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私、桜小町はアンドロイドです。  作者: 山本 宙
2章~正義の秘密結社サファイア=ファミリア~
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19話『西洋の鎧はショコラのように錆びています。』

 菅原がいきなり高いテンションで肩を組んできた。


「お前ら二人どこに行っていたんだよ」

からかうように絡んでくるのに対して、申し分のない表情をする。


「ちょっと近くの階段で話していただけさ」


嘘偽りなく話した後に、菅原が小さな声で囁く。


「サファイア=ファミリアのことは・・・話していないだろうな・・」


いきなりの言葉に動揺した。

しかし、当然のことのように返答する。


「当り前だろう・・・。話していないよ」


「俺、あいつのことをまだ信用していない・・・。だから組織の事だけは内緒にしていてくれ」


疑いの目で、菅原は田邊を見ていた。


(菅原は勘が鋭いな・・・。何も知らないかもしれないけど・・・その通りで、あいつにサファイア=ファミリアのことを話したら・・・本当に命を狙われかねない・・・・)


「約束するよ・・・」



とても身近な存在だと思っていた仲が、これほどにも薄っぺらなものだったなんて。

誰も傷つけ合いたいなんて思わない。誰も失いたくない。

できれば、心を開きあいたいものだ・・・。


これほど邪悪な秘密を握りあっている僕たちは・・・

真実を語れない口になっていた。



それでも僕たちは今この時だけでも、幸せでいたいと・・・はげしく戯れあい、友達という仮面を装った。


それならば、と・・・今すぐ奥底の闇を開き、

そこに神々しい光を解き放ちたいと心から願う。


楽しい時間は刻々と過ぎていく。


時間を忘れるほど、今を楽しんでいた鈴音に一人の女性が話しかけてきた。


「私も混ぜてくれませんか??」


(誰だ・・・?)


金髪を長く伸ばして白い肌、外国人かと思えてしまうほど輪郭が角張っていた。


「初めまして、私の名前は香川麗奈よ。よろしくね、」


その女は1体のアンドロイドを率いていた。

そのアンドロイドは2メートルほどある大きな体で、

西洋の甲冑を身にまとっていた。その甲冑は年期が入っており、錆びが生じていた。


「初めまして、鈴音って言います・・・。大きいアンドロイドだね・・・」


すると得意げにアンドロイドの紹介をしだす。


「このアンドロイドはA-ショコラって言うの。錆びていて茶色いからショコラみたいだと思って!このアンドロイドはアンティークなお店で販売されていたアンドロイドなのだけど、内蔵部分は最新式よ。見た目が好きだから、自分で購入したのよ」


「確かに珍しいね・・・」


(おいおい、待てよ・・・。忍者に姫に西洋の戦士って、コスプレパーティーみたいだな・・・)


鈴音の周りに集まるアンドロイドは皆、特徴的で周囲に良く目立っていた。


「大ちゃん、いいじゃない。皆の個性が出ていて私は好きよ」


そう言ってフォローをするA-桜小町はいつも白い服を着ていて、一番まともな服装だった。


鈴音が病院にいた間に友達が増えていた。

賑やかでいいことだと思っていたが、思いもよらないことまで起こっていた。


「明日講義の課題もあるからそろそろ、お開きにしようぜ。次はどこかで食事会ができるといいね!」

そう菅原が仕切って、大学構内で皆は解散となった。



帰路の途中にメールを送りあう。


「今日はあらためて、右近博士の家に集合だな・・・」



サファイア=ファミリアが再び集まって計画を立てる。


気を取り直して、鈴音とA-桜小町は博士の家に向かっていった。


ピンポーン!


インターホンを押すとすぐにA-ジョッシュが扉を開けた。


「少し顔を観なかったですね。マリオネットに恐れてしまいましたか?」


「いいや、マリオネットと戦う気持ちは変わっていない」


その言葉は本心なのかは、自分でもわからなくなっている。

銃弾を受けて以降、あの情景がフラッシュバックして心臓の高鳴りが頻発している。


「どうぞ、お入りください」


鈴音が奥に進むと、金髪の女が座っていた。


「お前!!昼間に会った女!!」


そこに座っていたのは香川麗奈だった。

そしてA-ショコラも横に座り、伸び伸びとくつろいでいた。


「やっほー!女って何よ!私には麗奈って名前があるんだからね!」


「どうしてここにいるんだよ!?」


焦るように博士に訴えかける。

秘密の組織であるはずなのに、当たり前のように大学の知り合いが座っていることに、

怒りがわいてきた。


「鈴音君と同じ大学なの?だったら話が早いね。僕がスカウトしたのさ。どうしても人数とアンドロイドが足りなくてね・・・。知り合いだったらまだ信頼できるでしょう」


「知り合いって・・・今日初めて会ったんだよ!」


そう言って鈴音は菅原の顔を見た。

「菅原、どういうことだ?」


「彼女はアンドロイドヲタクだから信頼できるって博士に説得されたのさ」


(だから、あの場に麗奈が居合わせても菅原は何食わぬ顔をしていたのか・・・)


黙って聞いていた麗奈が偉そうに切り出す。

「あのねぇ、女だからって見くびらないでよね。あんたの方がとっても華奢で、死亡フラグ立っているんですけど!」

麗奈が鈴音に対し、指をさして声を張り上げた。



「死亡フラグって言うなよ・・・」


二人のやり取りを見て右近博士が呆れた顔になる。

「おやおや、仲が良いお二人ですね。鈴音君、彼女はただのアンドロイドヲタクではないんだよ。まぁ、関わっているうちにわかるよ」


できるだけ関わりたくないと願う。

しかし、怒りが収まるのも待ってはくれず、

いよいよサファイア=ファミリアの計画が練られる時が来た。


各々が思うアンドロイドの希望に向かって・・・。



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