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私、桜小町はアンドロイドです。  作者: 山本 宙
2章~正義の秘密結社サファイア=ファミリア~
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23話『家族のような存在です。』

 「それではA-真子姫ちゃんの復旧作業に入ろうか」


菅原が固唾を飲んで見守る。


「断線個所は2か所。そこを繋ぐだけの作業さ。オレンジブラッドは流れ出ていない。運よく銃弾が外れたと思われる。まぁ説明はさておき、できれば皆には席を外していただきたいな。部屋の外で待っていてくれないか」


博士のその言葉に肩の荷が落ちた。いや力が抜けてしまって、うなだれる様だった。

A-権蔵が菅原の肩を担いで、運ぼうとする。

足を引きずるように、菅原は部屋から出ていった。


「菅原君大丈夫かしら。意外とナイーブな子なのね」

心無い言葉をこぼす麗奈にため息をつく。


「麗奈、俺たち仲間だぞ。同情ということを知らないのかよ」


「あんたに説教されたくないわ。死亡フラグ野郎」


相変わらず言葉がきつく、強情な女だ。

麗奈と鈴音はきつく睨み合う。


それを止めるかのようにA-ショコラが間に入る。


「やめましょう。麗奈様。鈴音君」


「あんたは黙ってて!私、こいつが気に入らないのよ。いつもなよなよしていて、私にだけ一丁前に説教するんだから!」


「二人ともこんな時にやめてください。仲間を大事にして」

A-桜小町も間に入るように二人に忠告する。


「あんたも気に入らないのよ。本当、ただのロボットって感じで、一定のテンションが腹立たしい!少しは人間らしいところを見せたらどうなの」


次第に言葉がきつくなる麗奈に、急に張り手が飛んだ。


ビシッ!!


「何するのよ!!」

頬を真っ赤にしながら麗奈がA-桜小町を睨みつけた。


「これは菅原さんとA-真子姫に変わって叩きました」


「もう、喧嘩は止めなさい」


A-ショコラの言葉でようやく場が落ち着く。


誰も願っていない喧嘩。しかし、落ち着いた状態でいられないのは皆同じだった。

アンドロイドもどうしたらよいかわからなくなっていた。


心のよりどころが無い僕たちにとって、

支えあわなければならない者同士だ。


喧嘩なんて・・・仲間割れなんて・・・絶対に起ってはならない。



扉が開くと、右近博士が白衣の裾で顔の汗を拭きながら出てきた。


「お待たせ、菅原君」

そして右近博士の後ろから、A-真子姫が飛び出してきた。


「菅原殿―!!!!!」


「まこちゃん!!!!」


二人は力強く抱き合った。

菅原がまた涙を流す。


「よかった・・・。直って本当によかった!」


「私もですわ。菅原殿―!私は何時間活動停止していたのかしら?」


「そうだな・・5時間くらいかな」

菅原が涙ながらに話した。



「ふぅ、A-真子姫ちゃん、元気になってよかったわね」


さっきまで酷い口調で物申していた麗奈が、嘘のように優しくなっていた。


(なんだよ・・・今まで僕にめちゃくちゃ言ってきたくせに・・・)


鈴音が麗奈をあっけらかんと眺める。


「大ちゃん、本当は麗奈さんも優しいのよ。誰だってアンドロイドが動かなることを望んでいない。おそらく彼女は、復旧作業が施されている間、気が気でなかったのよ」


「うーん」


説得するかのようにA-桜小町が鈴音に話をした。

鈴音の両肩に後ろから手を添え、小さな声で、優しい声で囁く彼女。

そんなA-桜小町に鈴音は頬を赤くして下を向いた。


(A-桜小町はアンドロイド・・・A-桜小町はアンドロイド・・・)


照れてしまった自分に、相手はアンドロイドであると心で訴えて理性を保つ。


そして横目で麗奈を見ながら、

本当は優しい人だなんてことも

A-桜小町に言い聞かされたことをそのまま受け止める。

彼女の良いところを見つけ出そうと決めた。


たとえ麗奈が何と言おうと、同じサファイア=ファミリアの仲間だからと・・・。



「みんな、お待たせしました。心配かけてごめんなさい」


A-真子姫が皆にお辞儀をする。

上体を起こした後の彼女の顔は笑顔だった。


皆がその顔を見て一斉に微笑む。

本当に良かったと仲間をたたえた。


「おかえりなさい」

A-ショコラのその言葉に感化して

麗奈が言った。

「何だか本当に私たち家族みたいね」



そして気持ちを切り替えるように、右近博士が白衣の襟を正す。


「さぁ、続けてアルファー型の改造を実行しよう。時間が無い。順番におこなう」


右近博士はA-真子姫の復旧作業を終えて間もなく、

アルファー型改造をおこなうという。かなりの長丁場となりそうだ。


「大丈夫ですか?右近博士・・・」


右近博士の身体を心配するA-ジョッシュだが、いつも研究をする時、

身体を捨てる思いの右近博士を止めることができなかった。

心配の言葉を吐きつつ、

助手として隣でサポートをすることに専念する。


「そうだな、今回は2体のアンドロイドをアルファー改造する」


首の骨を鳴らしながら、右近博士は2体のアンドロイドを指名した。


「A-桜小町ちゃんと、A-ショコラくん、私の研究室に来てくれ」


指名されなかったA-権蔵が不満を訴える。


「拙者ではないのか!忍者だぞ!!強いんだぞ!!」


呆れた顔の右近博士。

「A-権蔵くん、君の忍者はコスプレだ。心配しないで。君もちゃんとアルファー型にするから。今回は保留だ」


「ムムムッ!!」

納得がいかないようだ。

しかし、菅原の顔が衰えている様子を見ると、

自分を制御した。


「菅原殿、すまぬが今回は保留ということだ」


「焦るなよ、自分の体を大事にしろ」


菅原の説得で静まるA-権蔵だった。


アルファー型の改造がこれから始まる・・・。


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