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私、桜小町はアンドロイドです。  作者: 山本 宙
2章~正義の秘密結社サファイア=ファミリア~
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20話『あらためましてサファイア=ファミリア』

 博士の家に集まってきた者たちは、博士を囲んで輪になっていた。

資料などが山積みで狭くなった研究室は、小奇麗にする余裕もないくらい研究に没頭していたことが伺える・・・。


「今日ここに集まってくれた者に、私は本当に感謝している。どうかアンドロイドの未来を担う君たちに申し上げたい・・・。どうか無事に、強奪されたアンドロイドを生還させてほしい」

博士は皆の目を見ながら、拳が力強く握られる。


ばらつきながらも、皆は頷く。


続けて博士は話す。

「人間とアンドロイドがパートナーとなって動いてほしい。そして、私とは連絡を常に取れるようにしてもらいたい。頼んだよ」


「りょーかい」

菅原は力が抜けるような返事をした。


「あと一つ、言いたいことがある。相手は拳銃を保有しているかもしれない。私はそんな情報を聞いた」


「あっ!」

(マリオネットに遭遇して自分が撃たれたこと話してねぇ・・・!)


「右近博士!!」

言葉を割って鈴音が口を開いた。


「実は僕・・・マリオネットに遭遇したんだ。アンドロイドを1体スパイプラグから断絶させて、自動運転で逃がすことができた!」


「何――――!?」

誰も聞いていなかった話・・・。


「そんな大事な話どうして言ってくれなかったんだよ!!」

連絡も不通になっていて、なおかつそのような出来事に遭遇していたなんて、話さないわけがない。それなのにどうして話さなかったのか疑問が浮かぶほどだ。


「うっかりじゃ済まされないぞ・・・」

呆れを通り越すほど、菅原はうんざりしていた。


「僕、アンドロイドを救出したのは良かったけれど・・・実はマリオネットの奴に一発銃弾を撃たれたんだ・・・」


「マジかよ・・・」


博士が入手した情報は、本当だった。そして鈴音が体感した事実を告げる。


その時、麗奈は鈴音の存在を大きく感じた。

最前線で、もうすでに戦っていたのかと関心を寄せたのだ。


「鈴音君・・・すごいじゃない。身体、大丈夫だったの?」


今まで馬鹿にされていたのが嘘のような心遣い。


「大丈夫だよ」


笑顔で即答した。



「今の話を聞いてもマリオネットに立ち向かえるか?命を惜しむことも許されないのだよ。そこまでの意志を持って戦えるか?」

博士はまくし立てた。



あらためて、思い馳せる。

これは遊びじゃない・・・。

本当の戦いだ・・・・。


アンドロイドを救うため、命を捨ててまで戦えるか・・・・。


ここの者たちはどれほどの気持ちで集まってきたのだろう。


(正直、帰る奴が出てきてもおかしくない。だれか身を引く者がいるだろう・・・)


鈴音は少し期待を低く見積もっていた。

博士も同じく、力強い意志を持っていなければ撤退するだろう、そう思っていた。



菅原、麗奈はアンドロイドの顔を見る。


何だか悲しそうな顔をしていた。

なぜだろうか・・・。


ここで帰ってしまえば、アンドロイド達に合わせる顔もない。

もう地球に住む約半数はアンドロイド。

そんなアンドロイド達を裏切るわけにはいかない。


「俺、やります」

「私もやるわ」


ギラギラした目は、博士の心を振動させる。




「皆、素晴らしい。それではマリオネットに知らしめてあげましょう。私たちサファイア=ファミリアの存在を」


博士はパソコンに向かう。

「僕の研究はひと段落だ。マリオネットの出所を調べて、皆に報告するよ。私が表に出ていけなくて申し訳ないね。健闘を祈る」


「それと・・・見返りは当然あるから安心しなさい」


その言葉を最後に解散した。


鈴音以外はいまだに実感がわいていない様子だった。

鈴音だけが知っている。マリオネットの恐ろしさを。



その頃、マリオネットの集団も会議をしていた。

真っ暗な屋内で一つの明かりが灯る。

何人いるかわからない。おそらく50人はいるだろうか・・・。

ほとんどが暗闇で、明かりに顔が照らされているのは鮫沖蔵之介だけだった。


その鮫沖が罵声を浴びせる。

「どういうことだ!?操り人形が制御できなくなるなんて!!本来の自動運転に切り替わって、逃げ出しただと!?そんなことがあるはずがない!!」


「ボスには報告したのか?」


一人の疑問がユミエに投げかけられた。


「えぇ、言ったわよ。とにかく、今のスパイプラグで私たちは操り人形を増やしていくしかないの。そして不思議な力を持ったアンドロイドがいるから、その物には操り人形を近づけないことね」


マリオネットも同様に相手の存在に気づきつつあった。

敵対するのはアンドロイド警察ではなく、その不思議な力を持ったアンドロイドなのだと警戒心を強められた。


「あらたな敵が増えたものの、アンドロイドの保有数は急速に伸びてきている。具体的な数字は守秘だが、この調子でアンドロイドを増やしていくわよ」


ユミエもマリオネットを統括する一人だった。

さらに操り人形に指示をおくれるマイクロチップをもった一人。


マリオネットの中でも特に恐ろしい存在に間違いない。

そんなユミエの頭をよぎるのは、鈴音という人間と、A-桜小町というアンドロイドの顔だ。


歯を食いしばるように怒りを押さえつける。

戦いはこれからだ・・・。




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