14話『決断の時 section2』
突然に友人の菅原に誘われ、たどり着いたところが博士のいる研究室で、アンドロイドの未来が危ういという説明を聞かされる。
それによって鈴音に混乱が生じていた。
いきなり怖い話を聞かされたが、それを聞いて自分は何ができるのだ。
悪の組織、マリオネットの存在は誰もが知っている。
その組織がとてつもなく大きな存在になっていても、それに対して自分は何ができるのかと考えても答えが見つからない。
「マリオネットが危ない組織であることは間違いない。それが身近で活動しているのもニュースを見ていて分かるさ。今日、ここに来てどれくらい危ないか再確認できた」
「鈴音君、ありがとう。ただし、伝えたいことはそれだけではないんだよ」
(そうか・・・博士には相談があったんだ・・・)
ただでさえ緊迫した雰囲気の中、本題に入るのはこれからだと言う。
さすがにアンドロイド達は自身の将来が危ういと察して、話に入る。
「菅原殿、拙者の未来が危ないということですよね?」
「私たち、ずっと菅原殿と一緒にいたいです」
菅原のアンドロイドであるA-権蔵とA-真子姫にとって、ここは初めて連れてこられた場所であり、博士の話は、初めて聞いた話である。
「不安でいっぱいだろう。今から博士が話すことをよく聞いていてくれ」
A-権蔵とA-真子姫はゆっくりと同じタイミングで頷いた。
そして、A-桜小町もついに口を開いた。
「大ちゃん、私はこれからどうなるの?このままでは知り合ったA-真子姫ちゃんもみんなマリオネットに狙われてしまうわ・・・」
「そうだな。その不安は僕も悩んでいる。いつも一緒にいる君を失いたくないから」
(君を失いたくないから・・・)
菅原は鈴音の言葉を聞き逃さなかった。
アンドロイドに対して、君と言ったことを。アンドロイドに対して慈愛があるように感じてならなかった。
「鈴音・・・お前・・」
「さぁ、用件を聞こうか。左近博士」
そうすると左近博士がゆっくりと立ち上がり周りをうろうろしながら話し始めた。
それは、落ち着かない様子で、言葉が詰まるような思いなのだろうか。
「先に断言しておく。アンドロイド警察などの公安を頼りにしていてはアンドロイドの未来はない。
はっきり言って国家の制度がマリオネットに反撃するほどの体制は整っていないからだ。
しかし・・・マリオネットの勢力は急激に増している。ここで立ち上がるのがどこにも属さないアンドロイドだ。一般社会に溶け込むアンドロイドこそ未来永劫の存在の希望なのだよ」
「なぜ、そこら辺のアンドロイドなのだよ」
「マリオネットに立ち向かうためには、ゆっくり考える余裕がないということだよ。すぐに武装して立ち向かうアンドロイドが必要なのだ」
「武装して立ち向かうのか!?それをもしかして僕たちのアンドロイドが!?」
まさに衝撃が走った。恐ろしい組織に真っ向から戦いを起こせと言うことなのだ。
「そんな・・・」
「公安に任せてみろ・・・。下手をしたら全てのアンドロイドを撲滅させる方針になったっておかしくないだろう」
「そうか・・・アンドロイドを大事にする者でないと・・・。
反社会組織マリオネットに着く人間だっているかもしれない。
なぜならアンドロイドの存在によって職を失った者など人生どん底に落ちたといって怒りを露にしている人は多いだろう・・・」
考えめぐらす鈴音に博士が助言する。
「人間とアンドロイドの共存は永遠の課題だ。アンドロイドを愛する者がマリオネットと戦うんだよ。奴らの意志と真っ向から立ち向かうんだ」
その言葉が全てだった。
「左近博士・・・僕に何かできることはあるのか・・・」
左近博士は人差し指だけを立てて、独自の研究を説明し始めた。
「私が発明した物はスパイプラグを敵対する装置だよ。その装置はこれだ」
そう言って研究室の真ん中にあったテーブルの上に置かれた物体に指をさした。
その物はとても小さく、目で確認するのは困難なほどだった。
「よく見えないけど・・・いったい何なのだ?」
「私はこの物をホープサファイアと命名した」
「ホープサファイア?」
「簡単に説明すると、このホープサファイアをアンドロイドに内蔵させると、ある効果をもたらすことができるのだ。それはアンドロイドの手の甲の青い光をマリオネットに操られたアンドロイドに密着させれば効果発動だ」
左近博士はA-ジョッシュの手を持って、手の甲のひし形の光を皆に見せた。
「実際に、これをアンドロイドの身体に密着させれば、強制操作を断絶させることができる。そして本来のアンドロイドの活動まで制御することができるのだよ」
まさに問題解決の神器だ。
「つまり、スパイプラグの信号を断絶することができるのだよ。アンドロイドに危害が及ばないようにね」
すべての話は鈴音を納得させた。
「操り人形から解放されるのだな」
今立ち上がるのは自分たちなのだとそう言い聞かせていた。
「それを使ってアンドロイドを僕たちが救うということだね」
「その通り」
鈴音は全員の顔を見渡した。
不安が立ち込める様子は皆一緒だった。
「僕たちがやるしかないようだね」
「鈴音はそう言ってくれると思ったよ」
菅原は最初から左近博士の意見に賛成だった。
いつでも戦う決心がついていた。
「A-桜小町、僕と一緒に戦ってくれるかい?」
「そんな・・・大ちゃんの身に何かあったら・・・」
A-権蔵、A-真子姫、A-桜小町は皆、左近博士の話は理論的に確信ある内容だった。
アンドロイドのAIでもこれから起きる出来事と、この決断は極めて現実的だったのだ。
弥増して、立ち上がるべき者・物は、私たちしかいないという現実を受け止めた。
後は鈴音が判断した以上、同調以外にない。
左近博士がここで同意を得たことで、ある決断をする
「ここに私たちは誓おう。組織としてマリオネットと戦う。私たち組織の名はサファイア=ファミリアだ」
「サファイア=ファミリア?」
「手の甲の青い光はアンドロイドの証。そのアンドロイドを家族のように(ファミリア)慕うために、悪と立ち向かうのだよ」
アンドロイド達が笑顔を見せた。
左近博士の言葉は、力強い言葉だったが、和やかな雰囲気をもたらした。




