クオンの情報
二部制
「えーっと、それでクオンについての情報なんだけど」
「おう、どこまで分かった?」
「説明すると長くなるんだけどね......」
クオンは小学校にいた時いつも誰にも近づかれないように学校の地下深くの部屋にいたんだ。だから僕のテレパシーの範囲外になっちゃって心を読むことが出来なかったんだよ。
そんなある日、一人の人間がクオンの部屋に連れられて行ったんだ。何のためにかは分からないけど、人間がクオンの部屋に連れていかれることはよくあるんだ。
それで入ってから三十分ほど経った頃かな。さっき入っていった人間が地上付近まで出て来たんだ。今まで入っていった人間で出て来たのは一人もいなかったから驚いたよ。
それだけ近づいてさえくれれば、心を読むことが出来るからね。
(あんのクソ野郎!俺を、俺を跪かせやがってぇぇ!許さねえ!ブチ殺してやる!)
何があったんだろうって思ってるとクオンもそこまでやってきたんだ。
(弱いなー、みじめだなー)
(ううぐぐぐ、か、からだが、勝手に......ちくしょう、ちくしょうちくしょうちくしょう!)
(あー、そろそろ部屋に戻らないと怒られそうだなー。面倒くさいけど戻ろうかな)
(ひぃっ。う、嘘だろ。また戻るのか、もう、もういやだやめろやめろやめて)
この心の声を最後にまた部屋に戻っていっちゃったんだ。それから、部屋から彼が出てくることはなかったよ。
「どうかな?何か分かった?」
「そうだな、絶対やばい奴だってことは分かった」
「えー。そんなの分かりきってたことじゃん!Sクラスの一番だよ?」
「そうなんだけどさ、改めて実際に聞くと現実感が増して増して」
「ふーん」
「考えられるなら......身体操作系の魔法かな?まあとりあえず、跪かせられた、ってセリフからするに何らかの力で強制的に体を動かさせる魔法なのはほとんど確実だろうな」
「うん、そうだよね。でもどうやって?」
「そこだよなあ。電気魔法でも体は操れるけど、多分違うだろうし」
「え?出来るの?」
「出来るよ、やってみる?」
「いや、いい......」
そして俺たちは対策を練っていたが、これといった進展もなく、途中雑談も挟みながら時間が過ぎていった。
「うーん。このまま考えていても埒があかないな。もう少しで入学式始まるし、また今度考えようか」
「ちぇっ。しょうがないか、じゃあまた今度ね。それまでに何か考えておいてね!絶対だからね!」
「まあそう期待しないで待っていてくれ。あ、そうだ。ネン、俺が今何食べたいか分かるか?」
「バカにしてるの?魚でしょ?」
「おー、正解正解。やっぱ凄いよなあ、テレパシーって。羨ましいよ」
「へへへ、そんないい事ばかりでもないけどねー」
バイバイ!そう言ってネンは去っていった。もう歩けるまでには治ってきたから俺は自力で入学式に出られるだろう。
さて......。もういいかな、偽装電気解除。
頭に流れていた電気を止め、通常に戻す。
「やっぱりテレパシーは脳波を読み取っていたんだな」
あいつ、ネンは自身の魔力を俺の頭部に被せ脳波を読み取っていたのだ。
最初に会った時は不覚だった。自分の魔力感知に慢心していた事が災いしてあいつが微小の太さで伸ばしていた魔力に気づくことが出来なかったのだ。それぐらい、ネンは魔力のコントロールに長けているのだ。
「自覚があってやっているのか、そうじゃないのかが分からないのが辛いな。くそ、何故あの時気付かなかったんだ」
成長した今の俺はネンの魔力に気づくことが出来た。そしてまさかと思って試しに頭部に電気を流して偽の脳波を送ってみた。
そして、成功した。俺は今猛烈に肉が食いたいのだ。それにも関わらず、魚が食べたいとネンに思わせることに成功したのだ。
難しい言葉や文までは出来ないとは思うが、抽象的な一つの単語くらいなら脳波に出来るみたいだな。
あとはこちらの思考をテレパシーで読まれないようにならなければいけない。全てをネンに明かすのは危険すぎる。
だが、少し安心した。やはり真魔法と言えども、魔法は超能力じゃない。何か原理がある、現実に起こりうるものなのだろう。
ただ、恐ろしいのは「理論上は可能」をいとも簡単に出来てしまうところだな。
そう考えると、クオンの魔法にもあらかた見当がついたかもしれない。この線でもう少し考えてみようか。




