僕がボッチになったわけ
僕の高校生活は一体いつから失敗していたかと言うと、それは陽森高校を選んでしまった時からだと断言できるだろう。
中学生時代の僕はそれなり友達はいたが彼らと過ごした時間は華やかしいものだったのかと聞かれたら、無論そんなことはなかった。
それはあまりにも地味で冴えなく陰惨で、周りからは馬鹿にされ笑われていたことだろう。
僕はそれが嫌で仕方がなかった。
どうしてお前らごときに馬鹿にされなければならない。
どうしてお前らごときに笑われなければならない。
僕たちは普通に生活しているだけだ。
そんな筋合いはない。
それを声に出して言えることができればどれだけ良かったのだろうか、小心者の僕はただ黙り見て見ぬふりをすることしかできなかった。
だから僕は何かを変えようと、高校生になることをきっかけにすべての人間関係をリセットしようと考えた。リセットしてマイナスな自分をゼロに戻す。
僕はそんなジョジョ第七部の主人公みたいな決意で中学生時代の友達がいない陽森高校を選んだ。
今になると久々と思う。
普通に仲の良い友達がいる高校に行けば良かったと。
中学生時代散々なありさまだった僕がいきなり華やかしい高校生デビューを飾れるはずもなかった。
入学当初は一人でもいいから友達を作ろうと僕なりに努力はしていたが、コミュ障とクラスに仲いい人間が一人もいないことが災いしなかなか友達を作れず、そして中学生時代仲の良かった友達となぜか連絡がつかなくなり、二年生なった現在――僕はぼっちになった。
つまり、僕は中学生時代から何も変わっていない。 いや、中学生時代よりももっと悲惨なことになっていた。
マイナスからさらなるマイナスに落ちていた。
そして友達はゼロになっていた。
何やってるんだ僕は。
本当に。
部活でもやっていた少しは違ったのかもしれないが、中学生時代何もやってこなかった自分がいきなりサッカーや野球、テニスなどできるはずもないし、唯一運動部で出来そうな卓球とかやったところでそれじゃあ中学生時代と何も変わらないだろう。文化部だったらなおさらだ。
だから僕は一年の時どこの部活に入らなかたわけだが、そんなことぼっちなってしまった今では言えることではなかった。
どこでもいいから部活には入部しとくべきだっただろう。
何かを変えたければ、無理なことでも挑戦をしなければいけないのだ。
それを僕は分かっていなかった。
結局のところ僕がぼっちになってしまった理由は、他の誰のせいでもなく自分のせいだった。
「あら、また一人なの?」
そんなことを思いながら昼飯を一人で食べていた僕の心をえぐるような言葉をさりげなく放ってきたのは昨日、なぜか僕に告白してきた若葉一花だった。
「なんだよ」
「せっかく昨日あなたと友達になれたことなんだし良かったお昼一緒にどうかしらと思って声をかけたのだけど」
「あぁなるほど」
彼女の右手にはおそらくお弁当が入っていると思われる巾着袋が握られていた。
一緒にお昼を食べるだけなら僕は全然構わない。
むしろウェルカム
「でも、エアー友達と一緒に食べているみたいなら残念だけど私は諦めるわ」
「いや、僕にそんな痛い設定をつけるなよ。いないからエアー友達」
「いないのね。ともちゃん」
「ともちゃんて言っちゃったよ」
てかそんなネタ知ってるなんてこいつオタクなのか?意外すぎる。
「まぁいないなら私とお昼一緒に食べてくれるわよね?」
「ああいいよ」
そう言って僕はコンビニで買ってきた昼飯をもって立ち上がりそして若葉に聞く。
「でどこで食べるんだよ若葉」
「若葉はやめて、これから私のことは一花て呼んで。友達でしょ?」
「友達……」
そっか、僕にも一応友達はできたのか。
それはあまりにも変な感覚だった。きっと昨日彼女から好きと告白されたこともあるかもしれないが、それ以上に今まで友達がいなかったことも要因の一つだった。
まぁでも僕はとうとうぼっちから脱出できたと言えるだろう。
これは素直に嬉しかった。
「わかった。じゃあこれからよろしく一花。僕のことも気軽に名前で呼んでくれ」
「ええ、わかったわ……そういえば君の名前なんだったかしら」
「……」
僕達、本当に友達か?