剣術中級相当
ーー瞬間。鋭くかん高い風切り音が鳴り、激しい風圧が僕から少し離れたニーナを襲う。
木刀を持つ腕が震える。
思わず木刀を落としてしまった。
「うそ………」
確かに発動した。本当に。
ーーいままで無能がスキルが発動させたことなどこの世で一度もない。
少なくとも。
パッシブスキルは発動していない。
ニーナも認めているから間違いない。
今のこの剣術は、ギフトに頼らず自力で鍛えたものだ。
ギフトの恩恵無しで、努力だけで、ギフト持ちを超えたいと願っていたのだ。
事実、アクティブスキル無しでの戦いなら、僕の見立てる限り道場の先生にも負けてはいないと思う。
僕は見学しかしていないからあくまでも僕の主観の話で、だが。
しかし。
今確かに僕は発動させた。
任意発動のアクティブスキル《一閃》を。
ただの振り下ろしだと言う人もいるだろうが、わかるのだ。
他ならぬ、僕が。
ニーナが微笑みながらこちらへ歩いてきて、僕の両手を自身の両手で掴んだ。
その青い目が僕をまっすぐに見る。
「エドウィン。あなたは確かに今、常識を打ち破り、スキルを放ったの。
あなたは主神様からのギフトは無しに、たゆまぬ努力で剣術中級の中でも上位レベルの剣技を身につけていた。もうとっくに体はアクティブスキルを放てるように仕上がっていたのよ。
あとはきっかけさえあれば使えるんだと思っていた。それが今日のいまこの瞬間なんだよ!」
実感する。
落とした木刀を拾い、ニーナから少し離れてから、《一閃》。
《一閃》《一閃》《一閃》《一閃》。
一拍おいて、《一閃》。
振り向きざまに《一閃》。
3回回ってワンと泣いてから《一閃》。
木の目の前まで移動して、《一閃》。
およそ木刀ではつけられないような、綺麗な断面を残し、斜めに両断された。
「ハハッーーーー」
やばい!!これチョーーー楽しい!!これが夢にまで見たスキルかあ……!!!
「ねえニーナ!僕にもっといろんなスキルを教えてよ!!」
「しょうがないなあ、もう。子供じゃないんだから。これから毎日教えてあげるからね!じゃないと……」
「んー最後なんか言った?よく聞き取れなかったんだけど」
「ううん!なんでもない!それよりもあの木、先生の奥さんが大事に育ててた木だからたぶんすごくおこられるよ?」
「…………ホント?」
「ホントホント!!えへへ、逃げよっか!」
そうしてニーナは銀色の髪をなびかせ、僕の手を引いて走っていく。