卒業
さて、ネンとの密約を交わした後も何事もなく時は過ぎ去り、いよいよ今日卒業式の日を迎えた。
今は校長の話を聞いている最中である。
ただ、卒業と言ったって大抵の生徒はこのまま中学校に進学するわけだし、上位クラスはほとんど変動がないらしいのでそこまで悲しくはない。
というかそんな暇はない。卒業式が終わったと同時に、今度は東のはずれにある中学校へ大急ぎで移動し、入学式に出なければいけないのだ。
時速六十キロで走るとして、半日くらいか。前世の五十メートル走の二倍くらいの速さだ。まあ途中休憩を挟むともう少しかかるかもしれない。
そしてこれは毎年の恒例行事となっている。
朝っぱらからはた迷惑だと思うかもしれないが、この国の住人はこの行事すらお祭り騒ぎに変えてしまう。
街中を千人単位で走り抜ける様は圧巻の一言に尽き、見応えがあるので結構盛り上がるらしい。
ただし中学生、高校生が同じ人数でその上を超スピードで飛び去っていく様には負ける。そりゃ迫力あるわ。
何か負けるようで悔しいから盛り上がるような走っている最中の演出を考えようかな。
そんな事を考えている俺は、自分で言ってしまうが走るのは得意な方なのだ。前世で人体の構造を習っていたおかげでより効果的に魔力によるサポートが出来ているからだ。
そんなことを考えているうちに卒業式は終わってしまった。というのもこの学校、証書授与も校歌合唱も何もないのだ。あるのは校長の話だけである。
結局校長を見たのは入学式と卒業式の時だけだったな。
それはともかく、式が終わると同時に学年主任から指示が飛んできた。
「よし!皆ご苦労だった。ではこれより中学校へ移動する。各々素早く準備をするように!クラス順に移動するからクラス担任の指示に従うこと。以上!」
はーい、と言った所で準備も何もないけどな。この学校に来た時も身一つで来たわけだし。
あと、クラス順と言ったが例によってSクラスだけは別行動だ。そして、AクラスからではなくDクラスから移動を開始する。
何故か? 少し失礼な言い方になるかもしれないが、遅いのだ。Dクラスは。人数も多くて迷子になったりするやつもいるから早く移動させないと入学式に間に合わない。
そのため、暇なのでいつもの四人で喋ることにした。
「いやー、ついに俺たちも卒業か!早いもんだな!」
「って言ってもそんな変わるわけでもないけどねー!」
「クラスとか番号もこのままなんだっけか?」
「いいえ、明日テストを行うらしいわ」
「そうか。でも一番の席は誰にも譲るつもりはないな」
「いいや、次こそは俺が一番になってやるぜ!」
「レイドはその前に私達よりも上に行けるのー?」
「そうよ、それに。他の人が来るかもしれないわ」
「くっ、そう言われると辛い。だが、俺は負けん。負けんぞ!」
やっぱり和気あいあいとしていてこの三人といるのは心地がいいな。ただ、この三人に負ける気はしないが。
他のクラスはどうなんだろうな。様子を窺い知る機会がなかったので実際どれくらいのレベルなのか見当もつかない。
「よし、次はAクラス!並べ、行くぞ!」
号令がかかり皆テキパキと並ぶ。
「なあなあ、俺たちで競争しないか?」
「競争?」
「ああ。先に中学校に着いた奴が勝ち!どうだ、面白そうだろ」
「いいね!やろうやろう!」
「私はパス。先生に送ってもらうことになってるから」
「そうか、なら仕方ないか。じゃあバートは?やるよな?」
「ああ、いいよ。やろう」
「よし決まりだ。絶対勝つ!」
「いや、私が勝つ!」
さて、一番前に陣取り、出発の合図を待つ。横には走るのが苦手な生徒を送る先生達も並んでいる。
そろそろか、走り出す準備を整え終わる。
「よし!Aクラス!出発!」
合図と同時に俺たちは一斉に走り出した。




