Aクラス決勝戦2
「どうするったって上に逃げればいいだけじゃないの?」
上空に行ったフィアは水海を使ったソークの魔力が無くなるまで待つことにした。
闘技場が埋まるだけの水の量に魔力を流し続けているのだ。いつかは限界が来るはず。
その時をじっと待てばいい。
そうしているとソークは一匹の龍を水の中へ戻した。魔力が少なくなってきたのだなと思ったフィアだったが、
「えっ?そんなっ!」
頭上に突如現れた龍に咥えられ噛み潰されながら地上へ向かって急降下していく。
「ははっ、水って目に見えるものだけじゃなくて空気中にも存在するのは知ってるよね?俺は水海の上空だったらそれすら操れるんだ」
地上付近で龍の口から吐き出されたフィアはザッパアアアンッ!と凄まじい勢いで地上に打ち付けられた。
「さて、勝負あり、かな?」
「いえ、まだまだよ」
信じられないことに満身創痍になりながらもフィアは立ち上がった。
「バカな!龍に噛み潰されただけでなく地面へ叩きつけられたんだぞ!一体どうやって!」
「教えてあげる義理はないわね」
「いくら圧縮した空気で防御したとしても力はそのままフィアにいくはずだ!」
「ふふ、そんなことに気を取られてて良いの?」
「何のことだ?まあいい、なら耐えられなくなるまで絶え間なく龍に突撃させれば良いだけの話だ!行け、水龍!」
ソークの命令とともに三匹の龍がフィアに向かって一斉に挟撃を仕掛けた。
「見せてあげる、私の新魔法、絶空!」
ヒュゴオッ!と闘技場全体に上昇気流が吹き荒れる。何人か観客も巻き添えになって飛ばされている程だ。
「ふっ、空気を薄くして窒息させるつもりか。だがそんなありふれた手の対策をしてないとでも思ってるのか⁉︎」
上昇気流が発生した瞬間ソークは水のベールを貼り、自らの酸素を確保した。
「闘技場でやる以上それくらいは対策済み......なっ!何が起こっている⁉︎水のベールが消えていく!」
ソークを包むベールが外側から順にまるで空気中に溶け出していくかのように消えていく。
「これが私の絶空。もう水の龍も使えないでしょう?」
「そんな!おい、水龍!水龍!何故だ、何故動かない!どんどん崩れていく!」
「最初に魔力を使いすぎたのが仇になったわね。空気が薄くて苦しいでしょう?すぐにケリを付けてあげるわ!」
空気のベールを纏ったフィアがソークに向かって突撃していく。
「う、くく。ま、待て......やめてくれ......ぐあっ」
フィアの風刃によってソークの胴は真横に切断された。
「決まったぁぁぁー!Aクラス決勝戦はフィア選手の勝利だぁぁぁー!」
フィアの勝利が告げられ観客からの拍手や歓声で闘技場は包まれた。
「くっそ......負けたか」
「いい勝負だったわ。途中から負けてしまうかと思ったもの」
「はは......でも最後のあれどうやったんだ?水のベールも水龍も使えなくなってしまった」
「うーん。私にもあんまり分からないんだけどね。密封した容器の中から空気を抜くと水が蒸発しちゃうの」
「なんだそれ、聞いたことないぞ」
「偶然発見しただけで何でかは私にも分からないの。だから出来るかは不安だったけど闘技場なら周りは壁で覆われてるから出来ると思って」
「凄いな。完敗だよ」
「何だ。大丈夫そうじゃないか」
「いやいやバート、全然大丈夫じゃないって!頼むから早く治して下さい先生!」
「先生は恥ずかしいからやめろ」
「あ、先生私もね!」
「だから先生はやめてくれ......」
二人を治し終わり待機時間になった。
いやーしかし凄かったな。ソークとフィアの戦い。思ってた何倍も迫力があった。
特に最後の絶空というやつには驚かされた。多分経験則からの魔法なんだろうけど自分であそこまで辿り着くとはな。
水っていうのは常に気相になりたがってる物質なんだが、気圧によって抑えつけられているために液相のまま存在出来ているのだ。
では闘技場の壁を使い上昇気流によって闘技場内の気圧を下げてやったらどうなるか。もちろん水龍も水のベールも気相になろうと必死になるだろう。
ただ普段のソークであれば魔力によって液相のまま抑えつけておくことが可能だっただろうが、水の刀、水刃、極め付けは水海と水龍に魔力を使いすぎたために抑えきれずに蒸発してしまったのだ。
もちろん呼吸もし辛くなっているので空気のベールを纏ったフィアには勝ちようがなかった。
それに水龍から身を守った魔法も良かった。
圧縮した空気を自分の周りに纏うのではなく、凄まじく圧縮し硬くなった空気を外層に、柔らかい空気を内層にする二層構造によって出来るだけ衝撃を軽減、吸収出来るようにしていたのだ。
凄い。これはフィアの圧勝と言ってもいいんじゃないかな。観客を吹っ飛ばしたのはあれだけど俺とネンで助けたし楽しんでたっぽいから良いだろう。




