Sクラスの試験
レーアに連れられ校長室へやって来た。
コンコン。
「失礼します」
「ああ、入りたまえ」
扉を開き中へ入ると机に向かっている初老の男性が目の前に居た。
「ご苦労だったね。来てもらった早々で申し訳ないのだが、少し話をさせてもらうよ」
「はい」
「まずSクラスの件だが高校でも継続とする、ことになっているがバート君は途中編入だったとのことで試験を受けてもらう」
「試験ですか」
「そうだ。途中から真魔法に目覚めた、もしくは急激に真魔法に成長したというのは前例がなくてな」
「それは意外でした」
「意外という方が意外だよ。皆当然のこととして受け止めているが?」
......成る程。意識はしていなかったが確かに皆魔法は才能やセンスで決まると思っているきらいがある。
そう言えば、魔法の授業でも魔法を成長させるというよりは感覚を掴んでセンスを身につけていく方針で進めていたな。そう考えれば確かに当然だと思うのも納得だ。
「ちなみにだが真魔法でない異質な魔法は偽魔法と呼ばれている。例を挙げれば、コップを逆さまにしても水がこぼれ落ちない魔法等だな」
「初めて知りました。そんな事は一回も聞いたことがありません」
「誰も喋りたがらないからだよ。自分が偽魔法持ちだとバレたら馬鹿にされてしまう。貴族であれば特にね」
まあ、コップから水が落ちないようにする魔法じゃ馬鹿にされるかもな。でも本質的にはもっと凄い魔法だよなあ。もしかしたらクオンみたいに重力を操ってるのかも知れないし。
前世で、それも物理屋の前でやったら絶対大興奮間違いなしだと思うけどこの魔法世界じゃ凄さは伝わらないよな。
「そういう訳だ。試験を受けてもらうよ」
「分かりました。それで、どんな試験をするんですか?」
「とてもシンプルなものだよ。ここの教師の一人と戦って勝利する、それが試験だ」
「直接戦うということですね?」
「そうだ。殺してしまっても構わないよ。逆に、殺される覚悟も持ってくれ」
「はい、覚悟しておきます」
「それは良かった。じゃあ、早速試験を開始しよう」
「え?今からですか?」
「当たり前じゃないか。夜には入学式が始まるんだ、今のうちに試験を済ませておかなければな」
確かに。
「レーア君、悪いけど運動場まで転送してくれないか?それが終わったら好きにしてくれていいから」
「では私も見ていきます。面白そうなので」
見世物じゃないんだけどな。
さて、レーアの転送で運動場までやって来たけど、なんか真ん中に凄いブチ切れてる男がいるぞ。あれと戦うのか?
「あの人と戦うんですか?凄い怒ってますけど」
「その通りだ。あれはウチの火魔法の教師の一人のジンギという男だ。後の詳しいことは彼に聞いてくれ。私はここで見ているから」
「あの、審判とかは」
「校長である私が判定するから大丈夫だ」
なら安心だな。あんまり気が進まないけどとりあえず行ってみるか。
「すみません。お待たせしました」
「お前がバートとかいう奴か」
「はい、今日はよろしくお願いします」
「始めに言っておく。お前の魔法は偽魔法だ!真魔法では断じてない!」
ええ......俺一回も自分の魔法が真魔法なんて言ってないんだけど。
「自分は真魔法の使い手だと言っている奴は大勢いる。だがな、あれらは全て嘘っぱちだ!私は以前クオン様の魔法を見させていただいた。あの魔法こそが真魔法だと確信している!それ以外は全て偽魔法だ!」
うわあ、クオン信者の人か。
「で、あなたに勝てばSクラスに入れるんですよね?」
「まあ、そうだな、そんな事は不可能だが!灼熱炎走!」
叫ぶや否や、地面に手を付き炎を地面に放射状に走らせてきた。流石高校教師と言ったところ。威力、速度共に今まで見てきたものと桁違いだ。
「言っておくが空を飛んでも無駄だ、死ね!」
そんな必要はない。取り敢えず力の差を見せつけてやるために直撃させてやる。
足に炎が触れた瞬間、ゴウッという音と共に全身が炎に巻き込まれ包み込まれてしまった。そして、放射状に放たれていた炎が急速に俺のところに集まりだした。
「フハハハハ!一度標的を見つけた炎は焼き焦がすまで離さないぞ!」
へー、確かに凄い魔法だな。無駄が無いのが素晴らしい。ただ、相手が悪かったな。
「ハハハ、もういいかな?一分も経っちまったからなあ、肉片も残ってないかも知れんな」
一分も経ってようやく炎が解除された。無傷で済むとはいえあんまり居心地のいいものでは無いからな。
「いや、無傷ですよ」
「ハハハ......は?......は?嘘だろ、馬鹿な」
「これでも偽魔法って言えます?」
別に真魔法と認めさせたいわけじゃないがプライドはズタズタにしてやりたい。
「お前......!どうやって!」
「燃焼ってのは要するに酸化反応。そんな威力じゃ俺の魔法には通じないですね」
燃えるというのは結局酸素が結合するって事だからな。ガチガチに電磁気力で肉体の結合力を高めておけば酸素と反応せずに済む、つまり燃えないという事だ。
「......だが、そんなのは真魔法とは言えねえな」
「言ってて虚しくなりません?」
ダサすぎるにも程があるセリフだが、一理ある。でもこんな奴に分解魔法使いたくないしなあ。あ、そうだ。じゃあ新しく作った魔法をこいつで試してみよう。
「肉体変形」
グニャリと自分の肉体を変化させていく。
「な、なんだそれは!魔法なのか⁉︎」
「やだなあ、れっきとした魔法ですよ」
前、チーターが何故速く動けるのかっていうのを本で見たことがある。確か流線形の体、それにバネのような筋肉と背骨が柔らかいことが理由だったような気がする。
なので、そんな感じに体を変えてみた。
「どうです?カッコいいですか?」
「いや、キモい......」
そんなキモいかな?
まあいいか。それで、チーターのようになった体だが結構動かしやすい。筋肉まみれなのが違和感あるけど。
その体と魔力による肉体強化、それに電気魔法による加速が加われば地上では多分最速だ。
まずは頚動脈からいってみるか。
「まさかそれが真魔法だって言」
何か言ってるところを軽く切り裂く。ヤバい、恐ろしいほど速いぞこれ。戦闘機よりも速いかも知れない。電気魔法で風除けしてなかったら一瞬でペシャンコだ。




