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ぼっちの僕がクラスメイトに告白されたわけ。  作者: 今無 いま
残り七日
14/73

僕が今のところ彼女と付き合わないわけ。

 

 彼女がいたことない童貞の僕がどうして二人の女の子から迫られているような他人から羨ましがられそうな状況にいるかと考えると本当にわけがわからないが、別にモテ期がとうとう僕に到来したというわけではないだろう決して。

 じゃどうしてこうなったのか?

 とりあえず一花が今のところ一花と付き合うつもりはあるのかという質問に僕がなんて答えるのか知りたがる理由はまぁわかる。

 偽りの告白だった言えど、彼女だって自身の目的のために僕のことが好きだと言う定で行動しなければいけない。だから彼女が理由を知りたがるのは当たり前だった。

 だけど、海原はどうしてそんなこと聞いてくるのだろうか?

 どうして無関係の海原はそんなことを知りたがるのだろうか?

 知ってなんのメリットがあるのだろうか?いやメリットとかそういう話ではないのか別に。女子というものは恋話が基本好きだ。周囲とは逸脱した天才だけど彼女だってその例外ではないだろう。だとしたらいい迷惑だった。

 まぁでも聞かれたら、答えるしかなかった。

 てかこの状況の場合はもう答えるしか選択肢はないだろう。

 幸いなことに答えはすでに決まっていた。

 僕は言う。


「今のところは付き合おうと思ってないよ」


 その答えに海原はホッとしたようにし、一花は無感情で「そう、残念だわ」とまるで僕がそう答えるのわかっていたかのように言う。


「どうしてか理由を聞かせてくれないかしら」


 まだ中間発表だがしかし一花は現在、僕みたいな人間にフラれてしまったことになってしまってる。だからその理由を知りたがるのは当たり前と言えた。

 そして僕だって特に理由を考えもせずに断るような酷い人間じゃない。ちゃんとした理由はある。

 僕は頭の中で言いたいことをまとめてから発言する。


「えっと……普通の人だったらさお前みたいな奴に告白されたら、誰だって付き合うと僕は思うんだよな」

「あら、嬉しいことを言ってくれるわね。好きになっちゃうわ、もう好きになってるけど」

「……」


 やりづらい。

 第一、僕は見た目だけのことを言っているのだ。一花が援助交際しているという噂や変態的な性格を知ってしまっては、彼女と付き合おうとする人間なんて誰もいないだろう。


「どうしたのかしら、話を続けてちょうだい」

「……あぁわかったよ。告白されたら、誰だってお前と付き合いたいって思うだろう。でも僕は違う。人間なんて信じてない僕は、どうしても考えてしまう」

「人間を信じてないって……そんな……」


 海原がそう言って憐れむかなような目でこちらを見る。一花はそれを無視して「考えてしまうて何をかしら?」と聞いてくる。


「そもそも考えることとはどう言うことなのか。それはそこにわからないことがあるからだ。そこにわからないものがあるから人は考える。じゃあどうして人はわからないことに対してそこまで真剣に考えるのだろうか。答えは実に簡単。わからないことはつまり怖いことなんだよ」


 考えことはわからないという恐怖の対抗手段。


「宇宙はどうなっているのかわからない。だから人は宇宙について考える。死というものがどういうものかわからない。だから人は死について考える。人の感情がわからない。だから人は感情について考える」

「つまり、キー君はどうして私が君に告白をしてきたのかわからないから警戒しているていうことなの?」

「あぁずいぶんまわりくどくなってしまったけど」

「えぇまわりくどいわ」


 どうして僕もここまでまわりくどくなってしまったのかわからなかった。もっと普通に聞けばいいのに。

 それも自分という人間がわからない恐怖という奴なのだろう。


「まぁなるほど。キー君の気持ちはわかったわ。じゃあどうすれば、キー君に私と付き合って欲しいって思ってくれるのかしら」

「お前がどんな人間なのかもっと教えてくれ、そしてお前も僕がどんな人間なのか知って欲しい。本当に僕みたいな人間と付き合いたいのか考えて欲しい」


 そう言うと彼女はなぜクスッと笑い


「わかったわ」


 と言った。

 気がつくとプール場の雰囲気は静かになっていた。練習している人間のほとんどはこちらを見ている。あの練習熱心な雛村もこちらを驚いた様子で見たいた。なんだろうこれ、まるで公開告白でもしているかのような感覚だった。

 とても気まずい。


「えーと悪い。今日は帰るわ」

「そうね。そうの方がいいかもしれないわね。でも帰る前に一つだけいいかしら」

「なんだよ」

「確かに私たちはお互いのことをまだ知らない。知らないことが多すぎる。でもだからといって一週間以内に答えを出して欲しい。それ以上は私、待てないわ」

「あぁわかった」


 どうしてそこまで一週以内にこだわるのか、そこに彼女の理由があるからなのだろう。それも、この一週間で知るべきことだった。


「じゃあ練習頑張れよ」


 僕はそう言った。


「えぇ頑張るわ」


 すると彼女はそう返した。


「また明日」

「えぇまた明日」


 そんな恋人みたいなやりとりをしたあと、僕はプール場から出るのだった。


――残り六日。

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