勝負
「おい、平民のやつが出てきたぞ」
「ああ、合格って言ってたよな」
「バカな、平民だぞ」
へえ、平民の合格に不満を言うのは一部の奴らだけなのか。他の人たちは皆自分の結果にのみ集中している。
思っていたより差別意識はないのかな。
「えー、これより全ての試験が終わりましたので、入学試験は終了とさせていただきます。皆様お疲れ様でした。合格された方は明日またお会いしましょう。それでは」
よし、帰って早速両親に合格の報告をしよう。多分喜んでくれるだろうな。
そう思い校門から出て行こうとしたその時。
「おい!平民。ちょっと待て」
先程不満を垂れていた中の一人が声を掛けてきた。
「はあ、何でしょうか」
「お前、平民のくせに合格したそうだな。どんな汚い手を使ったんだ?」
「普通に受けて普通に合格しただけですよ」
「嘘をつけ!この俺、ライド様でも落ちたんだぞ!お前のような平民ごときが合格するわけないだろうが!」
何だ、こいつ落ちてたのか。それにしてもよくこんな恥ずかしいセリフを堂々と叫べるもんだな。周りの人たちも苦笑してるぞ。
「そこで、だ。一つ魔法で勝負をしようじゃないか。俺が勝ったらお前の合格を取り消して、俺を合格させる。お前が勝ったらこのまま。さあ、受けるよな?」
受けるわけないだろ。
「いや、受けませんよ」
「何だと?逃げるのか!」
「逃げるもなにも......僕にメリットないじゃないですか」
「ハッ、メリット?お前のメリットなど俺にとってはどうでもいい。俺が受けろと言っているのだからお前は受けるしかないんだよ!」
やばい。意味が分からなさすぎて頭がショートした。どうすればいいんだよ、こんなの。
「話は聞かせてもらったよ」
「あ、さっきの試験官さん」
「ああ。すまないが君、彼の勝負を受けてくれないか?」
「ええ......。何でですか?」
「彼はあれでも貴族の名家の出でね。このままだと君は彼の嫌がらせを受けてしまうかもしれない」
「え、そうなんですか?」
「そう。そこで、だ。君には勝負を受けて彼に勝ってもらいたい」
「でも、そうしたらさらに嫌がらせが激しくなりそうですけど」
「それは心配ない。この学校では実力が全て。君が彼よりも強いということを見せてくれれば、学校は君のことを保護できるんだ」
「なるほど」
「だから受けてくれるとありがたい」
「分かりました。受けることにします」
「そうか、ありがとう」
はあ、面倒くさいことになったなあ。
あいつに負ける気はしないけど。
「話はついたか?平民」
「ああ、受けることにしたよ」
「フン、元よりお前には他の選択肢などないんだよ」
何とも自分勝手なやつだ。
「では、私が審判を受け持つ。早速開始しよう。二人とも運動場まで付いてきたまえ」
「ハハ、そんな広い場所を使うほど接戦になればいいがね」
最後まで口の減らないやつだ。
さて、勝負が行われる運動場までやってきた。騒ぎを聞いていた周りの人たちも観戦しようとやってきている。
運動場の中心で、お互い距離を取り、十メートルほど間を空ける。辺りはすでに暗くなり始めており、視界は良好とは言えない。
「さあ、俺は位置についたぞ!始めよう!」
「僕も準備出来ました」
「よし!ではこれより勝負を開始する。注意点は二つのみ、相手を殺してしまわないこと。私がそこまで、と言ったら終了だ。それでは、始め!」
「はああああ!死ねええええええ!」
そう言うと、ライドは手から野球ボール程の火球を作り出し、こちらへ放出してきた。
時速五十キロと言ったところかな。それに動きも直線で単調だ。これなら簡単に避けられる。
ヒョイと避けてやるとライドは焦った素振りを見せた。
「チッ、運のいいやつめ。だが、これならどうかな?」
今度は両手から火球を作り出し、先程と同じように飛ばしてきた。
二つにしたところで何も変わらない。同じように避けてやる。
「ずるいぞ!避けるなんて、臆病者め!」
「いや、あまりにも球が遅いからさ」
「フン、さっきから避けてばかりで攻めてこないじゃないか。俺もお前と同じように避けてやるから、やってみろよ」
そうか。ではお言葉に甘えて。
右手を伸ばし、魔法を念じる。
「気絶銃」
バチッという音と共に、ライドに向かって稲妻が走り抜けた。
その瞬間、ライドは力が抜けたように崩れ落ち、気絶してしまった。
俺の勝ちだ。
「勝負あり!勝者、バート!」
よし、勝ったぞ。さすがに電流は避けられなかったようだな。
しかし、歓声が上がってないな。まあ、地味な結末だったしな。折角来てくれたのに、申し訳ない。
「おい、あいつ今なにやったんだ?」
「分からない、何か光が走ったのは見えたのだが......」
「まさか、雷を出したのか?あんな魔法見たことがないぞ!」
ああ、皆は五歳だしな、電気魔法を見たことがないのかもしれないな。そのうち習うだろうし今は知らなくても無理はないだろう。




