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ぼっちの僕がクラスメイトに告白されたわけ。  作者: 今無 いま
残り六日
15/73

僕が電車を苦手とするわけ。

 

 僕は電車が苦手だ。

 通勤ラッシュで人が密集して息苦しい満員電車。電車内は仕事に行きたくないなとか、学校面倒くさいとかそんな憂鬱な気分が充満して空気が淀んでいる。

 そんな電車、誰も乗りたくないだろう。

 でも社会人は仕事に行かなければいけないし、学生は学校に行かなければいけない。だから嫌でも電車に乗らなければならないだ。

 それが人としての義務。

 そして僕もその義務を仕方がなく果たそうと、現在こうして駅のホームにいるのだった。


「一番線、電車が参ります。黄色い線までお下がりください」


 女性の声でそんなアナウンスが流れる。

 僕がいつも乗る電車だった。

 電車が奥の方から来るが見える。そしてこちらに近づいてくるとだんだん大きく見えてくる。

 きっとあの電車の中にはいつものように人が密集しているのだろう。

 でもなにも僕が電車を苦手とするわけは満員電車が嫌だからなんてそんな誰もが思っているようなことだけではなかった。

 僕は電車が視界を横切る度にどうしても想像してしまうのだ。

 誰かに後ろから突然駅のホームに突き落とされ、次の瞬間トマトジュースみたいな赤い血を撒き散らしながら自分の体がただの肉片となり木っ端微塵になる自分の姿を。

 それはあまりにも妙にリアルな想像。

 その度に、想像から現実に引き戻された度に僕は生きていることを実感させられる。確認させられる。認識させられる。

 人によってはそれをポジティブに捉えることができるのだろうけど、生憎僕はそんな考え方はできなかった。

 毎回死ぬような思いをするなんて生きている心地がしない。

 それもまた人を信じられないことが原因なのだろうか。多分、そうなのだろう。

 人を信じられないから、誰が僕を駅のホームから突き落とそうとしているのではないかと考えてしまうのだろう。そして人が信じられない、つまり人が苦手な僕はだから人が集まる電車が苦手なのだった。

 そこまで電車が苦手なら自転車で行けよと自分でも思ってしまうが、僕なら家から学校までかなり遠い。少なくとも自転車で行ける距離ではないので、電車を使うしかないのだった。

 あぁもっと家から近い学校を選べばよかったと思う。

 それなら中学校の時に仲の良かった友達がいて今みたいなぼっちにならなくって済んだのだろうが、しかし僕が自らの意思で選んだ学校なので後悔をしたかってもしてはいけないだろう。

 少なくとも電車が苦手だなんて理由で。

 そんなことを思ったところで視界を横切った電車がようやく止まったり、ドアがゆっくりと開く。

 僕は満員の電車に入ろうとするとそこには、


「あらこんなところで偶然ね。おはようキー君」


 若葉一花がいた。

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