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私、桜小町はアンドロイドです。  作者: 山本 宙
1章~普遍的共存の中に私たちがいる~
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5話『アンドロイドを持つ目的は自由なのです。』

 ガラス張りの建物は高くそびえたつ。

その建物は大学のキャンパスに建立していた。

そこで授業を受けるのが日課となっている鈴音大地は

正門の前を歩いていた。


(爺さんの家から通うようになってからだいぶ近くなったな・・・)


通勤時間をかなり短縮でき、余裕をもって大学に到着する。


早く着くようになってからは、

まだ誰も来ていない講義室でのんびりする。


誰もいないため横並びの椅子に寝転ぶ。

そしてポケットからスマートフォンを取りだした。


するとメッセージが一通届いていた。


【メール着信 A-桜小町】


「あっ、何だろう」

独り言を言ってメールを開く。


【おはようございます。無事に大学に到着しましたか?今日の講義は重要科目となっております。単位を落とすわけにはいきません。しっかりと講義を受けましょう】


「余計なお世話だっつーの」


スマートフォンを机の上に投げ捨て目を閉じた。

早すぎたため、講義が始まるまで寝ようとしていた。


そこに一人講義室に入ってきた。


「お前、早すぎるだろ!まだ授業始まるまで30分はあるぞ!」


「うーん、その声は田邊岳人か。お前こそ早いよ・・・」


田邊が近づき、寝そべっている鈴音に杭をさす。


「早く大学に来ても、寝てたら意味ねーから!」


「寝る子は・・・育つ・・・」


鈴音が口癖を噛み締めるように言う。

あきれ顔の田邊は近くの席に座った。

目線を机に上に向けると先ほどのスマートフォンが置いてあった。


「鈴音・・・着信来ているぞ」


「げっ!!またかよ!」


「またかよ!って誰だよ」


起き上がってはスマートフォンを手に取る。

画面をタップしながら鈴音は言った。


「A-桜小町さん。家のお手伝いさんだよ」


「A-桜小町さん?お前アンドロイドと暮らしているのか!?」


大学生にとってアンドロイドは高価であり、保有しているだけでも羨ましく思える。

もちろん実家住まいなら、保有している家庭は少なくない。


「俺は実家を離れて一人暮らしだから、アンドロイドなんて置けないな」


アンドロイドがいない生活は、かえって物足りなさを感じるほど、世間はアンドロイドに依存している。


大学生の一人暮らしとなれば、アンドロイドを一体でも保有するのは困難だ。


「鈴音が羨ましいよ。今度そのアンドロイドに会わせてくれよ」


「言っておくけど、鬼の勉強講師だからね。全然自由にさせてくれないんだ。地獄だよ」


「講師の仕事をプログラミングされているのか。お前も大変だな。そりゃ寝たい気持ちもわかるわ・・・。で?着信は何だったんだ?」


「あ、そうそう。昼食の弁当の中身だよ。事細かにレシピが書かれていて、それにカロリーとかまで」


「すげーな。お前は健康な身体になるぞ」


そこまで尽くしてくれるロボットは本当にありがたい。安心して暮らしていける。そんな気がしてならない。


するとまた扉から一人、講義室に入ってきた。


「お二人さんは相変わらず早いなー」


低い声で話しかけてきたのは菅原純一郎。

ボンボンの家系でいつもお洒落な格好で大学に来る。

ともなるとアンドロイドをもつ人間だ。しかも2体・・・。


「今日はアンドロイドの送迎は無しか?講義室まで来てくれるんじゃないのか?」


「来ているよ。おーいA-権蔵。A-真子姫―。中に入ってもいいぞ」


すると忍者の格好とお姫様の格好をしたアンドロイドが中に入ってくる。


「うーん、どうもコスプレにしか見えないよな。どうしてこの服装を着させるんだよ」

「アンドロイドはこの服装に疑問を抱かないのか?」


鈴音、田辺の二人は二体のアンドロイドを見て首をかしげる。


その言葉にA-権蔵が喝破する。


「拙者は忍者のように陰で菅原殿を護衛するよう指示されておるのだ!」


「陰で護衛って・・・丸見えじゃねぇか」


苦笑いをするしかない。

何のためのアンドロイドなのかもよくわからない。


「それで?A-真子姫さんはどうして着物を着ているんだ?」


「着物は美しいからです。そして私は菅原殿の傍にいなさいと言われております」


菅原と一緒にいる意味は特にないのだろうか。


「さっきから菅原殿って何だよ・・・」


「俺はA-権蔵とA-真子姫を良き友として一緒に生活しているんだ。こうして服装も面白く着飾ってくれるのも嬉しいよ」


本当に優雅に語る菅原を見て、かえってウンザリしてしまう。

確かに一緒にいて楽しいと思えるが、アンドロイドは本来、何か目的をもって

購入するはずが、友達感覚で一緒にいるのもおかしな話だ。


それでいて服装も遊びを入れて着させるのだから

不思議でならない。忍者とお姫様と一緒にいて恥ずかしいと思わないのだろうか。


しかし、アンドロイドと一緒に講義を受けるのは大学で禁止されている。


「悪いな。近くで待っていてくれないか。後で遊ぼうじゃないか」


「菅原殿、また後で!」


「うむ。下がり給え」


すでに、このやり取りは菅原にとって遊びの一環だ。

本人からして楽しくて仕方がないのだろう。


はっきり言ってアンドロイドをどのように活用しようが、持ち主の自由だ。


良き友として接するのも全く問題ない。

色々な持ち主がいて当然なのかもしれない。


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