クオン対バート
試合開始のアナウンスとともに闘技場へと入場した。だが観客の歓声は殆ど入ってこない。目の前の強大な敵に全神経が集中しているからだ。
間も無くして、決勝戦開始の鐘が鳴った。
「いくよー、バート君!」
「来い、クオン!」
メキッと体全体が無に引きづられ押しつぶされるような感覚。
「ぐうっ!やっぱり効くなあ、強い」
「へへー、でもこれを耐えられるバート君も凄いよねー。普通無理だよ?」
「はは、こんなところで潰されてられないし、それにまだこっちが攻めてないしな!」
電気魔法で分子レベルに分解してクオンに飛ばしていた右手を再構築させ、クオンに触れる。
「なっ!なんで手がこんなところに!」
「流石のクオンでも目視出来ないレベルの大きさのものにはあまり力を及ぼせないだろ?」
「くっ、意味分かんないけど!でもそれがどうしたっていうのー」
クオンの魔法によって右手があっという間に潰される。距離の差で力負けしてしまうので仕方ない。だが右手の役割はこれで終わりなので問題ない。
「いや、それだけで充分だ」
手が触れたことにより電気魔法の対象となったクオンを押し潰す。
「??ぐうっ⁉︎な、これは!俺の魔法⁉︎」
「いいや、潰す魔法はクオンだけの専売特許じゃないんだよ!」
「くそっ!そんなことが!だけど、俺の魔法があればこの程度......!」
「どうとでもなるよな。でも代わりにこっちの力が弱くなってるみたいだな。さあここからどんどん攻めていくぞ!」
「くそお!」
クオンの力が分散しだいぶ余裕が出来たので電気魔法を使い電流やレーザーで攻撃していく。
「くっ。......ははっ、どうなることかと思ったけど、まだ何とかなりそうだね、当たらないよ!」
放った電流やレーザーはことごとくクオンに当たらず逸れていく。
「ダメか。やっぱり空間を曲げられるっていうのはズルいな。じゃあ肉弾戦ならどうだ?」
クオンに近づき間合いに入ったところで顔面をぶん殴る。
「は?ぐあっ!......そ、そんなのありかよー」
「いいじゃないか、殴り合い。まあ、俺が負ける気はしないけどな!」
俺の戦闘に対して最適化された体と前世での軽い知識、それに鍛えた経験値があればクオンに負けるはずがない。
電気魔法の重圧の対応で体の動きが鈍っているクオンに拳で追撃をかける。
「くそっ!でも俺がそんなのに付き合ってやる義理はないねー!誰にも見せたことがないけど俺は炎魔法だって使えるんだぞ!鬼炎!」
ゴウッ!と超至近距離でクオンに炎魔法を放たれた。が、炎に俺が包まれることはない。対炎魔法は最も俺の得意とするところだ。
難なく巨大な炎をかき消し、クオンにボディブローを入れる。
「ぐふうっ!な、なんで!俺の魔法がこんなにあっさりと!」
「炎魔法は俺の魔法と一番相性がいいからな。まあ運が悪かったってところだ」
続けざまにクオンを殴りつける。だがあんまり殴っているといじめみたいなので魔力を溜めた渾身の一撃をたたきこむ。
「ぐああっ!げほっ!げほげほっ!」
「ふうっ、そろそろ肉体のダメージで魔力を消費しすぎて限界が近づいてるんじゃないか?」
「うるさい......!こんな!こんな馬鹿なことが!俺が一番強いのに!俺が最強なんだ!」
「いいや、俺がクオンに勝って最強になる」
「黙れ!お前がいなければ!お前がいなければ俺が最強だったのに!......消えろ。消えろ消えろ消えろ!消えて無くなってしまえ!」
「ふふ、往生際が......」
ふと右腕に違和感を覚え視線を移すと、唐突に、なんの兆候も無く右の肩から先が忽然と無くなってしまっていた。




