到着
広場のパフォーマンスから五時間後、俺は中学校へ一番に着くことが出来た。体は、正門をくぐった瞬間に前から倒れこむほどには満身創痍な状態になってしまったが。
ん?風魔法を使って誰か飛んできたな。この魔力は......ネンの奴だろうな。
「あれ、バート君もう来たの?早いねー。ところで体大丈夫?」
「ああ、大丈夫だよ、ってお前テレパシーあるんだから分かるだろ」
「僕が自分の魔法を信じられないのは生まれて初めてかもしれないね。だって君大丈夫そうにはとても見えないよ?」
「確かに少しはボロボロだけどな」
ところどころ骨が折れたり筋肉が千切れてしまっているが命に別状はないので特に問題はない。側から見て酷い状態なのは否定できないけど。
しかし肺が一部潰れてしまっているのは痛いな。魔力の供給量が少なくなってしまった。筋肉なら大抵電気魔法でどうとでも動かせるんだが、肺はどうしようもないからな。
そうだなあ、動けるようになるまでは一時間くらいは自然治癒の時間が必要だろうな。
「ていうかネンはどうやって来たんだよ。早すぎないか?」
「まあまあ。そんな事は気にしないでよ」
気にするだろ。
そんな事を考えていると初老(前世の感覚で)の男性がこちらへ歩いて来た。
「これはこれは、今年は元気な入学生がいたものですねえ」
学校の人だろうか。とりあえず挨拶しとこう。......うつ伏せのままでいいや。
「こんにちは。今年入学するバートというものです。こんな格好で申し訳ありませんが、これからよろしくお願いします」
「ああ、君がバート君ですか。Aクラスで、しかも一番だったそうですね」
「はい。でももう三年前のテストの結果ですから。慢心せずに今回も一位を取ろうと思います」
「その必要はないです。君はまた一番ですから」
「えっ?何故ですか」
「実はこの学校に着くまでの時間順で上位十人の番号は決めることになっているのです」
「そうなんですか?ですがテストは入学式の次の日だと聞きましたが」
「ええ。それ以外の方は明日、他のテストを受けていただき順番を決めてもらいます」
何故わざわざそんな事をする必要があるんだろうか?普通にテストを受ければいいだけの話に思えるが。
「なんだか納得がいっていない様子ですね。理由は簡単です。トップ層に行くためにはテストで測れるような素質だけではダメだという事なんです」
「というと?」
「簡潔に言えば、先着十番に入れない、もしくは入ろうとしないような者は上位十番の中に入る資格が無い。ということです」
うーん、なんとなく納得できないが、そうなのかもしれないとも思ってしまうな。
「では私は用事があるのでこのくらいで。また後ほどお会いしましょう、それでは」
そう言うと、学校の中へ走っていってしまった。......ああ、そうだ。この学校では走るのが普通だった。まだ前世の感覚が抜けきっていないんだな。
さて、これからどうしようかな。とりあえずは休もう。どこか休める場所はあるかな。
「それなら保健室へ行こうよ。多分使わせてくれると思うよ?」
そんな大した怪我でもないし、いいよ。
「いやいや、いいから行ってみるだけ行ってみようよ。二人だけで話もしたいしさ」
ああ、何か情報が手に入ったのか。
「まあそうなんだけどさ、君はそれしか頭に無いの?もっとこう、久々に会ったんだから話に花を咲かせようとかは思わないの?」
思わない。
なら保健室だとまずくないか?人がいるだろうし。
「そう......。まあ君が大丈夫っていうなら保健室は止めとこうか。じゃあとりあえず移動しながら話そう」
そうだな。悪いが今動けないから運んでくれると助かる。
「良いよ、というか元よりそのつもりだったけど。運風」
うお!体が勝手に浮き上がったぞ。風を起こして持ち上げてくれたのか。
「さあ、これで運びやすくなったよ!行こう!」
今の俺はいわゆるホバー状態だ。これなら運ぶ力はほぼ要らないからな。格好はダサいが文句は言ってられない。
「なあ、ネンって自力でここまでやって来たのか?」
「いや、違うよ。方法は教えられないけどね!」
「そうか。じゃあもし自力で来ようとしたらどのくらいの時間で来られたんだ?」
「そうだねー、空は飛んじゃいけなかったんだよね。なら四時間くらいかな?」
早すぎだろ、化物か?
「へー。化物なんて酷いなあ。そんな事言っちゃっていいのかな?」
ん?何をする気だ、ってうおおおい!まわるまわるまわる目が回る!
「あははは!クルクル回すと楽しいなあ!」
おいバカ、回転させんな!ちょ、速度上げないで!許してください!お願いします!
「あははは!そろそろ止めてあげよう、ああ面白かった!」
うぅ、やっと止まった。ああ、まだグラグラするよ。今度から三半規管も鍛えておこうかな......。




