24話『アルファー型の改造を施します。』
A-桜小町とA-ショコラが博士と一緒に研究室の中に入る。
鈴音は研究室に入る背中を見守る。そして扉が閉まった時、時計に目を移した。
「午後6時か。何時間かかるだろう」
アルファー型の改造が終わるまで、別室でずっと待ち続けることにした鈴音は、ソファーに腰掛けて下を向いた。足が小刻みに動く。貧乏ゆすりが止まらない。
その鈴音の姿を見て、麗奈が口出す。
「もう、貧乏ゆすり?格好悪いからやめてよね」
何も答えず、下を向いたままだ。
「もう、無視!?なんで何も言わないのよ!!」
麗奈は話しかけるが全く反応せず、ずっと貧乏ゆすりがとまらない。
ため息をついて鈴音の側に座った。
「さっきはごめんなさい」
重く開いた口からは、わびる言葉がでてきた。
「あんたのアンドロイド、しっかりしているわ。ビンタも痛くなかった。優しいアンドロイドね・・・」
「さ・・桜・・・」
「何?」
「彼女の名前はA-桜小町だ。仲良くしてあげてくれ」
鈴音は顔を上げて麗奈を見た。
麗奈から見たその顔は、大人びた慈しみ溢れる顔をしていた。
「うん、仲良くするわ。その代わりにあんたもA-ショコラと仲良くしてよね」
「うん」
二人は唇だけを上げて笑みを浮かべた。
誰も家に帰ることなく、時計の針が1周2周しても、部屋を出ていくことは無かった。
日が昇り、外は朝になっていた。
するとA-ジョッシュだけが研究室から出てきた。
「皆さん、博士の仕事はとても速いです。しかし、後半日は時間を要します。皆さんも疲れが溜まっているでしょう。帰っても良いのですよ?」
誰も立ち上がろうとしなかった。
「僕たちは大丈夫だ。待っているよ」
麗奈は疲れ果てて、ソファーに横になって眠っていた。
「鈴音君と菅原君は一睡もしていないのですか?」
「心配はいらない。博士も寝ていないだろう」
二人は目を赤くしながらも、寝ようとせず、アンドロイドを待つ。
「冷蔵庫に食べ物があります。お腹は膨らませてくださいね」
そう言ってA-ジョッシュは研究室に戻った。
コクコクと時間が過ぎていく・・・。
そして半日以上が立ち、ようやく研究室の扉が開く。
すると、A-桜小町とA-ショコラがゆっくりと足を揃えて歩き、研究室から出てきた。
改造前と見た目は何も変わらない。
「いやー、ようやく終わったよ。お待たせ」
博士の白衣は真っ黒になっていた。
「早速、説明をするよ。説明したら僕は休むからね」
得意げに話す博士は、腰がひん曲がって、身体が思うように動かせていない。
よっぽど身体を使ったのだろう。
「彼らは今から名称をα-桜小町とα-ショコラに変更だ。」
腕組みをして2体の名称を紹介する。
そしてα型の説明をしだした。
「まずは、α-桜小町ちゃん、右腕を見てくれ」
α-桜小町が洋服の裾をめくり、腕を出した。
左手で腕の上部を親指で押すと皮膚がめくりあがり、中からアルミ製の筒が出てきた。
「この筒からビームが出てくるようになっている。そのビームはアンドロイドの出力源を利用して、光を走らせる。ビームに当たった者は大きな電気ショックを受けることになるのだ」
菅原が目を輝かせる。
「かっこいいな・・・」
「そしてα-ショコラの説明だな。A-ショコラは元々、体が鉄製でね。改造が安易だったよ。それに大きな武器を取り付けても隠すことができた。そのため、α-ショコラの背中には大剣を忍ばせている」
すると、α-ショコラの鉄の背中が扉のように開く。開いた背中から、大剣を右手で取り出した。
「細くて長い剣だね・・・」
麗奈が見惚れていると、α-ショコラが大剣を振りかざす。
振りかざした大剣が青く光りだした。
「α-ショコラ君も同様に、大剣にはアンドロイドの出力源から強い粒子が流れ出てくるようになっている。これも相手に当たったら焦げるほどの影響を与えてしまう。十分気を付けて使用してくれたまえ」
これでようやくマリオネットに戦う武器がそろった。
「次こそは負けない!」
鈴音が震えながら立ち上がって、力強く歯を噛み締めた。
アルファー型の改造は無事に完了した。
次はもう一度マリオネットに接触して、少しでも相手の勢力を抑え込まなければならない。
「もう負けられないんだ」
弱り切った菅原の姿を、鈴音は悔しながら見て言った。
その言葉を聞いて博士はgoodサインをする。
そのまま、地面に倒れこんだ。
「大丈夫ですか!!博士!!!」
A-ジョッシュが博士の身体を両手で揺する。
反応が無い。
「博士!!」
すると博士の口元からいびきが聞こえてきた。
「ん?・・・。寝たのですね・・・」
A-ジョッシュが身体を抱きかかえて、ベッドまで持ち運ぶ。
「博士はもう疲れ果ててしまったようです。マリオネットとの接触は後日、試みましょう」
A-権蔵は空気を読めず、爆睡する右近博士に訴えた。
「私は忍者に合う最強の武器をよろしくお願いしますぞ!!」
「ん~、三日後ね」
眠りながらも博士は答えた。
「A-権蔵、やめろ。博士は疲れているんだよ」
菅原の表情がだんだんと落ち着いてきた。
A-真子姫の元気な姿を見て安心でならない。
菅原も鈴音と同様に、次は絶対に負けないと決意していた。




