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天空超越者

髪の色は変色しているが恐らく俺であろうその少年は、初めは動転した様子で回りをキョロキョロ見回していた。

しかし1分ほど経過したのち、何かを理解したかの様に「コクン」と頷くと「こほん」と咳ばらいをし大きく息をすいこんで


「ふふふははははははははははっつ!!!」


と高らかに笑い出した。

ヤバいな、余りの出来事に気がおかしくなったんじゃ・・・


「我が名が天空超越者 JOKERじょーかー!!!螺旋力でピリオドを刻む多次元宇宙の支配者である!!!!」


は?


「我が力を欲し、異世界に招き入れたる神の使いよ!名乗るが良い!我がカルマを受け入れる器に相応しき者かどうか、この封印されし緑眼が見極めてくれるわ!」


アイタタタタタタ・・・。


そうだった。


思い出した。


中学二年、14歳の頃の俺は、、、いわゆる中二病患者だったのだ。

そのせいで友人も、ましてや女友達など皆無の孤独な日々を送っていたのだが・・・本人的には「全く問題無いぜ?友人なんか作ってる暇ないぜ?だって俺はいずれ世界を危機から救う役割が有るんだから」

という思考回路なので救い用が無いのだ。


「えっと、あのな・・・」


「成る程!」


言葉を発しようとした瞬間、被せる様にまた呪文 (笑)を唱え始める俺14歳。


「貴様が我を召喚せし神の御使か!?ならば我が封じられし混沌の螺旋力で貴様の神力を試してやろう。ただし!我が力は神力に加え暗黒魔界の混沌力を交えたハイブリッド!果たして受け止められるかな?」


「・・・え??何て??」


思わず聞き返してしまう俺。

確かに厨二の頃は設定モリモリの壮大な空想をしていたのだが、盛り過ぎた設定のせいで四年も経つと既になんだったかよく思い出せない。

聴いても思い出せない・・・どころかますます混乱した。


「いや、あの・・・ゴホン!我が封じられし混沌の螺旋力で貴様の神力を試してやろう。ただし!我が力は神力に加え暗黒魔界の混沌力を交えたハイブリッド!果たして受け止められるかな?」


「ん〜と、神力?なのかな?暗黒何ちゃらなのかな?どっちか解らないんだけど?」


「だ〜か〜ら!神力と暗黒魔界の混沌力を交えたハイブリッド!!とにかくスゲーんだよ!!」


おーいキャラブレだぞ?

若干涙目で訴えてくる俺14歳を見ながら、俺は思った。

こいつの中でも設定結構フワッとしてるんじゃね??


思わず脇に控えている俺68歳の方をみると、何やらワナワナ小刻みに震えている。

・・・あー解る解る、この召喚は流石に大ハズレだよね。


「大当たりですよ!素晴らしい!」


「ええぇ〜!?あ、当たりなんですか?アレ大当たりなんですか!?」


思いも寄らない賛辞に俺は思わず突っ込んでしまった。


「当たり前ですよ!!先ほども話したとおりこちらの世界で英雄足り得るかどうかは転移した時に転移神から授かる【理想の力】によって決まります。転移前の今鹿風谷がどんな理想の自分を思い描いているかが鍵なのです。」


あ、そう言えばそうだった。

俺は自分の頑強で研ぎ澄まされた肉体を見て再認識した。


「彼の思い描く理想の自分は、天空超越者と言う・・・いわゆる超人です。螺旋何とかでピリオドをどうのこうのする多次元何ちゃら・・・えっととにかくソレ!」


ヒデぇ。

俺よりヒデぇなこの人。


「螺旋力でピリオドを刻む多次元宇宙の支配者ぁ!!」


14歳が悲痛な叫びをあげている。


「とにかく側から見れば頭がアレな彼ですが、事【理想の力】に関しては最高なワケです。」


「おいイイ加減にしろ!!」


しまいにはアイツ大泣きするんじゃあ無いか?


「でも中二病・・・厨二病の妄想なんておかしな【理想の力】で本当に魔王と戦えるんですかね?」


「厨二病言うな!!」


なんか叫んでいるけど一先ず放置しよう。


「イヤイヤイヤ、貴方の【世界最強】もなかなかどうしてトップクラスのおかしな【理想】ですよ?」


おい待て。


「そんなトップクラスのアホ妄想・・・じゃ無い、理想を持つお二人ならば魔王討伐に絶大な貢献が出来るハズです!」


よし、一度じっくり話し合おうか。


俺の眉がこれ以上ないほどハの字になったその時、痺れを切らした厨二病患者が話に割り込んできた。


「オイ!我を無視してんじゃねー!!解る様に今の状況を説明しろ!!さもないと右手に封じられし暗黒竜が牙を剥くぞ!!」


あーはいはい。


「では、改めて説明させていただきますよ、今鹿風谷君。」


「汚れし忌み名で呼ぶのはやめていただこうか。」


おーい、親からもらった名前にケチをつけるな俺。


「我が真名は 天空超越者 JOKERじょーかーだ。螺旋力でピリオドを刻む多次元宇宙の支配者、ジョーカーなのだよ!」


「成る程、まあ確かに今鹿風谷だらけでは混乱しますしね。解りました。貴方の事は天空ちょ・・・えーと、【ジョーカー】と呼びましょう」


あ、覚えられませんよねそうですよね。

すみませんね四年前の俺がアホで。

でもね、そいつ54年前のアンタでもあるからね!自業自得だからね!?


「と、なると貴方にもコードネームを付けなければなりませんね。」


「え?・・・いやいや俺はイイですよ?」


突然の負の申し出に思わず全身で拒絶する俺、しかし


「こうゆう事はノリが大事なのですよ風谷君。」


あれ〜〜?もしかしてこの人も厨二を若干卒業出来てないの??


「貴方のコードネームは【最強の男】!そう、最強の男にしましょう。」


「やーめーてー!!他人に言われるとなんかこう気恥ずかしさが天元突破してくるから本当に辞めたげて!!」


「まあでは、、、もう少しシンプルに【最強】、にしておきますか。」


ま、まあ漢字で書かれなければ、西京さんとか埼京さんとか苗字に思えない事も無い・・・か??


「だ、妥協します。」


【最強の男】とか、まんま理想の力の【世界最強】とか呼ばれるよりは幾らかマシに思えた。


「あ、ちなみに私の事はTTRとお呼び下さい。もしくは略称のアールでも良いですよ?


「TTR?なんですかそれ?」


「technical・teacher・Rの略です。私はこれから先、常に貴方方をとなりで見守りながら私がこの世界で30年に渡り学んで来た戦闘技術と知識を教える先生になります。」


「アールは何の略なんですか?」


「TTRのアールは不敗神話のアールです!」


いや、アンタ何度も魔王軍に負けてるだろ!

と、突っ込むのも野暮だが・・・とにもかくにもこの老紳士がもと日本人である事は今の一言で確定した。

・・・俺の大好きな漫画キャラの台詞じゃ無いかよ。

やっぱ妙義ナイトキッズだよね。


「えーと、これからよろしくお願いします。

TTR・・・いややっぱり後者の方でお願いします。アール・・・先生。」

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