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私、桜小町はアンドロイドです。  作者: 山本 宙
3章~僕らの希望は+αにかかっている~
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30話『嵐の前は静かです。』

 地下に続く長い通路には上部に配管が何本も通っていた。東京の中心にこのような長い通路があるのかと関心を寄せてしまうほど長い通路だ。


その長い通路を歩いているのは、サファイア=ファミリアのメンバーだった。

そして先頭を歩いているのは右近博士だ。


「いよいよ、明日が9日だな。マリオネットがアンドロイドの販売店を襲うと言われている日か。皆は不安でいっぱいだろう」


右近博士は先頭を歩きながら、皆の緊張をほぐそうとする。


「鏑木撰から得た情報です。間違いありません」


「鏑木撰?」


菅原が初めて聞いた名前に引っかかった。


「鏑木撰はアンドロイド警察の幹部です。情報を提供してくれるサファイア=ファミリアの良き理解者ですよ」


「アンドロイド警察の幹部が協力してくれているのか・・・」


うつむきながら歩く菅原は何かおどおどした様子だった。

それもそのはず・・・今日はA-権蔵とA-真子姫のα型改造が施された。


2体のアンドロイドは改造を終えて、右近博士が使用する第2研究室で安静にしていた。


「A-権蔵とA-真子姫のα型改造は問題なかったのか?」


あまりにも心配で溢れる汗をハンカチで拭く。

早く自分のアンドロイドに会いたいと願う菅原は、

足早に右近博士の隣まで歩み寄って問いかける。


「安心してくれたまえ。改造は成功だ。頑張ったアンドロイドを励ましてあげると良い」


皆が歩みを止めると、目の前には鉄扉があった。


「この先にいる」


菅原が重たい鉄扉を両手で開く。

すると突然

「菅原殿―!!!」

「菅原殿―!!!」

2体のアンドロイドは

喜びの声を揃えて菅原に飛びかかった。


「異常はないな?」


「心配しないでください!私たちは元気ですよ!」


久しぶりの再会で、笑顔で抱き合う。

α-権蔵とα-真子姫は時間を要する改造だった。


「博士・・・どうして今回の改造では長い時間が掛かったのですか?」


「ちゃんと理由がある。それでは今回のα型改造の成果を見せてあげよう」


右近博士はそう言って、α-真子姫を研究室の真ん中に立たせた。


「α-真子姫ちゃん、それでは新たな力を皆に披露だ」


するとα-真子姫の背中から機械が飛び出す。その機械は長細く、地面に対して水平に伸びていた。

そしてα-真子姫が腰に手を添える。


「菅原殿、私の羽ばたきを見てください」


α-真子姫がそう言うと、甲高い機械音が研究室に鳴り響く。背中から左右に伸びた機械が青く光りだした。

するとα-真子姫がゆっくりと宙に浮きだした。


それを見て腰が抜ける菅原は、地面に背中から倒れこむ。


「ととと・・・と・・飛んでいる!!!」


「そうだ。空を飛ぶことができる。それにドローンアンドロイドよりも速さが5倍だ」


α-真子姫は研究室内を空中に浮かびながら大きく旋回した。


「どうですか?菅原殿。鳥のように速いでしょ」


「マジかよ・・・」


驚きもつかの間、α-権蔵が上機嫌で話し出す。


「菅原殿!私のα型改造も見てください!!忍法―!!」


α-権蔵の足が青く光りだす。


「次は何だ・・・?」


菅原が壁にもたれかかりながら青く光る足を見る。


「菅原殿!どうですか!?」


「どうですかって・・・足が青く光っているけど・・・」


「これが私のα改造ですぞ!」


辺りの空気が一変した。

皆が呆然と立ち尽くす。


「あれ?」


「何かするのかと・・・」

ただ青く光る足を見せられても、

どう反応したら良いのかわからない。


沈黙の中、右近博士が説明を始める。


「α-権蔵君は足が速くなる。それと蹴りをすると電撃が走るようになっているのだよ」


右近博士の説明によって菅原は納得した。


「よかったなα-権蔵。足を生かして戦えるじゃないか」


α-権蔵はその言葉を聞いて、嬉しそうに足踏みをした。


「世界一の俊足ですぞ!!これこそ忍者です!」


(わかりやすい奴だ・・・)


これでようやくサファイア=ファミリアの全アンドロイドα型改造を終えた。

これで、明日のマリオネットとの対戦に向けた準備が整った。


作戦は重々決まっており、

戦闘しながら、強奪されたアンドロイドの奪還をおこなう。

しかし問題なのはアンドロイド警察だ。


鏑木撰の情報からすれば、おそらくアンドロイド警察も販売店でマリオネットの一斉逮捕に踏み込むはずだ。


アンドロイド警察は武器を持っていない。

そのため、マリオネットの兵器に太刀打ちすることはできない。

しかし、サファイア=ファミリアのアンドロイドが武器を保有していることを知ると

取り押さえに来ることは間違いないだろう。


アンドロイド警察に逮捕されずにマリオネットを殲滅する。

巧妙な作戦を遂行していかなければならない。


はたしてサファイア=ファミリアは無事にアンドロイドを奪還することはできるのか。


今回の敵はマリオネットになるが、アンドロイド警察も味方とは言い難い。


「明日の戦いは一寸の油断も許されない。アンドロイド奪還作戦は、必ず皆が無事に帰ってくることを祈るよ」


右近博士は菅原の肩に手を添えてそう言った。


「皆、必ずここに帰ってくるんだ。サファイア=ファミリアに・・・」


菅原の言葉は皆の心に刻まれた。





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