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最強魔王のドラゴン赤ちゃん育児戦記  作者: あけちともあき
第十一章 夏祭りの魔王様
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第74話 魔王、この先の運命を告げられる

「ピャアー」


 ショコラが水晶球に手を伸ばす。

 いかん、それはショコラには重過ぎるぞ。

 マリナは占いの結果に驚き、固まってしまっている。

 余が止めねばならぬな。


「ショコラ、だめであるぞー」


「ピャピャ!」


 抵抗するショコラ。

 水晶球をペタペタしたいらしい。

 よし、ここは後で指紋をふき取るとして、触るだけ触らせよう。

 良いか、水晶球よ。

 余の心の中の問いかけに、水晶球はピカピカと光って答えた。

 よーし。


「ショコラ、触るだけであるぞ? そーれ」


「ピャアー!」


 水晶をぺたぺた触るショコラ。

 ぼわんぼわん、と点滅する水晶の光。


「マウー」


 しばらくペタペタして、水晶球を指紋だらけにしたショコラは、そこで満足したらしい。

 さっと手を離した。

 ちなみにドラゴンにも指紋はあるのだ。

 人間のそれとは全く形が違うがな。


「はっ」


 マリナがこっちの世界に返ってきた。

 その間に、余はユリスティナに水晶を押さえてもらいながら、キュッキュッと磨いている。

 よーし、指紋が取れた。


「……わたし、放心してしまっていました……。あんなに凄い運命、見た事がありません! 竜と、人と、魔と、全部をつなげていく……そういう運命でした。ショコラちゃんはもしかして……」


「うむ、ドラゴンである」


「ええーっ!!」


 大声を出して驚いたのはボップであった。

 こりゃボップ!

 大魔道士トルテザッハの最後の弟子ともあろう者が、ショコラの正体に気付かぬとは!

 人魔大戦が終わって気が抜けすぎである。

 そのうちまた、みっちりとしごいてやろう。

 とりあえず、今夜辺りこやつの夢に出て、地獄のイメージトレーニングをしてやる。

 マリナは落ち着いたもので、「やっぱり……」と納得した顔だ。

 ボップにはこれくらい落ち着いた相手の方が良かろうな。


「では、次は余であるな。さあ見てくれ」


「ピャア」


「ショコラはさっき見てもらったであろう」


「ピョ?」


 ショコラが首をかしげて、分かってない風である。

 余はひょいっと抱き上げて、ユリスティナにパスした。


「マーウー!」


「ショコラ、次はザッハの番だからな。ほら、お外でまた何か食べよう」


「マー」


 ちょっとじたばたしたショコラであったが、ユリスティナの剛力には勝てぬ。

 それに、テントの入り口を開けたら美味しそうな匂いが漂ってくるので、気持ちはそっちに移ってしまったらしい。

 姫騎士に抱っこされながら外に出て行った。

 最近は、自力で歩くことも増えてきたが、多くの出店があるお祭りのこと。

 高いところからお店を見下ろせるのが都合よいのであろう。


「では気を取り直して、どうぞ」


 余が促すと、「は、はあ」マリナが頷いた。

 そして、水晶球に手をかざす。


「ザッハさんの未来を見てみましょう」


 水晶球が光りだした。

 余はこの水晶球とこっそりやり取りしており、魔王ザッハトールとしての正体には触れない方向でお願いしている。

 色々面倒になるからな。


「あっ、こ、この姿は……大魔道士トルテザッハ様!?」


「な、なにーっ!? 師匠だってーっ!?」


 しまった!

 トルテザッハの件は水晶球に言い含めていなかった。

 マリナの覗き込む水晶には、今は亡き(という設定になった)大魔道士トルテザッハの姿が映し出されている。


「ま、まさかあんた、師匠の……!?」


「甥である」


 余、とっさに嘘をつく。

 だが、嘘を真実だと信じ込ませるには、証拠を捏造すれば良い。

 トルテザッハに近い感じの魔力を練り上げ、身に纏ってみた。


「おお……確かにその魔力! 師匠にそっくりだ!」


 ボップ、よく感じ取れ。

 ちょっと違うだろ。

 雑に判断しちゃだめだって、余が教えたでしょー。

 これ、絶対になまってるであるな。

 余は再び、ボップにスパルタ再教育をせねばならぬと誓ったのである。


「ボップ、ちょっと黙ってて。占いの最中だから」


「あっ、はい」


 ボップが静かになった。

 マリナ、咳払いをする。


「失礼しました。占いを再開しましょう」


 親しき仲にも、仕事のスタイルをきっちり通す。

 その辺り、マリナは占いのプロである。

 精神を統一し、水晶球へ魔力を注ぎ込む。

 これに反応し、水晶球は相手の運命を映し出すのだ。

 さーて、余の運命とは一体!

 突如、黒い光を放つ水晶球。

 おお、何やら禍々しいぞ。


「こ……これは、これは……! なんと恐ろしい運命……!!」


「どうしたのだ?」


 恐れおののくマリナ。

 興味津々の余。


「ザッハさん、あなたには、恐ろしい運命が待ち受けています……! それは、勇者ガイが辿った旅路よりも過酷かもしれません……!」


「ほうほう」


 過酷とは一体。


「マリナ、そこまで凄いことになってるのか!? っていうか、ガイの奴よりも過酷な運命って何だよ……!」


「ザッハさん、この先を語ってもよろしいですか」


「うむ。どうぞ」


 余はサラッと促した。


「では……。ザッハさん。あなたの向かう先に待つのは、魔なる者たち全ての主である、魔神です。この魔神との戦いが必ず訪れると、水晶球は言っているのです……!!」


 そこまで言うと、マリナは真っ青な顔になってふらりと倒れかかった。


「うおおーっ!!」


 ボップがそこに滑り込み、マリナを受け止める。

 あれは、足元の摩擦を減らしてツルーッと滑る、ボップのオリジナル魔法、ツルツル床(フリクションフリー)である。

 これ、余も考えたことが無かった魔法なので、純粋にボップのやつは凄いイマジネーションだなーと思うのだ。

 やっぱりこやつ、才能がある。


「気にするな、マリナよ。貴様に言われて、余も覚悟が決まったわ。黙っていても魔神が関わってくるのであろう? ならば、平穏な暮らしのために余は魔神を倒さねばならぬな」


「魔神を……倒すだって!? そんなとんでもないことが本当にできるのか!?」


 おおっ、派手に驚いてくれるボップ。

 やる気が出てくるな。

 こやつのオーバーリアクションは非常にいい感じだ。

 一家に一人欲しいな。


「できる」


「な、なにぃーっ!!」


 いいぞいいぞ。


「その時には、若き大魔道士ボップよ。貴様の力も借りることになるであろうな」


「お、俺? ふへへ、若き大魔道士と来たかあ。仕方ねえなあ」


 やる気になったボップである。

 さて、ではなまったこやつの腕前を、夢の中で叩き直してくれよう。

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