挑戦者
順位変えテストといっても所謂テストではない。下克上方式の一対一勝負だ。
例えば1番の座を欲しいとすれば、1番、つまり俺のところへ勝負を挑み、勝つ必要があるのだ。
勝負といっても魔法の勝負なら何でもいい。
挑戦回数は一度きり。誰に挑むのか、真剣に考えなければならない。そして、挑まれた側は絶対に受けなければならない。
というわけで、今俺は皆から狙われている状況なのだ。だが、終業式が終わって十分ほど経ったが、未だ勝負を挑まれていない。皆、遠巻きにこちらを見ているだけだ。
「おい、ソーク。お前は?俺しか挑める相手いないじゃないか。やらないの?」
「いやあ、挑まれた勝負に負けた時のこと考えたら怖いからさ。やめとくよ」
「そう、ならいいけど」
とりあえず誰か一人と勝負してみたいんだよな。そうすれば見ている奴らも別のとこへ行くだろう。
おー、早速誰か来た。でも見たことない顔だな。上位の人たちとは大体会ったことあるしなあ。下位の人かな?
それにしてもブカブカな服着てるな。背丈は普通なのに。
「お前が1番か?」
「ああ、バートっていうんだ。よろしく!勝負の方法は何にする?何でもいいけど」
「直接勝負でいいだろう。相手を倒した方が勝ち。シンプルだ」
「いやいや、怪我をするようなことはダメって言ってただろう?違う方法にしよう」
「私は構わない。お前も構わないだろう?ならばいいじゃないか。行くぞ!」
そう言うと、すぐさまこちらへ突進してきた!
「あー。まだ良いって言ってないのに」
魔法士で突進してくるタイプは結構珍しい。まずは遠距離魔法で様子見をするのが一般的だし、合理的だからだ。自分から一方的に近づいてはただの的になってしまう。
だとするとよっぽど自分の力に自信があるのか、短時間で決着をつけたいのか......。
「そんな考えごとをしている場合か?」
ゴウッ
彼が放った炎を軽く避ける。威力もなく小さな炎だ。どうやらまだ本気ではないらしい。
「君も本気じゃないみたいだしね。そういえば初めて会ったけど、名前はなんて言うの?」
「俺の名はゲーア、4番だ」
「ああ!4番の人だったのか。全然知らなかったなー。昼食とか一緒に食べたかったのに」
「馴れ合いは嫌いなんだ。それにやるべきことがあったのでな」
「へー!何やってたんだ⁉︎」
「今から見せてやろう」
ゲーアは、チャラリと首にかけていたネックレスを外し、こちらへ向き直った。
「ネックレスをかけるというのは私の趣味ではないが、これがないと力を抑制出来ないのでね」
「それってそんな凄いネックレスなんだ」
「見ていろ」
パアッと、ゲーアの胸のあたりが紫色に光り始めた。
「私は生まれた時から魔力過給病という病気でね。まあ私は病気とは思ってないが」
胸の光が全身に広がり始め、どんどんゲーアの魔力量が上がっていく。
「このネックレスをしていないと魔力の供給速度が人より速いのさ。もちろん体には良くないが」
ついには光がオーラのようにゲーアを覆い尽くし、魔力量が最大となったようだ。
「供給速度が速いと、最大魔力量もだんだん増えていくものでな、この一年の間にもだいぶ増えたよ」
「確かに。俺の魔力量より多いかも」
「というわけだ。では、今度は本気で行くぞ。火球!」
火球は一番基本のベースの魔法だ。珍しいな。みんなはもっと違う魔法を使うのに。
しかし、ゲーアの火球は洗練されている。魔力の無駄がなく、生成も早い。
「凄いな!さっきと大きさはほとんど変わらないのに温度や動きが段違いだ!」
「それはどうも。だが、それだけではないぞ」
瞬間、ゲーアの体がはち切れんばかりに巨大化した。
「はっ?」
「っらあ!」
地面を蹴り出し、力強く高速で近づかれてしまった俺は、右手で腹をぶん殴られて吹き飛んだ。
痛え。電気魔法で衝撃を弱めて、魔力で身体強化もしたが呆気にとられてしまった分、反応に遅れてしまった。
「何だあれ、服がブカブカだったのはそういう理由だったのか。びっくりしたなあ」
空中で速度を弱め、停止する。
「500mくらい吹き飛ばされちゃった。ゲーアやるなあ!」




