一花が海原を嫌うわけ
「で、話を聞きましょうか。どんしてこんなところに、それも海原さんと一緒にキー君はいるのかしら」
そう言いいながら踏切を渡り、こちらに一歩ずつ近づいてくる。なんかとてつもなく怖かった。背後にゴゴゴという擬音が見えそうだった。
「いや、これは違うんだって。海原はお前と一緒に登校しようと……」
「そんなことは知っているわ」
そう言って一花は海原を睨む。
「でも気に入らないわね海原さん。私はあなたことが嫌いだってもういい加減わかってるのでしょ?」
「うん知ってる」
海原は一花の圧力に一歩も引かずにそう言う。スゲー、思わず関心してしまう。
海原は続けていう。
「でもね私は例えどんなに嫌われていても、それでも一花ちゃんと仲良くなりたいて思ってるの」
「それなら他人の力なんて使わずに一人でなんとかしなさいよ」
「それは……そうかもしれないけど」
「少なくとも私の恋人になるかもしれない人を利用するなんて不愉快だわ」
「利用って言い方が悪すぎるぞ。僕はただお前と仲良くしたいらしいから海原に協力しているだけだ」
僕は二人の会話に割って入る。
どうして一花はここまで海原を嫌う必要があるのだろうか。いや、それは案外わからないこともないのかもしれなかった。
海原は見た目は普通であるけれど、僕や一花と違って一花の交流が得意。そして成績優秀で水泳では全国大会で優勝しているすごい才能の持ち主。
それを嫉妬しない奴なんて果たしているのだろうか?多分、いないだろう。そんなの誰にだって不可能だ。それは海原がさっき言った全人類の好かれることが不可能のように、誰かに嫉妬されないで生きていくなんて不可能だ。
一花もしかしたらそうなのかもしれない。まぁ今はただの憶測でしないのだけれど。
「キー君は彼女の味方をするのかしら。私じゃなくって」
「いや、そうじゃねぇよ」
「まぁいいわ。で、君たちはいつまで手を握っているのかしら?」
そう指摘され、お互い慌てて手を離す。さっきから手を繋いだままだったのか。これは少し恥ずい。海原もそれは同じのようで頬を赤らめてた。
「ほら早く行きましょ」
「えっいいの?」
「えぇ、このままだと遅刻しちゃいそうだしね。今日だけは仕方がないわ」
そう言ってさきに歩き始める一花。
僕と海原はお互いの顔を見て、クスッと笑った後彼女の後を追う。もしかしたら一花はツンデレなのかもしれない。
て、思っていた時期が僕にはありました。
「あの一花さん近いんですが?それと痛い」
「別にいいじゃない。友達なら普通のことよ」
一花はまるで子供のように僕の右腕にしがみついていた。そして海原には私に話しかけてくるなとまるで言っているような目で睨んでいる。
お前、本当にどんだけ海原のことが嫌いなんだよ。
とても仲良くなれそうな雰囲気ではない。
そんな雰囲気に押されてなのか、海原は一花がいる反対側にいた。つまり、『海原、僕、一花』と僕が女子に挟まれたいた。
まさに両手に華。これはまるで僕がモテているようだった。
なかなかぼっちの僕が味わえるものではない。とてもそんな状況ではないのはわかっていることだが、うん存分にこの状況を楽しもうではないか。
僕は浮かれていると一花は何かに気づき言う。
「そういえば、キー君の右耳もう濡れてないみたいだけど、どうやら海原さんにハンカチを借りたみたいね」
「あぁまぁな」
「私に言ってくれたら、ハンカチぐらい貸してあげたのに」
「えっお前、ハンカチ持ってたの!?でも僕がさっき聞いた時、ないって……」
「うん?なんのことかしら?乙女がハンカチを持ってないてあるわけないでしょ常識的に考えて」
常識て言われた!!電車のなかで耳を舐めてくるような奴に!!
「でもキー君の右耳どうしてあんなに濡れてたのかしら?」
「お前が電車の中で耳を舐めたからだ!!……あっ」
僕は気づく。
まんまと一花に会話を誘導されていたことに。
「えっ耳を舐めたって……なんのこと?」
海原は聞かなくってもいいことを聞くのだった。