電気魔法の進化
あれから、途中までネンに助けてもらいながら学校へ戻ると、残り八人も地面に倒されていた。怪我を負っているとかではないようだが、圧倒的な実力差に立ち上がることが出来なかったのだろう。
クオンから、腕をバキバキにしたことへの形ばかりの謝罪を受け俺たちは寮へ行き、休息をとった。
このままではいけない。もっと強くならなければ。それに、クオンから重力魔法を受けたことで俺自身、コツを掴みかけているのだ。
翌朝。
「すみません、担任の先生。今日から三日間ほど欠席してもよろしいでしょうか」
「え?初日から?一体何があったんだ?」
「実は、昨日腕が修復不可能寸前まで壊されてしまいまして、三日間ほど欠席したいのです」
「三日もか?構わないが、授業についてこれなくなるかもしれないぞ」
「それは大丈夫ですので、構いません」
「ははは、いや自信があるのは良いことだが、中学校になったら進度も上がるし、科目も多様になるからね。小学校とは違うんだよ?」
「では、何か問題を出してみて下さい」
「それじゃあ問題、水魔法の応用魔法を二つ挙げてみなさい」
まだ習ってない問題出してきたな。水魔法か、応用魔法なんぞ知らんが基本魔法が液体の水を放出する魔法なんだから、相転移させれば応用になるだろうな。
「氷魔法と水蒸気魔法です」
「はっはっは。氷魔法は正解だが、水蒸気魔法ではないな。答えは霧魔法だ」
ええ?霧って、水じゃん。大きさ変えただけじゃないか。それが応用?っていうか水蒸気魔法じゃないのか?
「水蒸気は水が霧になるときに発生する空気のことだろう?風魔法さ。水を熱してみれば分かる。水が水蒸気に運ばれて上で白く霧になっているのが見えるだろう」
うーん、水蒸気が水だと知らないとは......。この教師がアホなのか、この世界の科学レベルが低いのか。
「じゃあちょっと見てて下さいよ」
「ん?何をだい」
水魔法はあまり得意じゃないんだけどな。手に集まった魔力を水へ変換させる。
「まずはこれを氷にします」
熱を奪う、というより具体的に、分子の運動を抑えるイメージで、水を氷に変える。
「ほお!もうそんなにスピーディーに変化させられるのか」
「そしてこれをもう一度水に変えて、ここからが本番です。よく見てて下さい、これを水蒸気に変えます」
やはり、分子の運動を促すイメージで、水を水蒸気へと変化させる。
「なっ?水が消えたぞ!消失魔法も使えるのか!」
「いえ、違います。気体になったんです」
「水が気体?」
「触って見て下さい、分かるはずです」
先生がおずおずと手を伸ばすと、手にいくつか液体に戻った水滴が付着した。
「ほ、ほんとだ。手に水がついたぞ」
「そうです。気体になった水が手に触れたことで液体に戻ったのです」
「そんな!高校を出ている私でさえ知らなかったぞ」
「じゃあ、大学でやるのでは?」
「そうだろうか......」
「そうですよ、多分。それで、俺は三日間休んでもいいですよね?」
「ああ、いいだろう許可しよう。......そうだよなあ、Aクラスだもんな」
やったぞ!これで集中して三日間電気魔法の訓練が出来る!
さて、学校の敷地の端にある木の下へやってきたぞ。早速訓練を始めよう。
訓練に使うため持ってきた剣を構える。よし、訓練開始!
「うおおおおおおお!」
持ってきた剣に足を激しく擦り付ける。もちろん刃は丸くしてあるし、剣の平らな部分に擦り付けている。ようは金属であれば何でもよかったのだ。
開始から一分経った、もういいだろう。足を剣から静かに放す。やはり、静電気を感じる手応えが前と全く違う。
少しだけだが電子を、電荷を感じ取れるようになった。これは大きな進歩だ。今まではどれだけ頑張っても静電気だなあ、止まりだったのだ。
それが、クオンとの戦いで死ぬ間際にミクロの世界を肌で感じたことで電子レベルまで感じ取れるようになったのだ。
だが、まだまだだな。電子を感じ取れたはいいが、魔法で生み出し、操ることはまだ出来ないようだ。電子のイメージを高めるためにもっと体感しなくてはいけない。
やっぱりなあ、電磁気力ならマクスウェル方程式の四式を、完全理解とまではいかなくてもある程度知っとくべきだったな。高校レベルの知識しかない。もっと知識があるのとないのとでは成長度合いは雲泥の差だろう。
それでも、大事な法則は学んであるので不可能なレベルではないが。はぁ、高校生の知識では歯痒いことが多すぎるな。
訓練すること三日後、俺の魔法は進化した。




