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私、桜小町はアンドロイドです。  作者: 山本 宙
3章~僕らの希望は+αにかかっている~
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26話『α武器とサファイアの光』

 渋谷の街を黒のワンボックスカーが左右に揺らしながら暴走する。

人をよけ、信号機をよけ、逆走するほどの運転で極めて目立っていた。


「どんな運転をしているんだよ!」

「だってアンドロイド警察が追ってくるじゃないか!!」

「かえって目立っているぞ!!」


「ユミエ隊長!どこに向かえばよろしいですか!?」


C班が乗車する暴走車を、ユミエはビルの屋上を走りながら追っていった。

そして無線で行先を知らせる。


「次の交差点を右だ。信号無視をしてもかまわない。アンドロイド警察が追ってきている」


後部座席に乗る隊員は後ろを振り向き、アンドロイド警察が追ってきているのを確認した。


「このままではだめだ。捕まってしまう」

頭を抱えてうずくまってしまった。


(捕まってしまったら、マリオネットに戻ることができない!)


「ちくしょー!!右だ!皆つかまれー!!」


勢いよくワンボックスカーが右に振り切ると、前方からもアンドロイド警察が待ち構えていた。


「ユミエ隊長!!前方にアンドロイド警察が!!」


「すまない」



プツ!


無線が途切れる。

ユミエはC班のワンボックスカーを追うことをやめた。



「A班、B班、D班に告ぐ。C班は捕まった。皆はそのままアジトに向かってくれ」


「くそ!!!」

鮫沖が座席を力強く拳で叩いた。隣で運転する隊員が驚く。


「とても残念です・・・」


スクランブル交差点には被害者が横たわり、騒然となっていた。

そこにアンドロイド警察のA-岩男がいた。


「またマリオネットの仕業か。段々と犯行が激しくなってきたな。ここまできたら全面戦争になりかねない」

資料を片手に、現場の残骸を見て回る。


被害にあったアンドロイド、人間を目にすると

恐怖で震え上がっていた。


「許せぬ・・・。マリオネット・・・・」


A-岩男が人の気配を感じる。


「誰かビルの上にいる・・・」

ゆっくりと顔を上げてビルの屋上に目を移した。

ビルの光をよけながら、真っ暗な屋上に注視した。


すると、屋上にはユミエがスクランブル交差点を見下ろしていた。


「ユミエ・・・。お前はまだ懲りていないようだな」

A-岩男は独り言のように囁きながら、ユミエを睨みつけた。


「チッ!やはり私の存在を知っているのだな・・・」

はるか遠くにいる互いが目を合わせて言葉を発する。



どちらにもその言葉は聞こえていない・・・。

思いだけが口から漏らす瞬間だった。


ユミエはすぐさまスクランブル交差点から離れて、一人でアジトに向かって走り出す。

その瞬間を遠くにいながらも確認したA-岩男だが、追うことなくずっと睨み続けるのであった。ユミエが見えなくなっても、ビルの屋上をひたすらに・・・。



真っ暗な中、走って逃げていたのは、マリオネットだけではなく、サファイア=ファミリアの麗奈とα-ショコラも同じだった。


誰も周りにいなくなっても走り続けた。とにかく走って、博士の家までひたすら駆けていく。

すると麗奈が足を段差に引っ掛けて地面に倒れる。


「大丈夫ですか」

α-ショコラが手を差し伸べた。

α-ショコラの手を支えに、麗奈がゆっくりと立ち上がる。

倒れた時に、顔を地面に引きずってしまったせいか。麗奈の頬は黒く汚れてしまった。


α-ショコラがハンカチを取り出した。


「顔を拭いてください」

受け取ったハンカチで頬を拭う。


「私は顔が汚れただけ・・・。あなたと、あそこにいた被害にあった人も、アンドロイドも皆傷だらけ・・・。私は何もしていないのよ」


「いいえ、麗奈はマリオネットと戦った。あの現場にいたことが戦った証ですよ」


α-ショコラの手に戻ってきたハンカチは黒く汚れていた。

そのハンカチをそっと甲冑の中に戻した。


「私は何もしていないの!!」

麗奈は何もできなかったと思い、悔しがる。当然、あのスクランブル交差点では

武器を持っていない麗奈は、ただα-ショコラを見守ることしかできなかった。それに足が震え、動くことすらできなかった。


「いつもそばにいてくれる麗奈に感謝しています。一緒にそばにいてくれている。それだけでいいのです。私をいつも家族のように大切に思ってくれている。それだけでいいのです。それにアンドロイドを5体も救うことができた。それは私と麗奈がサファイア=ファミリアで共に戦った成果です。自信を持ってください」


「ありがとう」


麗奈とα-ショコラはまた走り出して博士の家に向かうのであった。


どれくらい走っただろう。

息を切らしながらも、ようやく博士の家に到着する。


扉を開けると博士が迎えた。


「無事だったかい?α-ショコラからメール着信があって心配していたのだよ。さぁ、中に入って」


中には菅原がいた。

「無事だったか。よかった・・・。マリオネットからアンドロイドを解放できたか?」


「えぇ、5体よ。α型改造の成果はあったわ。操られたアンドロイドはα-ショコラの大剣で戦闘不能にして、そのままスパイプラグを制御したの。私たちの希望が見えてきたわ」


その言葉を聞いて、菅原と右近博士の表情が和らいだ。


息が上がっていながらも必死で成果を話す麗奈の姿は勇士のようだ。


「よし!!勝負はこれからだ!反転攻勢!!」

喜びの言葉は次なる決意をあらわしていた。


α-ショコラの手の甲が青く光る。その光は薄暗い部屋を青く照らす。

「キレイ・・・。この手の甲の光って、何というのかしら?」

麗奈が息を整えてから、博士に聞く。



「サファイア=ファミリアのアンドロイドは特別だ。それらの、手の甲の光はサファイアと言うのだよ」

幻想的なその光は、儚く、尊くもずっと3人を照らし続けた。

「サファイアが5体のアンドロイドに触れて、スパイプラグから救ったのね・・・」

麗奈が微笑みながらサファイアを眺るのであった。


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