分解
実験開始から五時間後......。
「どうかね、調子は」
「ええ、おかげさまで良い実験が出来ました。これで少し上達しました」
「ああ、それは良かったな。しかし......それは......」
「あはは、殆ど原形は残ってないですね。でもまだちゃんと生きてますよ」
「一応聞くが、ヒトを壊して遊んでたわけではないのだな?」
「ええ、それは手段であって目的ではないです。とはいえ、原形を留めていないのは純粋にまだ下手くそなだけではあるんですけどね」
「それなら良いのだが。それで、もうその実験体は使わないのかね?」
「そうですね......。もう壊れてしまっているので、使いません」
「そうか、ならばこちらで引き取ろう。それを万が一にでも人に見られたら大問題なのでな」
「では、どうするのですか?」
「そんなことは言えるわけがないだろう。だが、確実な方法だ。安心してほしい」
「......結局、彼だと判別できるものが全て失われていれば良いのですよね?」
「そうだが、何故だ?」
「まあ、ちょっと見ていてください。分解」
異形のモノと成り果てた男の体に手を触れ、電気魔法でバラバラにする。
物質が結合しているのは電磁気力によって分子間力が働いているからだ。
ということは、分子間力をなくしてやれば、いとも容易くバラバラに出来るというわけだ。
普通にバラバラにしては残ってしまうかもしれない、ヒトを判別できる最小のものである遺伝子も、この方法ならば分子レベルまで分解出来てしまうので、文字通り跡形もなくなってしまう。
ただバラバラにするだけなら簡単だが、このレベルまで完全に分解するのなら、電気魔法が一番確実だろうな。
「な⁉︎消えてしまったぞ!」
「ええ。もう彼だと判別出来るものは残っていませんので、これでいいでしょう?」
「......いいか?監視役」
「信じられませんが......。本当に何の痕跡も残っていないようです」
ふーん。監視役さんそういう細かいのを見るのに特化した魔法か身体強化なのかな?まあ、何にしたって分からないのは当然だ。




