風魔法は難しい
火の構造というと、前世の中学校での出来事を思い出すなあ。ある日、火についての理科の授業が終わった後先生に、火は気体、液体、固体のどれに当たるのですかと聞いたことがある。
先生は何と答えたか、自分で調べなさい、だ。
その頃の俺にはとてもショックだった。なぜ教えてくれないのだろうかと。
そして調べた結果、火はそのどれでもなく、プラズマという状態であることが分かった。
プラズマとは気体が電離している状態のことで、雷が発生している時に大気がプラズマ化していたりと、割と身近な存在である。
なんせ、宇宙に存在している質量の99%以上がプラズマらしい。凄いね。
話が逸れたな。とにかく、火はプラズマという状態であるということを知っていたことと、それに加えて電気魔法を訓練していたことから、皆が驚いてくれる程度には威力のある火球を作り出すことが出来たのだ。
キーン、コーン、カーン、コーン
もう三時間目か、時間が経つのは早いなって、さっきから全然成長してないな、俺。
「はい、では皆さんこんにちは。今日も一緒に風魔法を学んでいきましょう」
物静かって感じの人だな。
「風魔法の利点は、多様に渡る使用法、つまりは色々なことに使えるという点です。例えば炎魔法をメインに使う場合は風魔法での補助がほぼ必須ですし、水魔法の場合もあると便利ですよ」
まあ、そうだろうな。気体を自由自在に操れるということは物体への干渉を容易に行えるということだからな。炎魔法では物体は運べないし、水魔法だと濡れるし。
これだけの便利魔法、覚えるしかないと思うだろうが、多分まだ俺には不可能だ。
もちろん俺は大気が大体、窒素が78%、酸素が21%、アルゴンが1%で出来ていることくらいは知っている。
だが、それで出来るのは風魔法じゃない。空気魔法だ。すなわち、空気を生み出すことしか出来ないのだ。
では風魔法に必要な物理知識とは何なのか?それは流体力学だ。習っているはずがない。
では必要な方程式とは何だろうか?流体における運動を記述するナビエ-ストークス方程式だ。もちろん習っているはずがない。
うん。不可能だ。そもそも気体を自由自在に操っているっていう時点でめちゃくちゃヤバいことをしているのだと自覚してほしい。
だから、大雑把には出来るかもしれないが、緻密なコントロールは無理だろうな。
ていうか、皆はどうやってるんだ?まさか流体力学を極めたわけでもないだろうに。
「風というのは非常に複雑な現象です。なので知識よりもまずとにかく風に触れることが重要です。それも、様々な種類の風に接することで、より効率的に、より質の良い風魔法を作り出せるようになります。苦手な子も多いでしょうが、一緒に頑張りましょう」
ああ、やっぱり魔法的側面からのアプローチが必須なのか......。
「おい、バート。まだ出来ないのか?」
「うるさいなあ、ホラ見てみろ。風吹いてるだろ?」
「真っ直ぐな風だけじゃないか、しかもそれも荒いし」
俺以外の全員は小さい渦程度なら出来るようになっていた。俺はというと真っ直ぐに吹く風だけだ。これは気圧差によって生じる風を模倣しているものだ。
風について習ったことなんて気圧差でのことしかないからな、物理的側面からはここら辺が俺には限界なのだ。




