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勇者様の魔法使い  作者: 小河 太郎
第一章「愉快で痛快で不愉快な異世界」
1/4

episode,I 「勇者の龍太」



「ご、ごめんなさいっ!」


若干の涙を浮かべ、戸惑うように女の子が俺に言う。


「い、いや〜、いきなり謝られても。」


「な、何でもしますからっ!」


「ん?今、何でもって?」


「あ、えぇと、あまり、変なお願いごとじゃなければ……」


軽くテンプレ的ボケを入れた俺だったのだが、女の子は余計に怯えてしまった。見るからに真面目そう、というか純粋そうだしな。


「んー、よし」


すかさずフォローするように俺は話題を切り出した。


「え、えぇとっ?」


相変わらずに戸惑う女の子。そんな女の子に俺がかけた言葉。


「お前、俺の魔法使いになれ!」



俺が、そう言って手を差し伸べると、戸惑いに加えて女の子はキョトンとしていた。


風がひとつ、二人の間を横切る。

一呼吸置いて、言葉の意味を理解したのかしていないのかはさて置き、女の子は——




「勇者様の、魔法使い、ですか……?」




これは、この俺、龍太(りゅうた)音音(おとね)が魔王を退治するまでの、壮大な、——いや、期待させると悪いから、小規模でしょうもないと言っておくとするか。

まぁ、そんな物語だ。

ちなみに俺の一人称視点でお送りするぞ!



——00I


話は少し、遡る。


「龍ー!龍よー!龍よ起きとるかー?」


「起きてるわ!アンタの目の前で、飯食ってんだろ‼︎ 俺の部屋に顔向けてないで、俺に顔向けろや‼︎」


俺の名を呼ぶ婆さんの顔は、目の前で食事をする俺をさて置き、俺の寝室を覗き込むように見ていた。


「あれ、いつの間に。最近、どうも老眼でねぇ」


こちらに向き直した婆さんはそう言ったが、俺はすかさずに突っ込んだのだ。


「老眼の域を超えとるわ。」


婆さんは眼鏡をかけ、再び話始めた。


「そんでだな、龍。飯食ってるとこ、悪いんじゃがな、頼みがあるんじゃよ。」


「あ?頼みってなんだよ、ババア」


「ババア、言うな、ババア様じゃ」


ババアを否定しろ。


「それがのぉ、近頃、巷でモンスター達が好き放題し出したようでの、それもこれも、魔王城の大魔王様がお目覚めになられたようで、畑やら田んぼやら、酒場なんか荒らされ放題なんじゃと」


「だ、大魔王……?」


「あぁ、そうじゃぁ。そこでだ、龍。お主に、その大魔王退治をお願いしとうてな」


「なんで、俺が?」


「そりゃあ、お主はこのわし、初代大魔王退治に多大なる貢献を果たした、勇者様のお供にあった魔法使いの孫じゃからのぉ」


「ややこしいな。」


「まぁ、要するにお主は、魔法使いであるわしの孫っちゅうわけじゃ!」


……ふうん。


「あの、婆さんよ」


「あん?」


なんで、こぶし入れて返事した?

演歌歌手さながらに。


「ここの世界観は、いつからドラ◯ンクエストになったんだよ?」


「いつからって、はて」


「あのなぁ、俺、普通に中学生だぞ?」


「分かっとるよ、けど、大魔王がお目覚めになられた以上、勉学なんかに励んでいる場合やありゃせんのじゃよ!」


世界が終われば学歴もクソもないと。


「あのなぁ、婆さん?」


「あん?」


だから、こぶしを入れるな。


「俺、中学生。ここ、日本。ここ、東京。家、マンション。な?」


「あん?」


三度目のツッコミはないです。


「あん?じゃねぇよ‼︎ 朝からどんなボケかましてんだよ‼︎クソババァ‼︎ 」


三度目のツッコミはないが、激怒してみた。けど婆さんは相変わらずに、「はて」と。そう言うだけだった。


「だぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎ ったく‼︎ 学校行ってくっから、頭でも冷やしとけよ‼︎」


俺は、食べかけの朝ご飯をテーブルに並べたままで、カバンを手に取り、靴を履くと、今朝から訳も分からない婆さんへのイライラを晴らすように、勢いよく、玄関の扉を開けて走り出した。


「あの、婆さん。時々、ガチで頭イかれるからな……。」


ボケとかじゃなくて、素で、だからな。

ボケの域を超えてきてる気もするし。

ボケの意味が違うが。


「よし、ギリギリ間に合ったな」


台詞の次にはもう学校に着いたわけだが、実際、かなり走った。

語り部的には、都合よくカット出来てしまうのが、時に憎らしい。

人が汗ダラダラで猛ダッシュしたというのに。

(まぁ、俺が語り部なんだけども)

必死で学校まで走るのを実況した所で、なんだけれども。


俺は、下駄箱でいつもの様に靴を履き替え、二階にある教室へと向かった。


着いた。


二年二組だ。


いつもニコニコ二年二組だ。


「おはよーございます!」


俺は特に意味はないが、割と元気な声で教室の扉を引いた。


もしかしたら、好きなあの子が元気よく挨拶を交わしてくれるのではないかと、そんな期待を込めてのことでもあった。

まぁ、うちのクラスの女子は基本、皆んな顔面偏差値が平均かそれより以下なので、特に気になる子なんかいないのだけど!

(怒られそう。)


——しかし、現実は違った。

と、いうか、違いすぎた。もはや現実なのか、と。

あ、ちなみに話の流れ的に超絶美少女が転校して来た、とかそういんじゃない。

割と話を前座は無視していくスタイルで!

はい、シリアスやり直し!


俺は、驚愕した。


「な、なんじゃこりゃ⁈」


教室の扉を開けると、そこは、まるで見たことのない世界が広がっていたのだ。


「ば、婆さん⁈ こんな所で何してんだよ⁈」


「あん?」


もう、いいよ、それ。


「何って、お前に言われた通り、頭を冷やしとった所じゃ?」


「だからって本当に、氷水の入ったタライに頭突っ込む婆さんがどこにいるんだよ……」


婆さんに限らないが。

てか、死ぬゾ。


「っっって!そうじゃねぇよ‼︎ なんで、何で教室のドアを開いたら、俺ん家の玄関で、婆さんがいるんだよ⁈」


すると、婆さんはいきなり、重苦しいような雰囲気を恰も醸し出し


「時は来た。大魔王様のお目覚めじゃ」


「だ、大魔王って、またそんなこと言って。——んなもん」


「龍よ。もうここはお主の知る世界じゃないんじゃよ。」


「……な?」


「今、わし達の居るこの家は、風見町三丁目に立つマンションの中の一部屋ではない。」


「ま、まんま俺ん家だろ⁈ 冗談もその辺にしないと、流石にキレるぞっ」


けど、実際、俺が入ってくるはずだったのは、二年二組の、その教室だった。


俺は、再び入ってきた扉の方へ向かう。


教室は引き扉で入って来たはずなのに、いつのまにか普通のドアノブがある俺ん家の扉になっていた。


ドアノブに手をかけ、ゆっくりと、その扉を押した。


光の幅が徐々に広がって行く。


「ば、婆さん……。俺、夢見てるのか?」


「いんや〜、夢じゃないさぁ」


扉の向こう側にあったのは、学校の教室でも廊下でもなければ、見慣れた家の前でもなかった。


「……これが、夢じゃない、か」


ははは。

苦笑。


地平線の彼方まで広がる、草原に大きな雲がポツポツと浮かぶ。


——そして何より、


見たこともない、見たことがあるわけがないはずの、今後も見るはずもなかった光景が広がっていた。


ほうきに跨り空を飛び回る人々、草原を駆けていく額に綱を生やした馬の大群。

そして——ゾウよりも大きな、クジラよりも大きな、旅客機と同じくらいかそれ以上のドラゴンが、空を泳いでいた。

頭上で大きな日陰を数秒作り出し、何処かへと飛んでいった。


「アンビリーバボー……」


誰かほっぺたをつねってくれ。と思いながら誰も見当たらなかったので、自分でつねってみる。……痛かったよ、勿論。


——00I


To be continued……00II


小河 太郎です!連載三作品目となります。

完全に作者としても気休め枠、ギャグ枠で、プロットも存在していない行き当たりばったりな小説ですので、お読みになられる方も深く考えずにお付き合いください。

(二話目から早々、内容すら決まってない次第です。)

他の二作品の小説とはまるで雰囲気が違うかと思いますが、こんなノリも大好だったりするので今回、挑戦してみました。

色々な意味で未定の上で成り立って行く作品だと思いますが、読んで貰えれば幸いです。

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