クオンの実験
二部制
クオンは真魔法の強化のため、人間を部屋に入れ様々な実験をしていた。ネンが心を読んだ人間もその一人だ。
「おい、俺をどこに連れて行く気だ」
「うるさい、殺人犯め。黙ってついてくればいいんだよ」
「ちっ、何だってんだ」
そして彼は、小学校の地下深くにあるクオンの部屋へ入れられた。
クオンは部屋の奥にある椅子に腰掛け、扉の前に座らせられている男を見下ろしている。
「おおー、それが今回の実験体かい⁉︎」
「はい。一年前殺人の罪で捕らえられた男です。健康状態が良好でしたので、ここへ連れて来ました」
「ありがとうありがとう!じゃあもう戻っていいよ、いやあ楽しみだねー」
「おい、何だこのクソガキは」
メキッベキッバキッ
「うわああああ!あっ足が、足が勝手に潰れてっ」
「ったく。口の利き方がなってないぞー。今度は足だけじゃ済まないからなー」
男の足はひしゃげて潰れてしまっていた。それもただ押し潰されたわけでは無いような、異形な形に変形していた。
「あ、あの野郎、何もしてないのに!」
「そうだよー。俺は何も動かずに君の足を潰すことなんて簡単なことなのさー」
「な、化物か!!!」
「まー、そうだねー、化物かもね。ってそんなことはどうでもいいのさ!実は君にやってもらいたいことがあるんだ」
「なに?やってもらいたいことだ?」
「そう。実は僕に向かって君の全力の魔法を撃って欲しいんだ」
「はっ。全力の魔法だあ?お前が強いのか何だか知らないがな。俺も昔はロト学でトップ10に入ったこともある実力者なんだ。お前ごとこの部屋なんかぶっ壊れちまうよ」
「いいから、やれって」
クオンは、男にはめられていた魔封の鎖を解いて、立ち上がった。
瞬間、男の手に全魔力が集中し、全てが高密度の空気へと変換された。渦を巻き、怒り狂ったように脈動している。
「そうかよ、なら食らいな、嵐風!」
男が叫ぶと同時に、手から巨大な嵐が、クオンに向かって吹き荒れた。
それなりに強い魔法士でさえ受けきれずに一瞬で死んでしまうだろう。そのくらいに強い威力を持った魔法なのだ。
「へー。凄いねー、今までで一番強いんじゃないかな?」
「ふん、後悔しても遅いぜ?くたばりな!」
嵐はクオンに直撃し、姿は見えなくなってしまった。男は勝ちを確信した。ざまあみろ。これが終わったら俺は殺されるかもしれん。だが、道連れにはしてやったぜ、と。
しかし、次の瞬間。何事もなかったかのように嵐は消え、中からは殆ど無傷のクオンが出て来たのだ。
「いやー。やっぱり強いねー、切り傷が至る所にできちゃったよ。まだまだ修行が足りないねー」
「そ、そんなバカな。俺の、俺の最高の魔法だぞ!死にはしなくても重傷くらいは負うはずだ!そんな無傷なわけがない!それに!魔法を使った形跡もなかったぞ!」
「だから、切り傷ができたって言ってるだろ?誇っていいよ、今までに傷をつけられたのは君だけだからさ」
「本物の化物だったか......。ぐおっ!」
「今度は俺の番だね」
「手が、勝手に、どうなってやがんだ!」
「とりあえず跪いてもらおうかー」
男の手と潰れた足は意に反して勝手に動き出し、クオンへ跪く形となった。
「ははっ、何度やっても面白いなー。これ」
「うぐっ、うぐぐ。この俺がこんな奴にっ......。だがなあ、少しツメがあまかったな」
男は風魔法で自らの手足を切り落とし、扉へ向かい、そのまま飛び出した。
「へ、へへっ。やった、やったぞ!魔力は残りっかすしかなかったが何とか逃げられたぞ」
風魔法と、短くなってしまった手足を使い、階段を駆け上がっていく。
あと少しで、地上だ。逃げ切れる!
「あーもう、勝手に部屋から飛び出すなよなー。怒られちゃうじゃないか」
男の背後にはいつのまにかクオンが立っており、男は動けなくなってしまっていた。
「......」
「さっ、部屋へ戻ろうか。まだまだやりたいことは沢山あるんだ」
「......」
連れ戻された男は二度と部屋から出てくることはなかった。彼がどうなったかを知る者は、クオンただ一人のみだ。




