僕があのことを秘密にするわけ
「ねえキー君、なにかあったでしょ」
「いや、別に何もないよ」
「でも今のキー君、様子がおかしいわよ?」
「……」
昼休みになり他の生徒は学食に行ったり教室でお弁当を食べている中、僕は昨日と同じように一花に誘われ体育館裏に来ていた。彼女がお昼を誘ってきたのは当然、僕に手作り弁当を食べて欲しいと言う思いがあったのだろうが、しかしトイレから戻ってきた僕の様子を見て異変を感じ取ったみたいだった。
「絶対に何かあったでしょ」
「だから何もないって」
「……」
「……」
お互い無言のまま睨み合う。
きっとトイレであった出来事を一花にも言うべきことかもしれなかったが、しかしどうしても話すことを躊躇ってしまう。そのことを話したら一花に危険を及ぼす可能性があったし、それにアイツらあそこまで言われ何も言い返せなかった僕はもしかしたら一花に嫌われるかもしまうという不安があった。
……嫌われる?僕は一花に嫌われたくないのか?だから話したくないのか?そんな馬鹿な。僕という人間はそんなこと本当にどうでもいいて思っているはずだ。そうだろ?だった言えばいいじゃないか。何を怖がる必要なんてある?
「わかったよ言うよ」
そう言って僕はトイレであった出来事を話し始めたが、隠すべきところは隠すことにした。具体的に言うとあのチャラ男に殴られたことや彼らの目的が一花の身体だということを僕は話さないことにした。そんな僕の話を聞いて一花は言う。
「やっぱり私たち学校ではしばらく目立った行動はしない方がいいかもしれないわね」
「まあ、そうかもな」
僕が教室で不用意に一花に話かけてしまったからこそ、アイツらに目をつけられたのだ。だからお互いの安全のためにも目立った行動は避けるの必然と思えた。畜生、あと六日以内に一花と付き合うのか答えを出さなければいけないのにこれは僕とって予期せぬ展開だった。
「そんなに残念がらなくってもいいわよ。教室で話せない分、お昼休みになったらこの場所に来ておしゃべりしましょう」
「了解」
「なんか、禁断の恋愛をしているみたいで萌えるわね」
「禁断の恋愛て……意外にロマンチックだなお前」
「別にいいじゃない」
少し頬を赤らめて恥ずかしそうにそう言った。可愛いなと思わず思った。基本、彼女は無表情なのでギャップで可愛い見えてしまうのだろう。ギャップ萌えて言う奴だ。
そう分析していると一花は元の無表情に戻っていた。
「ほら、お弁当にしましょ」
そしてお弁当を取り出した。




