僕が遅刻したわけ。
一花と海原はさすが運動部、二人とも水泳部なのにまるで陸上部みたいな走りで校門が閉まってしまうギリギリで間に合った。てか、途中から一花は前を走っている海原を必死に追い抜こうとしていたように感じられた。だからアイツ、海原に敵対心むき出しすぎるだろ。
そして帰宅部の僕がそんな二人についていけるはずもなく、へばってしまい、
「さきに行ってくれ。すぐに後を追いかけるから」
と謎の死亡フラグを立て僕は見事に遅刻し、先生に少しだけ怒られた後その罰として現在廊下に立たされているというわけなのだが、
「なんだよ、お前も遅刻かよ」
なんでこのチャラ男もここにいる?
「えーとおはよう」
「おう」
とりあえず僕は挨拶すると、チャラ男は笑顔でそう返した。
「お前みたいな真面目な奴が遅刻するなんて珍しいな。なんかあったのか?」
「まぁね」
電車の中で一花に耳を舐められ、あの海原と友達になり、さらにその女子二人に挟まれながらのんびり登校してたら遅刻したて言ったら彼は羨ましがるだろうか?いや、そもそも信じてくれないかそんな話。
だから僕は適当に誤魔化す。
「重たい荷物を持ったおばあちゃんを助けてたら遅刻した」
「いや、お前それ絶対に嘘だろ」
「人のことそう疑うなよ、まぁ嘘だけど。先生に同じことを言ったらまったく信じてくれなくって怒られた」
「火に油注いでどうするんだよ」
確かにその通りだった。むしろそのせいで先生の怒りをさらに買ったような気がする。
「そういう君はどうなんだい?」
「俺はこの通り不良だから別に遅刻しても平気なんだよ」
「平気ってなんだよ。そんなんじゃ留年するぞ」
「仕方ないだろ?朝弱いんだよ」
そう言って大きな欠伸をする。まだ眠いようだった。
まぁ彼が別に留年しても僕には関係ないことなので、それ以上何も言わないことにした。
そして僕とこのチャラ男に共通の話題なんてあるはずもなくその後はお互い無言のままだった。しかし一花や海原と違って気まずいって思うようなことはなぜかなかった。それは彼が男だからかと思ったがどうやらそれは違うみたいで、ただ単純にこういう人間が、存在が嫌いなだけなのかもしれないだけだった。
そこに理由なんで存在しない。ただ嫌いなだけ。
果たして一花も同じなのだろうか?
ふと、そう思った。
朝のホームルームの終わりのチャイムが僕たちはようやく教室に入ることができ、自分たちの席に座る。
チャラ男はすぐに友達と仲良く喋っていた。そして一花は遅刻した僕に何か話しかけることもなく、だからと言ってクラスメイトと打ち解けようとすることもなくただ自分の席でおそらく家から持ってきた本を読んでいるだけだった。
彼女も僕と同じでクラスメイトが嫌いなのだろうか?




