実験の成果
初めての人体実験から一週間。六人の被験体を用いた実験かつ訓練が終わった。
これだけの人数を短期間で貰えたのは俺の分解魔法の功績が大きい。闇に葬ってしまうのには最適な魔法だからだ。
ま、そんなことは俺にとってはどうでもいいことなので、ただ有難いだけだったが。
ともかく、魔法が成長したことは良いことだ。早速、毎度お馴染みのネンに協力を依頼し、訓練の成果を試してみよう。
「本当に腕に全力の風魔法を当てていいの?」
「いいよ。やってくれ」
「うーん。本当に出来るのかなー。不安なんだけど」
「大丈夫大丈夫。いけるって」
「しょうがない、信じるよー。じゃあいくよー」
両手を構えると、凄まじいエネルギーを持った風の塊が手の前に生成された。
「迅風!」
勢いよく放出された風は一瞬で俺の右腕を細かく切り刻みながら、腕を粉々に吹き飛ばしてしまった。
うん。まあこのくらいなら出来そうだな。
電気魔法を使い、今まで俺の腕を構成していた分子、組織を元の形に再構成させる。
散り散りになったそれらは、あっという間に集まり、俺の右腕は元通りに復活した。
「ほ、本当に出来た......」
「だから言ったじゃないか、出来るって」
一週間前の俺なら千切れた腕を元に戻すくらいが関の山だったが、実験と訓練を繰り返し成長した今なら、分子レベルでバラバラになったとしても、即座に治すことが可能だ。
今ではわざわざ分子を集めて、とか組織を復活させて、とかは思わず腕を治そうと思うだけで完全に治すことが可能となった。
何でもそうだが、最初の頃はいちいち細かい動作まで気を配らなければいけないものだが、慣れてくるとそれらを引っくるめた一つの行動を無意識に出来るようになる。
自転車などで考えると分かりやすいか。慣れてくればペダルを交互に漕ごうだとか、バランスを取ろうだとかは考えず、自転車に乗ろう、だけで済むのと同じだ。
要するに、システム化だ。
「何か、一気に強くなったね......バート君」
「技術の進歩というのは時に一気に飛躍するものだからな。それが電気魔法ともなれば、そのくらいの成長率は、当たり前だろう」
「そんなものかなー?」
「そんなもんだよ」
これで風魔法対策は完璧だろう。流石に脳を破壊されたら無理だろうが、それはどうしようもないので諦める。
本当は、脳を修復するように指示を出す電気信号を、破壊された瞬間に発動するように設定したら多分修復出来るのだろうけど、実験、訓練が出来ないのでそれは諦める。
もっと言えば、自意識の母体をこんな小さな脳ではなく、もっと大きなネットワークにしてしまえばその弱点すら克服できるが、今のところは人間を辞めるつもりはないので、しない。
「なんかもう、何言ってるか分かんないけどさー、それだけ強かったらもうクオンに勝てるんじゃない?」
「いや、勝てないだろうな。あの時のクオンになら勝てると思うけど、あいつも強くなってるだろうし、やっぱり同じ土俵に立てないと話にならない」
「同じ土俵って、前言ってた光子のこと?」
「そうそう。結局、質量を持ってる攻撃じゃクオンに通らないから、質量を持たない光子を操れないと無理だろうな」
「え、相手の重力子も防げないんだ」
「ああ、重力子は電荷持ってないからね」
そう、お互い干渉不可なのだ。まあ重力子に電荷を付加出来れば防げるが......。出来ないだろ多分。知らんけど。




