新授業
多少の自傷行為があります。
始業式を終え、晴れて二年生になった。
今は朝のホームルームを終え、一時間目の準備をしているところだ。準備といっても何も用意するものはないけれど。
どうも二年生から始まる新しい科目、というか授業らしいが、どんなものなのだろう。
「はい、おはよーう!では一時間目を始めていくぞー」
元気のいい先生だな。体育の先生か。
「僕は普段体育を担当しているんだけど、この授業もやってるんだ。どんな授業かというと、まあ実際に見てもらう方が早いな」
そして、先生は持ってきたカゴからスッと、何か杭のようなものを引っ張り出してきた。
「ではいくぞ。しっかり見てろよ!」
右手で杭を持ち、振りかざす。
ガンッ
振り下ろされた杭は先生の左手の甲へ直撃し、ポッカリと手に穴が空いた。ポタポタと血が垂れている。
「うええええ!」
「な、なにしてるんすか!」
「分かってくれたと思うが、この授業は治癒の授業だ。今から君達にもこれをやってもらう」
そう言い、手を向けるとわずか十秒ほどで、空いていた穴が肉によって埋め尽くされてしまった。
「ただ最初からこれをやるのは難しいと思うから、まずは針で練習していこう!では今から一本ずつ配っていくぞ」
ちょうど裁縫用の針ほどの大きさの針が皆に一本ずつ配られた。
「え、先生。それ、痛くないんですか......?」
「何言ってる。痛いに決まってるだろう。長年やっているが、この痛さだけは慣れないな」
「まじか......」
そりゃそうだ。痛くないわけがない。ただ、俺なら痛くないようにすることも可能だ。痛覚を遮断してしまえばいいからな。
でもそれだと訓練にならないからやらないけど。
「いいか皆。高校生になったら模擬戦が行われる。その時にこのくらいの治癒が出来なかったら、勝てないどころか一生残る傷を負うことになる。サボらずしっかりやれよ!では始め!」
よし、やってみよう。
治癒は得意な方だ。前世で学んだ生物、保健の知識があるからな。
それに電気魔法によって縫合も必要がない。電荷を与えてひっつければいいだけの話だからだ。楽だね。
針を振りかざし、左手に何回もぶっ刺す。治癒を行いながら連続で刺していく。痛い。針でもこんなに痛いんだ。風魔法なんか食らったらどうなるんだろう。
中学二年生にもなるが未だに魔法による怪我はしたことがない。前世でもナイフで切られたり、火炎放射器をぶちまけられたりしたことはなかったのでどれだけ痛いのかが分からないのだ。
ああ、トラックに轢かれた時は一瞬だけ死ぬほど痛かったかな。でも後は、あっ死ぬんだな俺、って感じだったからなあ。
「どうだー?大体出来たか?では次へ行くぞ。今度は炎魔法を受けた時の治癒だ」
先生は右手を左手の下へ持っていき、炎魔法を発動させた。左手が燃えている。
「熱っ!......炎は肉体を焦がしてしまう。これを治すことは不可能だ。よって新しい皮、肉、その他を生成する必要がある。これは穴が空いたり、傷が出来た時と違ってイメージ構築が結構難しいぞ」
シュッ、と火が消え、燃えていた左手を見ると見事に丸焦げになっていた。
「ちょっ、大丈夫なんですかそれ⁉︎」
「見た目はヤバいがそう大したことはない。外側だけが燃えたのみで中は大丈夫だからな。流石に中まで炭化したらもう治らないぞー」
程なくして外側の炭がパラパラと崩れ落ち、中から赤々しい肉が出てきた。
「まあ、これは針で刺した穴を簡単に治せるようになってからだな」
赤い肉の周りに体組織が生成され、荒いが、元の形へと戻った。
「完全に治す必要はないぞ。というか不可能だ。だから、ある程度肉をつけたらあとは自然治癒に任せるしかない」
うーん。炎魔法ってエグいなあ。これは炎魔法に対抗する作戦を立てておかなくてはいけないな。




