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私、桜小町はアンドロイドです。  作者: 山本 宙
1章~普遍的共存の中に私たちがいる~
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11話『空飛ぶ者もマリオネットに』

翌日。日没になるとビル群からは光がさしてくる。夕暮れ時でも仕事は終わらず、ビルは眠らないまま働く者たちによって暗闇を光で明るくする。


「次のミッションは2体のアンドロイドを連れ去るのか」

「決して簡単なミッションではないよな」

スーツ姿の者たちが誰もいない場所で話をしている。


またもや、マリオネットの集団が企みを練っていた。


「俺たち、一人ひとりの情報は共有してはならないとボスから命じられているよな?」

「あぁ」

とっさの質問に重ねて

内なる臆病な部分をさらけ出そうとする。


「俺はこの先正直不安なんだよ。せめて、ミッションを同行するお前の名前だけでも知りたい」


切実な思いが言葉となった。

しかし、その質問に答えてしまうとボスからの命令に背くことになる。

相手はうつむき少し考えた。


沈黙が苦しくなり、

「いいんだ。お前は忠誠心が強い。無理なら答えなくてよい」

諦めようとした。


「俺の名前は鮫沖蔵之介だ。お前の名前は?」


初めて組織の一人である人間に名前を聴けてホッとした。

同じく名前の問いかけに応えようとする者はサングラスとマスクを外した。


短い髪の毛ながら、輪郭が小さく尖った鼻頭、目は大きくまつ毛が長く伸びていた。

「女!?」

鮫沖が女の顔を見て動揺した。


「俺・・・嫌、私の名前はユミエよ。名前教えてくれてありがとう」


(マリオネットには女も加わっているのか・・・)


鮫沖にとって、マリオネットの存在は不可思議だ。しかし、目的が同じであるだけで、組織についていた。ただ、アンドロイドに恨みがあるだけ・・・。

名前を聴いてはいけないとボスは厳しく部下たちに言う。


それに従い、今まで相手を知ろうとしなかった。

顔を晒したユミエに、鮫沖も少し安心した。


「とにかくミッションを遂行しよう」

そう言って壁から走り出した二人。


それを待ち伏せるように、追手があらわれた。


「出てきたぞ!マリオネットだ!!」

「マリオネットは二人!絶対に逃さない!」



後ろから大声を浴びせられた。


「何!?私たち追われている!?まだ目当てのアンドロイドを捕まえていないわよ!」

「わからない!俺たちが壁から出てきた瞬間だ!おそらく俺たちが計画的に狙われていたんだ!」


言葉を交わしながら全力で走る。


人がいない場所から、大通りへと駆けあがる。


「向かう方向は人でいっぱいよ!」

「正体が晒されても仕方がない!とにかく逃げるんだ!」


二人は息を荒げながら前へ前へと突き進む。


「逃がさないぞ!司令塔!ドローンアンドロイド2体の応援を頼む!」


「了解」


鮫沖とユミエの上空にドローンが飛んできた。

扇型の羽を回しながら飛行する乗り物にアンドロイドが仁王立ちで乗っている。


「ドローンアンドロイド・・・やっぱりアンドロイド警察ね」

「俺たち捕まってしまうのか!」



もう絶望的な状況に追い込まれた。

ドローンアンドロイドは容疑者の捕獲率は100%と噂されているほど、追跡を得意とする。


「私に考えがあるわ・・・大通りから抜け道を通って角に隠れるわよ。そこでドローンアンドロイドを捕獲して、ドローンごと連れ去ってしまえば良い」


「名案だな」


二人はポケットからスパイプラグを取り出した。


「空を飛んでいるからって調子に乗るんじゃないよ。あんたたちも操り人形になるのよ!」


一気に二人は角を曲がってドローンアンドロイドを待ち構える。


「あそこの角を曲がりました。見失わないように追いかけます!」


角を勢いよく飛行しながら曲がってきたドローンから鮫沖がアンドロイドを突き飛ばした。


「しまった!!」

もう1体のアンドロイドも鮫沖が足を高く振り上げて蹴りを入れ、ドローンから突き落とされる。


すぐさま悶えているアンドロイドにユミエと鮫沖がスパイプラグを首筋に打ち付ける。


「残念だったな。逮捕ならず。お前たちが捕まるんだよ」


「アンドロイドめ・・・。言うことをきけ。私の意志で動きなさい」


ユミエが目を閉じると2体のアンドロイドが同時に立ち上がった。


「ユミエ・・・アンドロイドを操縦するためのマイクロチップを保有しているのか」


「えぇ、私がアンドロイドを操るものの一人よ。さぁ、お前たちドローンを動かしなさい」

「かしこまりました」

2体のアンドロイドが声を揃えて応答した。


2人を乗せて、アンドロイドはドローンを動かす。


「司令塔に連絡よ。逮捕したって、誤報を流しなさい」


なにもかも言うとおりにできてしまう。

恐ろしい機能を兼ね備えるスパイプラグに身の毛がよだつ。


「よし、ユミエ、アジトに帰ろう。当初予定とは異なるが、2体のアンドロイドを捕獲したことを伝えに行こう。アンドロイド警察に狙われたことも伝えなければ・・・」


「そうね・・・」



アンドロイド警察の計画を持ってしてもマリオネットを追い込むことができなかった。

右近博士が恐れているスパイプラグは、さらにアンドロイドを恐怖へと陥れているのだ。


後を追っていた警察も2人を見失ってしまい、後程ドローンアンドロイドを奪われたことを知らされるのであった。


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