パフォーマンス
俺は今、生徒を抱えている五名の先生方と一緒に街中を走り抜けている最中だ。だいぶ国の中心部に近づいて来たので沿道の観客の数もちらほらと増えてきている。
「我々に付いて来られるとは......。バート君やるなあ」
「走りこみはいつもやっていたんです」
「そんなこと言ったってもう五時間は走りっぱなしだぞ」
「流石に毎日は二時間程度しか走ってないですけど、一週間に一度くらいは六時間ほど走ってたので」
「素晴らしい。君は体力をつける大切さがよく分かっているようだ。本当、皆にも見習ってほしいものだ」
レイドとテイル含めAクラスで俺たちに付いてこれたものは一人としていなかった。
開始から一時間くらいの間のみだろうか、俺たちの前を二人が走ってたのは。その後急激にペースを落とし、見えなくなってしまった。
そしてなんと驚いたことに開始四時間が経った頃には先に行った全員を抜かしてしまった。どうなってるんだ。
日頃ちゃんと走ってないからこうなるんだ。あの二人は体力もなかったし、ペース配分も最初から全力。これでは勝負以前の問題だ。
とはいえ、ここからは俺もどうなるか分からない。もう少しで国の中央部へたどり着く事を考えると、あと五時間は少なくとも走らなければならないからな。
トレーニングの時は体に負担がかからないよう調節していたが今回は少し無理をしてみよう。そうすれば多分最後まで行けるはずだ。
「どうだ?まだまだいけそうか?そろそろ休憩するか?」
「いえ!多分最後まで走り切れるかと」
「そ、そうか。では我々教師も走り続けるしかないか......」
「それにまだやりたいことがあるんですよ」
「やりたいこと?」
「もう少しで広場ですよね。そこで走りながらちょっとしたパフォーマンスをやろうかなって。やってもいいですよね?」
「それは構わないが。安全には気を付けてくれよ」
「はい。ありがとうございます」
「しかし何故そんな事を?」
「さっき歓声が上がってたのって中学生と高校生たちじゃないですか。先輩たちには負けてられないなと思って」
「別にショーをやってるわけでもあるまい。そう気にすることか?」
「でも盛り上がってるのは事実ですし。走ってるだけじゃ能がないでしょう?なので、ちょっと先行ってますね」
少しスピードを上げ一人で広場へ向かう。さて、そろそろだ。皆盛り上がってくれると良いんだけどなあ。
広場には大勢の人が集まり、空を飛び移動する生徒の様子を眺め、盛り上がりを見せていた。至る所で歓声が上がり、拍手が止まず鳴り響いている。
そして、最後の一人が飛び去っていくと、一旦落ち着きを取り戻した。
ある者は踊り始め、ある者は木陰で休み、
またある二人のおっさんは酒を飲み飲み二人で会話を楽しんでいた。
「最後は小学生たちの移動だな」
「いやあ、確かに大勢で爆走してく様を見るのは迫力あるんだけどさ。さっきのを見た後だとなあ。まっ、酒が飲めれば何でもいいがな!あ、酒もう一本追加ね!」
「まあ確かに走るだけだからそうなんだけどさあ。てかよく飲むね。もう五本は空けたんじゃないの?」
「ばっかお前これが酒飲まねぇでやってられっかってんだ。 いよっ待ってましたあ!サンキューねえちゃん。......ッカーーーッ美味いねえ」
「ったく。酔っ払いめ。おっ、早速先発隊がやってきたみたいだぜ」
「つったってよお。どうせまたいつもみたくせんせーだけが先に来たんだろぉ?」
「いや、一人だ。小学生の男の子だけだぜ」
「そりゃまあ珍しいこともあるもんだ。とはいえ、言っちゃなんだがそれを見たって面白くもなんともないだろう」
「いや、おい耳をすましてみろなんか聞こえてこないか?」
「んー?そういやなんだかバチバチ聞こえてくるような」
その瞬間、二人の、いや広場にいる全員に衝撃が走った。
バートが凄まじい電気を放ち、雷光と共にとてつもない速さで広場に入ってきたのだ。
「よし、出だしは成功したな」
皆しっかり度肝を抜かした様子だ。突然雷のようなものが眼前に縦横無尽に飛び交っているのだ。驚かない方が無理だというものだ。
だが、これだけではつまらないだろう。もう少し驚く何かが無くてはな。
とりあえず繋ぎとして高速の側転バク転バク宙を織り交ぜ時間を稼ぐ。これしか思いつかなかったから仕方がない。完成度は高くないが電気が纏っていれば何でもかっこよくなるものだ。
よし、準備出来たぞ、いまだ!
上空に伸ばした魔力を通って電流が俺に向かって駆け流れる。電圧はおよそ一億ボルト。雷と殆ど同じ強さだ。
周りの人から見ればいきなり巨大な雷が目の前に落ちたと思ったことだろう。雷の激しい光と音を同時に感じるのは大抵の人が初めてなんじゃないだろうか。
それにしても電気耐性を高めておいて良かったな。自爆を防ぐためだったがこんな形で役に立つとは思わなかったな。
さて、立つ鳥跡を濁さず。さっさと広場を駆け抜けてしまおう。来た時と同じように電気を纏わせ、空へと放ちながら広場から出た。
人々はしばし茫然としていたが我にかえり、これが演出だと気づくと大興奮の様子で、広場は拍手喝采で包まれた。
「ふうっ、上手くいってよかったなあ。白けたらどうしようかと思ったよ」
その代わり魔力はがっつり減ったけど。まあ何とか休憩無しで行けるだろう。
休憩してもいいんだが、一回限界に挑戦してみたいってのがあるからな。このままゴールまで走りきってやる。




