ純粋に面白そうだから僕に協力しようとしていることもわかっていた。
わからないことが怖い僕と違ってわからないことを面白がってしまう姉貴。その厄介な性格のせいで姉貴がまだ刑事にいた頃は上司によく不謹慎だと言われ怒られていたらしいが、しかし姉貴の活躍っぷりは相当すごかったらしい。だがそんな姉貴も今はただのフリーターであり、ただの面白半分で首を突っ込んで欲しくない。そもそもこれ僕の問題であり、僕一人で解決しなければ意味がないのだ。
「なんだい?せっかく私が協力してあげるって言っているのにまさか断るつもりかい?でも一人じゃそろそろ限界だと思っているはずだろ?」
「……」
姉貴そう指摘され黙る僕。
確かその通りだった。
一花と付き合うのか答えを出さなければいけないタイムリミットは残り五日になったのに何も進展はなく一花がどうして僕なんかに告白をしてきたのかわからないままで、これからもっと情報を引き出さなければいけないのにあのチャラ男に目をつけられたことで一花との接触に制限がかかってしまった。
とてもじゃないけど答えを出すにはあまりにも時間が少なすぎるし、情報が足りなさすぎる。あと残り五日で答えを出すなんて不可能と言えるだろう。
そう考えると誰かの協力は必要不可欠だった。
今の僕は正しく猫の手も借りたい状況。例え現在フリーターだとしても、優秀な刑事だった姉貴に協力してもらえばかなりアドバンテージになるだろうし、もしかしたらそれなりの結論を姉貴なら導き出せるかもしれない。そして姉貴は信用できないからこそ信用できる数少ない相手だった。
「わかった、僕に協力してくれーーただし一つだけ条件がある」
「条件て言い方はあまり好きじゃないね。もっと別の言い方をしてくれ」
「じゃあお願いはどうだ?」
「よろしい。可愛い弟のお願いならなんで言うことを聞こう」
僕は姉貴に向かって言う。
「姉貴には推理だけをしてもらいたい」
「ふーん……それってつまりーー」
「そう、姉貴には安楽椅子探偵になってもらいたい」




