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私、桜小町はアンドロイドです。  作者: 山本 宙
2章~正義の秘密結社サファイア=ファミリア~
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13話『決断の時 section1』

 「よーし、今日の講義は以上だ。質問ある奴は前に。各自、受け付ける」

講師の一言で講義が終わると、菅原が鈴音のところに歩み寄ってきた。


「なぁ、鈴音くんよ。相談があるんだけどさ」

「相談?珍しいね。どういった相談だよ」


周りの目を気にかけて、小さな声になる。

「あまり大きな声で言えないんだよ。ちょっと席外さないか」


「わかった。外に行こう」



二人は講義室を出て誰もいない屋上に向かった。

屋上の扉を開けて進むと、さらに奥へと歩む。

会話が誰にも聞かれない場所まで菅原が誘導した。


「こんな遠くまで。いったい何を警戒しているんだよ」


「わりぃ、実は俺のアンドロイドA-真子姫がさ、アイスクリームを買いに行った時に

A-ジョッシュっていうアンドロイドと顔見知りになってよ」


「ふむふむ」

(あの時のイチゴアイスクリームか・・・)


「そしたらA-ジョッシュの持ち主と俺が会うことになって、それから仲良くなっていったんだ」


「ふむふむ」

(イチゴアイスクリームくれるのかと思った・・・)


「その持ち主がアンドロイドの研究をやっていて、協力してほしいと呼びかけてきたんだよ」


「協力?」


いかにも怪しい話だ。アンドロイドの研究の協力って、要は試験材料にするという根端ではなかろうか。


「いかにも怪しいね、その博士の協力って何?」


「それが・・・とても危険な内容だったんだよ・・・」

「危険?断ったのか?」

「いや、俺は協力したいと思ったさ。一度、鈴音も博士の話を聞きに来てくれないか」


その話をする菅原の目は遠くを見ていたようだった。

未来に向かって飛び込もうとするその目は、

今いる場所を俯瞰的に見ているようで、全てを知ってしまったような眼差しだった。


「その博士は危なくはないのだな?」

「研究熱心なだけで、暴れるような奴ではない。安心しろ。ただ、アンドロイドを連れていく。俺と鈴音、そしてA-真子姫、A-権蔵、A-桜小町だ」


「田邊は行かないのか?」

「俺たちだけだ」


なぜ、田邊を連れて行かないのか不思議に思った。

しかし、アンドロイドを持っているのは菅原と鈴音だけ。

田邊を連れて行く理由は確かにない。


菅原の相談を受け、一緒に行くことを決めた。


そして、二人は自分のアンドロイドを率いて博士の住む所に向かった。


「どうぞお入りくださいませ」


A-ジョッシュが玄関先で皆を迎える。

玄関を入って通路の先が研究室だ。

「この先に左近博士が待っています。奥へお進みください」


「ありがとう」


通路の先には左近博士が待ち構えていた。


「菅原君!久しぶりだねー、元気にしていたかい?お友達も連れてきてくれたようだね!」


とても気さくに話しかけてくる姿を見て、可笑しな人に思える。

格好だけは白衣を着ていて博士っぽい・・・。


「初めまして、左近博士です。お名前は?」

「鈴音大地です。A-桜小町が僕のアンドロイドです」

自分の自己紹介とアンドロイドの紹介をした。


終始、笑顔で聞く左近博士は悪い人ではなさそうな印象だ。


「来てくれてありがとうね。ところで菅原君、鈴音君にはどこまで話してくれたのかな?」


「いや、左近博士から直接話してくれた方が早いかと思って」


「そうか、じゃあ説明するね」



左近博士は腕組をして真剣な顔で語りだした。


「今、近辺のアンドロイドに危険が及んでいる。つまり東京あたりになるね。その危険をさらしている組織がマリオネットだ。結構、テレビ番組でも報じられているから、ご存じだね?」


鈴音がコクコクと頷いた。


「そのマリオネットが、アンドロイドを強奪するときに使用しているのが、スパイプラグという物なんだ。私も作ってみたが、恐ろしくて実用はしていない」


世間でも騒がれているネタの一つ。それは奪われたアンドロイドが、帰ってこないまま、奪い取った者に従っているのではないかと、世間ではすでに噂されていた。


「操るための道具ってことか・・・」


「その通り!説明しなくて大丈夫のようだね。つまり、このスパイプラグはマリオネットの武器であり、世間を恐怖に陥れている凶器のようなものだよ」


スパイプラグを真似て作った物を左近博士は鈴音に渡す。

そのスパイプラグは軽くて手のひらのサイズと同じだった。


「おそらくマリオネットは、このスパイプラグを大量に保有している。なおかつ組織も大きいとみた」


「でもアンドロイド警察が動いているのではないのか?」


左近博士は残念そうに鈴音を見つめた。


「世間もそう思っているだろう。アンドロイド警察が動いて解決してくれるだろうと・・・。残念ながらもう手遅れだ。アンドロイド警察の力を持ってしても敵わない強力な組織に成りあがってしまったのだよ」


「なぜ、そう思うのだ」

公安までも手に負えないと決めつけているところに確信があるのか疑問を抱く。


「アンドロイド法を知っているか?」

「アンドロイド法?」


「本来、アンドロイドは機械として存在している。そのアンドロイドは皆、武力を保有してはならないのだ。とても危険な武装になってしまうからだよ。しかしマリオネットは反社会組織だ。アンドロイドに武力を持たせて暴れさせる。そう、アンドロイドは武装して、人間の指示で攻撃するのであれば、それは戦争兵器に他ならないのだよ」


菅原が口を開いた。

「アンドロイドが不必要なら、アンドロイドで駆逐する」


「合理的ではあるが、もはやテロ組織だな」


全てを知ってしまった鈴音は、

さらに運命を左右する決断を迫られる。



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